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ブラックヒストリーマンスに学ぶ、ローカルベース型マーケティングの必要性

こんにちは。ニューヨークでデザイナーをしている mihomi です。私はこれまでにアメリカ進出される日系 B2B やスタートアップ企業向けに、現地に根ざしたマーケティングの必要性についてお話ししてきました。そして今回はその具体例を挙げながら、更に深掘りしてみたいと思います。


ブラックヒストリーマンスとは

皆さんは、ブラックヒストリーマンスをご存知ですか?世界五カ国で実施されていて、アメリカのブラックヒストリーマンスは毎年二月。アメリカにおけるアフリカ系アメリカ人の歴史を理解し、彼らの功績を称え、国家的に祝福する一ヶ月間となっています。

アメリカは多民族国家であるため、国民はもともと自由や平等に対する概念に敏感です。そのため彼らは、宗教・人種・ソーシャルクラスの違いや、ジェンダーの平等性、社会福祉など、個人団体を問わず、様々な社会問題に関心があります。そして彼らは、自らの意見を述べることにシャイではありません。昨年のBLMムーブメントや、選挙戦を巡る両党サポーターの激しい戦いも記憶に新しいのではないでしょうか?

また、ビジネス面においても、近年のマーケットのグローバル化や顧客ニーズの変化により、ダイバーシティ・インクルージョンと言った多様性を受け入れることは、国際ビジネスの常識となりました。とりわけ、社会的意識の高い世代であるミレニアルは、このような社会的倫理を扱った題材への関心が強いとされています。そこで、このブラックヒストリーマンスにおいても、企業はオンライン、オフラインを通じ、黒人の歴史とレガシーを称賛することが多くなりました。企業によりその手法も様々です。企業内外に向け、職場でのダイバーシティ・インクルージョンの推進を唱えたり、各企業の関連分野で功績を残した黒人達を讃えたり、これからの未来へ向け積極的な変化を促すメッセージを伝えたり、と、どの企業も趣向を凝らしているようです。


企業がブラックヒストリーマンスをどう捉え、どのように企業の社会的責任(CSR : Corporate Social Responsibility) を果たすのか。多くの企業がソーシャルやオウンドメディアを使い、そのビジョンを伝えることに注力しています。人々の感情と繋がることにより社会的な理解を深めてゆく、それはまさに、非常に効果的なソーシャルマーケティング (社会改革を目的とした社会にとって有益になるような行動を、人々や団体に促すためのマーケティング) の一部ではないか、と私は考えます。

企業の取り組み

それではここで、アメリカ大手テック企業による、オンラインでのブラックヒストリーマンスへのアプローチを見てみましょう。こちら ↓ です。

Adobe

黒人女性フォトグラファーの Dana Scruggs さんをフィーチャー。彼女は、アメリカ老舗のスポーツ雑誌、 Espn 、ボディ・イシュー 初の黒人女性フォトグラファー。また、アメリカ老舗の音楽雑誌、 Rolling Stone Magazine の表紙を黒人として初めて撮影したパイオニアです。彼女のキャリアは人種やジェンダーのバリアを破ったことで築かれ、Adobe はその素晴らしい功績を讃えています。クリエイティビティにフォーカスした Adobe らしいセレブレーションスタイルですね。


Cloudflare

Afroflare と題したインスタのストーリーで、科学やテクノロジーの発展に貢献した大勢の黒人パイオニア達、また、アメリカだけでなくイギリス、ジャマイカ、その他アフリカ諸国にて、今日大活躍されている黒人の面々を力強く称賛しています。その数なんと16人!

別チャンネル、オウンドメディアの Cloudflare TV ではブラックヒストリーマンス関連のライブチャットも配信。かなり気合の入った様子が伺えます。


Apple

Hometown Series と題し、黒人フォトグラファーによるアートワークをフィーチャー。これはブラックヒストリーマンスを記念し、Apple からコミッションを受けた黒人フォトグラファー達が、自らの故郷をアップル製品を使って撮影したものです。ローカルな人々やその地域ならではの独特な文化を巧みにキャプチャーし、黒人らしさや黒人であることの誇り、を世界中の人々と分かち合い、繋げてゆくのが目的のようです。

このポスティングは、フォトグラファー、32人中の8人目。ニューヨーク出身の Lelanie Foster さんの作品です。”私の心の一番近くにいる人々や、私のローカルコミュニティーを撮影しました”、とあるように、彼女のパーソナルな部分が露呈されたユニークなナラティブに仕上がっています。それにしても皆さん、意思が強そうでかっこいいですね!さすがニューヨーカー!


DocuSign

かなりインスパイアリングなビデオです。黒人家族の素晴らしさと、家族のようにお互いを支え合う、黒人コミュニティーの団結力を讃え、これからの時代を築いてゆく若い世代に向け、”Make your mark, 名を残せ!” と力強い言葉で激励しています。なんだかこの私まで、成功してしまいそうな、根拠もない晴れ晴れしい気持ちになってしまいました!


Google

Google は、黒人オーナーによるビジネスの軌跡を称賛しています。彼らのビジネスは、ブラックヒストリーマンス用に特別にデザインされた (アフリカ系色にLOVE のアイコン入り)、ロケーションマーカーで Google マップ上に表れます。”黒人オーナーによるビジネスを探しましょう!” と呼びかけ、Google マップの利用を促進することで、Google 自身の広告の売り上げにも貢献するという、ウィンウィンの戦略を取っているようです。 さすが、Google、お見事ですね!


Surveymonkey

他社のポスティングと比べると少し地味目なビジュアルですが、メッセージが素敵だったので紹介します。

Black History M̶o̶n̶t̶h̶.
This month・Next month・All year

ブラックヒストリーマンスの "マンス" の部分を消して、”今月も、来月も、一年中ずっと” とのコピーが。インスタポストのキャプション欄には、一年を通じて黒人の歴史と文化をお祝いすべきだ、と添えられています。ここまでボールドなステートメントが出せる企業はとても革新的です。Surveymonkey の勇ましさや、倫理観念までも祝福したくなってしまうような素晴らしいアプローチです。


まとめ

日本企業にはまだまだ馴染みの薄いブラックヒストリーマンスですが、アメリカでビジネスを成功させたいと考えるならば、このような社会的倫理をテーマにしたイベントにも積極的に参加し、企業の立ち位置 (より良い未来を創造するために、企業が社会に貢献できるもの)、をステートメントにし、アメリカ人にアピールすることはとても有益です。グローバル化を目指すなら、まずは現地アメリカ人の慣習を理解し、賛同する、そして信頼を集める事が大切です。このようなローカルベース型のマーケティング手法は、企業としての社会貢献、企業認知度の向上、更には、企業のブランド力向上にも繋がる、ROI 高めな戦略ではないでしょうか。


私のブラックヒストリーマンス

最後に、私個人がブラックヒストリーマンスで讃えたい人を紹介します。私が初めてニューヨークに来た頃にお世話になった、ホストファミリーのホストマザーです。ドミニカ共和国出身のお祖母さんを持つニューヨーク生まれの彼女は、日本人の私には想像もできないほどの困難を乗り越えながら、二人の小さな子供を懸命に育てていたシングルマザーでした。彼女は、大きくて力強いハートを持ち、当時、英語がまるで話せなかったひよっこの私に、日々目的を持って真剣に生きることや、身近な人に親切にすることの大切さを教えてくれました。彼女との出会いは、私の誇り。そしてニューヨークで生きることの礎です。そしてまた、これからの私を支えてくれる指針となるでしょう。


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私は、ニューヨークのアートスクール卒業後、数々のリアルワールドでのプロジェクトを通じ、本物の ”ビジネス戦略としてのデザイン” を習得しました。アメリカ式デザインで世界的に活躍されたい方、なんだかよくわからないけれど、ご自身のコーポレートサイトに危機感を感じている、テックスタートアップ関連の方、あなたの会社の魅力を最大限に引き出すブランディングに興味のある方など、こちらまで お気軽にご連絡ください。

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