不規律な部屋と兎たち


兎たちはぺちゃぺちゃと
耳をすますと哲学していた
その足どりを、穴をめがけて追いかけた、私は世界にいきたかったから

多言語に気分はぐるぐるして
噂のドアの隙間から音と光が漏れていた、夜中でも
がちゃがちゃの鍵壊れ
どうやら誰でもはいれるみたい、あっあいたあいた

キッチン廊下を抜けて
やっと目が合う、
黙って爆音狂いのチェシャ犬

うずくまると大きく黒く
出かけない慎ましい野良犬
うねった髪は自分できって、顔には謎の絆創膏

24時間、寝起きでノっている、
兎達は世界をうちあけに通う、ブームの始まりはあの部屋に通ず

これがかれらのお茶会だった、きたいどおりのきたない部屋でにやにやと
ヤニが染み込んだ黄色い壁、
床に溢れたままの灰
もらいっぱなしの楽器、スターの写真、
妄想でぐっちゃぐちゃ、肉抜きキャベツだけのお好み焼き
シケモクは酒の空き缶にどーぞ
音楽はリクエスト可能、ラップは本気で貫いてるフリースタイル、カラオケ指南は真摯に「一音ずつ」
灰色になったベッドシーツ、その上に渡した長机は寝たまま触れて。酔っ払いが、酒で濡らしたPCはいつ動くの
散らばった本は、読み終わりましたか
裸の二次元少女の表紙の横のニーチェ、精液で黄色くなったおもちゃのホール
小さなディストピアを話す秘密基地
未来の礼金さえ不明

部屋に合わず均整のとれた体躯と黒い毛並みは、他民族の血が混じってるって
白くて厚い肌は、どんな寒さにも耐えるだろうけど
夏に憧れてたね

深い目、乾いて喋る低い声は、ほんの時々べたついて

ヒッピーじゃないし露悪もしないし、ここにいれば、どこにもいない、好きも嫌いもなくなって
ウサギ穴に落ちていくように、
渦巻いてくるんで溶かしてくれるのではと

兎が、吐いたわっか、煙にまかれたかった

麻雀はテンパイ、

わかばとECHO
パッケージ握りつぶして、そのまま

たばこと汗のにおい
煙い煙い煙い
われわれをつつむ

あの浴室が真っ黒なのは
溜まっていくお湯のなかで
骨肉を沈み込ませながらでも
かすれた紫煙を吐き上げるからだって、うわさ
真っ白な湯気に
溶かしてきれいね

君はひとりで禊をするのだろう、
散らかった部屋は、おみくじを結んでいくようなまるで神社、私はなにをひいたっけ

ここにいるのはみんなみんな…
呼び止めないでおくれ

そして光があそこまで忍び寄ったこと
角部屋の黄色い壁に、
なんと美しく映えたこと、誰かが君のかなしみを見た


外に出た朝
包み込んでくれるソフトな素粒子
眩しくて、いつも優しかった
足どりはかるく
透明な酸素はとてもおいしかったけど

どんな味だったっけ、一体

呼吸が欲しくなるとたまに、
路地裏、ロータリーの喫煙所、コンビニの入り口、古本屋、蕎麦屋、道端で、
兎を目で探している。
もう追いかけることはできないけど

黒い犬が横切った。みんな、出かけてしまった。

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