掌編小説・元カレMくんの話(中編)
第三章
アタシは、中学3年生のT子。
彼氏が欲しいと思ってたのに、なかなか上手くいかなくて、親友のKちゃんに先を越されちゃった。
なんとKちゃんは、吹奏楽部の前の部長だったN先輩と、1年生の秋から付き合ってるんだよ〜。
年上の男子と付き合うなんて、うーん、アタシには出来ないな。
確かに同い年の男子を見てると、まだまだ子供みたいな男子もいるけどね。
でもね、アタシ、やっと夏休み前に、好きな男の子が出来たの🎵
その男の子は、同じ吹奏楽部で、同じクラスのMくん💖
夏休み前の林間学校で見た彼の働きって、格好良くて、優しくて、力強くて…。
前からちょっと気になる存在だったんどけど、林間学校に行って、Mくんのことが好きになっちゃったの(*´艸`*)
どうしたら両思いになれるかなぁ…。
実はね、林間学校の後にずっと考えてたことがあってね。
班の編成は、1学期が終わるまでそのままだっていうから、班の中で、アタシの机を、Mくんの横にしてもらったの(〃∇〃)
それまではMくんが一番前で、アタシは前から3番目だったんだけどアタシも一番前にしてもらったの。
交渉相手は、林間学校でMくんが靴を貸したYちゃんだから、頼みやすかったよ。
流石にこんなことしたらバレるかな?と思ったけど、Mくんは鈍感なのかなぁ、何もアタシに言ってこないんだよ❗
女の子が、もう1学期が終わるって時に、わざわざ机の位置を変えるなんて、本当は凄い勇気がいることなんだから、せめて何か聞いてほしかったなぁ。
んもう、Mくんの鈍感‼️
でもね、しばらくアタシの片思いかな、次に告白出来るチャンスは、吹奏楽コンクールの時かな?って思ってたんだけど、Mくんと付き合えるチャンスが突然やって来たの。
それは理科の授業だったの。
理科は、理科室まで移動して授業を受けるんだけど、理科室でもクラスの班単位で大テーブルに座るの。
だからMくんが座った真向かいに、アタシが座ったの。
その日、Mくんは何を考えてたのか分かんないんだけど、何故か隣の席のKくんをやたらと弄ってて、誰が好きなんだ?ってやたらと問い詰めてるの。
それも結構しつこいくらいに(笑)
だからアタシ、Mくんについ聞いちゃったの。
「そういうMくんは、好きな女の子は誰なの?」
そしたらMくんは途端に固まって、
「えっ、い、いや、あのー、えっと、ええっ?そ、それは、その・・・」
なーんて言ったの。笑えちゃうでしょ?
ねえ、これってアタシの会心の一撃じゃない?
もしアタシ以外の女の子のことが好きなら、そこまで慌てないよね?
Mくんたら、急にKくん弄りを止めて、顔を真っ赤にしてシドロモドロになっちゃったの。
この反応は、もしかしたらアタシのことが好きなんじゃないかな?なーんて確信したから、もっと攻めてみたよ。
理科の授業が終わった後、教室に戻る途中にも
「ねえMくん、誰が好きなの?」
って聞いたけど、真っ赤になるだけで
「あっ、後でね」
って言うだけ。
掃除の時間にも、部活で音楽室に向かう時も、Mくんに声掛けたんだよ。
「Mくん、好きな女の子っているの?いないの?いたら、誰が好きなの?」
今思えばアタシ、ちょっとしつこいよね。反省反省…。
第四章
その日の部活は、Mくんは真面目に練習してたけど、アタシはKちゃんとお喋りばっかりしちゃった。
「アタシ、Mくんのことが好きになったみたいなの」
「えーっ、ついにTちゃん、前の彼氏の影を吹っ切れたんだね!」
「前の彼って、小学校の時の話じゃん。アレは付き合ったと言えるのかどうか、アタシも分かんないし、影ならとっくに吹っ切れてるよ!」
「そっか、そうだよね、エヘヘ」
「でね、今日Mくんに、好きな女の子はいるの?って、話しかけたら、Mくんたらシドロモドロになっちゃって、逃げてばっかりなんだ」
「分かる。分かるよ~、Mくんの気持ち」
「ちょっと、なんでアタシよりMくんの気持ちに寄り添ってるのよ、Kちゃん!」
「まあ、男子と女子には色々あるからね、えへへ」
「なんかKちゃんはアタシの味方なのか敵なのか分かんないよ」
「もちろん味方に決まってんじゃん!かなりMくんを追い詰めたんでしょ?そしたらさ、今日中に決着つけたいよね」
「ま、まあね」
「いつもTちゃん、クラリネット片付けたらとっとと帰ってるけど、今日はMくんが音楽室の鍵を閉めるまで待ってて、最後に2人切りの状況になって、答えを言わなきゃ帰さない!って攻めてみたらどう?」
「そうだね、いつもアタシはとっとと帰ってたから・・・。うん、そうするよ!」
「応援してるよ、Tちゃん!」
「うん、頑張るね」
さて部活も終わって、みんな楽器を片付けだしたわ。
アタシは逆にゆっくりと片付けてるの。みんなの様子を見ながらね。いつもならアタシも早く楽器を片付けて、早く帰ってるんだけど、今日はMくんと対決するんだ。
と思ってたら緊張してきたよ~。
もしMくんの意中の女の子がアタシじゃなかったらどうしよう・・・。
ふとMくんを見たら、アタシの方を見てた。
目が合った途端、慌ててまた顔を赤くして、Mくんは目を逸らしたの。
これってどう思う?
なんでいつもは早く帰るアタシが残ってるんだろうっていう意味もあると思うし、やっぱりアタシのことを好きでいてくれるから、目が合ったのが恥ずかしいともとれるし。
きゃっ、アタシも心臓がドキドキしてきたよ~、神様、上手くいきますように!
最後に、片付けが遅い後輩女子が帰って、遂にアタシ、Mくんと2人切りになったの。
Mくんったら照れてるのは丸分かりなのに、平静を装って音楽室の鍵を掛けようとするから、アタシから声かけたの。
「Mくん!Mくんの好きな女の子は誰なの?言わないと、帰さないよ~」
こんな言い方してるけど、心の中は凄いバクバクしてるのよ。
「Tさん、もうここまで追い詰められたら言うしかないとは思うんだけど…」
「うんうん、誰が好きなの?」
「あのね、俺が好きなのは…、好きな女の子は、同じクラスで、同じ部活の…」
「うん…」
Mくん、アタシ、覚悟は出来てるよ。その先を教えて!
Mくんがアタシの名前を言ってくれたら、アタシもMくんが好きっていうから!
「同じクラスのね、あのね、出席番号が…NHKのチャンネルの女の子!」
Mくんはそれだけ言うと、逃げるように職員室へ音楽室の鍵を返しに行っちゃった。
えーっ、Mくん、アタシなの?
でもNHKのチャンネルは3チャンネル・・・アタシの出席番号は3番・・・。
アタシだよね?Mくんの好きな女の子は、アタシでいいんだよね?
ワーイ!\(^o^)/
って言いたいけど、なんか消化不良…。
そこに、階段の下に隠れてたKちゃんが来てくれたの。
「Tちゃん、頑張ったね!」
「あれ?Kちゃん、見ててくれたの?でも、しっかりアタシの名前を言ってくれた訳じゃないし、アタシはMくんのことが好きって伝えられてないし…」
「なに言ってんの、まだMくんは学校にいるんだから、Mくんの帰り道に先回りして、しっかり最後まで告白し合わなきゃダメだよ!ほら、早く行かなきゃ!」
「うん。Kちゃん、ありがとう」
アタシはMくんがいつも職員室で先生と駄弁ってるのを知ってるから、学校から出てくるのがちょっと遅いのも知ってるの。
だからKちゃんに言われた通り、Mくんの帰り道に先回りして、Mくんを待ち続けたの。
10分くらい待ったかなぁ。
ガヤガヤと、男子の後輩と一緒に帰り路を歩いてるMくん発見!
アタシは男子の後輩くんたちのことはきにせず、Mくんに声を掛けたよ。
「Mくん!」
「え?あっ、Tさん!あっ、あのさ、NHKってのはさ、あの…」
って、また顔を真っ赤にしてシドロモドロになっちゃってたから、一言だけMくんに言ったの。
「アタシは、2番だからね!おやすみ!」
2番は、Mくんの出席番号なの。
それだけ言ったらあたしも恥ずかしくなっちゃって、Mくんから逃げるようにして、家まで走っちゃった。
Mくんに、ちゃんと伝わったかなぁ…。
お家に帰ってからもなんだか心配で、思わずMくんの家に電話しそうになっちゃったけど、お父さんがいつも電話の近くにいるから、電話も出来ないし。
でも電話までしたら、しつこい女って思われちゃうよね。
明日の朝の練習でMくんに会えたらいいな…。
そしたら、今度こそお互いに気持ちをちゃんと確認し合えると思うんだ!
だから愛しのMくん、明日またお話ししようね♪
第五章
結局昨日は、全然寝れなかったの。
Mくんのことを考えてると、なかなか寝付けなくって。
でも、でも、きっと両想いになれたと、アタシは信じてるんだ♪
ちゃんと顔を洗って、シャキッとして…。
うーん、目の下のクマが気になるよぉ。
こんなむくれた顔じゃMくんに嫌われちゃう。
「お母さーん、何かいい化粧品ない?」
「何言ってるの!中学生が化粧なんて」
「だって、だって、昨日なかなか寝れなくてね、目の下のクマが酷いんだよ、ホラ」
「それぐらい、大丈夫よ。それより、授業中寝ないようにしなさい。頑張っておいでね」
「・・・ハーイ」
結局アタシは、寝不足感丸出しで、登校する羽目になっちゃった。Mくんに会ったら、なんて言おうかな…。
そのMくんとは、楽器倉庫で会ったよ。
「あっ、オハヨウ…」
お互いタイミングが一緒だったの。ちょっと嬉しくなっちゃった。
その後、Mくんの方から、
「俺、昨日全然寝れなくてさ…」
って話しかけてくれたから、
「本当に?実はアタシもなの」
と答えたよ。
なんか2人して照れちゃって、お互いの顔はまともに見れなかったんだけど、
「昨日はありがとう。嬉しかったよ。これからも仲良くしてね」
って、アタシから言ったの。Mくんも返してくれたよ。
「うん。俺も嬉しくて、嬉しくて。Tさん、俺は情けない男だけど、よろしくね」
こうして正式に、アタシとMくんはカップルになったの💖
この日も普通に授業はあったんだけど、昨日までは単なる好きな男の子だったMくんが、彼氏になって、同じ班で勉強してるのって、感覚が全然違うんだよ。
ついついMくんの仕草とか目で追っちゃうし。
今まで気にならなかったことも、一つ一つ気になっちゃう(n*´ω`*n)
Mくんはアタシのこと、授業中に意識してくれてるかな?
「あーっ、4時間目に体育なんて、地獄だぜーっ」
Yくんが3時間目が終わった時に、叫んでたよ。
そうだよね、4時間目に体育なんて…って、もしかしたら水泳の授業だったっけ?
隣のSちゃんに聞いたら、
「うん、水泳だよ。どうしたの?」
「やっぱり…。アタシ、水着忘れちゃったの…」
「えーっ、マズいよ、それって」
「だよね。どうしよう…。体操服で見学なんてしたら、女子だからアレだろって噂されちゃうし」
「ちょっと待ってて、アタシの友達が4組にいるから、4組はもう1時間目に体育終わってるからさ、水着借りてきてあげるよ」
「本当に?いいの?」
「だってこれは女の子にとっては一大事ですよ、Tちゃん!」
Sちゃんはそういうと、4組へと走ってくれた。
そうだよね、Mくんと付き合い始めた日に、プールを体操服で見学だなんて、Mくんも不思議に思っちゃうよね。
アタシの中学校は、男女一緒に、同じ教室で着替えるんだよ。
普段の体育なら、ブルマ穿いといて、スカートを脱ぐだけで済むんだけど、水泳なら水着を着てこなきゃいけないよね。
そう言えば女子のブラウスから、水着が透けて見えてたよ…(;´Д`)
みんな家から着て来てたんだね。
早く気付けば良かったなぁ…。
男子も女子もみんな着替えを終わらせて、グランドへ向かってるよ。
アタシ、どうなるのかな。
「はい、Tちゃん、水着借りてきたよ!」
Sちゃんが、4組の女の子からスクール水着を借りて、息を切らして帰ってきた♪
「わあっ、本当に貸してくれたの?」
「アタシのバレー部人脈、なかなかのものでしょ?でも、急いでるから、サイズがTちゃんに合うかどうかまでは…」
「ううん、水着があるだけで助かるから。本当にありがとうね」
「じゃあみんなどんどんグランドに行ってるから、アタシ達も急ごう!」
と、二人だけになった教室で、アタシとSちゃんは急いで着替え始めたの。
Sちゃんは家から水着を着てたから、ブラウスとスカートを脱ぐだけで良かったけど、アタシは普通の体操服だったから、一旦全部脱がなきゃいけなくてね(*ノェノ)キャー
タオルも持って来てないから、Sちゃんに見張ってもらいながら体操服と下着を脱いで、借りてきた水着を着たんだけど、1時間目に一度使われてるから、まだ乾いてなくて、なかなか全部着るのに時間がかかっちゃった(;´∀`)
しかもアタシより小さい女の子の水着なんだろうね、恥ずかしいけどちょっとハイレグ気味になっちゃったの(*μ_μ)
でもブカブカになるよりはいいよね?
「用意はいいよね?じゃあ行こう!」
アタシとSちゃんは、グランド目掛けて走ったよ〜。
何とか間に合ったの。Sちゃんに足を向けて寝れないよ、これからは。
こんなドタバタがあったなんて、他の子は全然知らないから、特に男子はあの2人、何してんだ?って目で見てる…(。>﹏<。)
Mくんもアタシのこと、心配そうに見てる(*>_<*)
恥ずかしい〜!
今日の部活で話し出来たら、説明しなきゃ。
えーっ、でもこんな話、恥ずかしいからしたくないよぉ(*´Д`)
Mくん、今日のことは忘れてね、お願い!m(_ _)m
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昨日に続きまして、私に深く刻まれている中学3年生の時の初めての彼女さんとの話を、いつもは私からの視点で書いているのですが、彼女さん側になって小説形式で思い出して書いています(^^ゞ
なので、エピソードはほぼ実話です。
付き合い始めた次の日の水着騒ぎは、その時は何なんだ?と思ったんですが、かなり後になってから酔った勢いで聞き出したエピソードです。
本当は今日で終わらせるつもりでしたが、案の定長くなってしまったので、後編としていたのを中編に変更しました💦
明日、ジェットコースターの勢いで、私がフラれるまでを書き上げたいと思います(;´∀`)
サポートして頂けるなんて、心からお礼申し上げます。ご支援頂けた分は、世の中のために使わせて頂きます。