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侵略少女エクレアさん(6)

 空き地でうつ伏せになっているエクレアが、むくっと頭を持ち上げた。

「くっそ、あのヤロー……、ザラアース人をバカにして。今度会ったら、絶対に、倒してやる」

 と頭を3回ほど振って、ゆっくりと起き上がった。
 黒いベストとチェック柄の赤いミニスカートが、土やホコリで汚れている。
 すぐにエクレアまで駆け寄って、今にも倒れそうなエクレアの両肩をしっかりと受け止める。

「エクレア! 大丈夫? 怪我とか、していない?」

「あ、ありがとう。大丈夫、かすり傷よ」

「良かった。もし大怪我をしていたら、どうしようかと、心配したよ」

「アルト、あたしのこと、心配してくれているの? 嬉しい……」

 エクレアの、土埃で少し汚れたその笑顔は、ザラアースとか、異星人とか、関係なく、両手で、抱きしめてあげたくなるような、ひとりの、か弱い、少女の顔だった。
 うっ、我慢だ、我慢しろ。ここで、エクレアを抱きしめたら、なんか、負けた気がする。

「アルト、どうしたの?」

 ハッとして、僕はエクレアの肩から手を放した。

「い、いや……、別に……」

 照れ隠しをする僕。
 エクレアが、警察官に少女型ロボットについてあれこれ説明しているアロハシャツの男がいることに気がついた。
 数秒、その男をじっと見つめると、ホッと溜め息をついた。

「どうやらこの場は、この地区の諜報員が、うまくおさめたみたいね」

 そうだ、僕はエクレアに、確認しなければならないことがある。

「あの……、エクレア。気を悪くしないでほしいんだけど。君達、ザラアース人は、卑怯なことをするのか? たとえば、人を、誘拐したり、するのか?」

「そんなこと、しないわ」

 即答だった。

「本当?」

「ザラアース人は、紳士的で、誠実よ。って言うか、あんたもザラアース人じゃない」

 う――ん。
 その言葉を聞いて、少し安心はしたけれど……。
 エクレアはまだ、僕が地球人とは、思っていないようだった。

「今度、じっくりと、説明するしかないか……」

 この僕の言葉に、エクレアは少しだけ楽しそうな顔を作って、僕の顔を覗き込んだ。

「なになに? なにをあたしに説明してくれるの?」

「……、だから、今度ね」

「ダメ、今、説明して!」

「だから、今度だって!」

 しつこいエクレアから、僕は逃げるように駆け出す。

「どうして、逃げるのよ――」

 エクレアが僕を追いかける。

「ハハハ、どうしてかな――」

 ゆるやかな坂道を、僕は笑いながら走っていた。

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