はじめましてもいえない

大好きな本を
穴があくほど見つめていたら、
顔をつっこみすぎて
紙がやぶれてしまったので
文字の破片がちらばって
どこの世界の言葉か分からなくなってしまいました。
誰が書いたのか、もしくは言った?塵紙をはりつけてかんがえます
びらびら、飛び出した文字は、
音声さえつけられるのです。

書いたという精神であり概念が、顔を差し出してこんにちは
「はじめまして。読んでくれているのですね」
はい、はい、自分の言葉になってしまうまで、ずっと、
その感受性フィルムを上映していました、血と肉になるよう、繰り返し踊れるまでに

表紙裏に描かれる知り続けた象徴、
筆を持つ指を見つめる
それは正しく骨と肉だった、動いていた
手には血管がうきでていた

「ところで、きみはなんていう名前だっけ」

ああ、わたしは、なんなんだっけ
あなたの目の中で読み手は、上手に名乗ることなどできるでしょうか。

ちりちり、

かたるほどのものじゃごじゃあせん、

とは副音声で沈黙し
訊いてくれたお礼に
やぶれかぶれ、
発音しました  もう一度

あなたが、言葉が失われた世界で、会話を連れ戻したとき、わたしは何度か泣きさえしたのです。滲む文字は美しかった、べたついた紙片みたいな現実を、呼んでいたのは君の声。読んでいたのは私の心臓。

ビリビリといった果て、
本当はずっと裂け目からちらちらと覗けていた。
すべての心は、ぜんぶちょっとずつつながっているって

みんなの住所、地球、それだけ

あなたの皮膚は、綺麗に地続きだったよ

同じ夜空を見ているなんて信じていたら、
夢かうつつかひらひらしてしまうから、
今日はただ、もっと眠っていたい。

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