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20歳、パリで感じた美学と美意識、人生観。

パリといえば、
優れたデザイナーにより多くのラグジュアリーブランドが生を享けた街であり、
フランスといえば、
香水大国としても知られている。

今回の約11日間の滞在だけでも、自分のこれまでの価値観とは違うもの、自分にない美学や美意識を見出した。

感動するほどおしゃれなマダムたち、熟成した美味しいワインみたいになりたいわたし

一番印象的だったのが、街ゆく人々のおしゃれさ。
パリだから自分も意識しすぎているのかも、と思ったけど、それでもみんな洗練されてて素敵だった。。
特にマダム、とりわけおばあさまがた。
聞いてはいたけど、黒をベースにしたファッションが主流みたいで、
しっかり手入れされた黒のシックなコートに身を包み、黒のハイヒール、黒のマスカラで統一感を保ち、
そんなモノトーンなコーディネートのなか、スカーフなどの小物、深紅のルージュで彩りを少し。
私はファッションについてあまり詳しくないのだけれど、彼女たちのファッションからは
「やりすぎない、洗練されたおしゃれさ」
を強く感じて。
自分も観光客だからだけど、パリは観光客と現地人の見分けがファッションで一番わかりやすいなと思った。真っ赤のベレー帽にコテコテに派手、気合の入ったお洋服を着た人は観光客かな〜と思うし、逆にエフォートレスでモノトーンなスタイルの人はパリジャンっぽく見える。(偏見かもしれないけど)
バスを待っていた時、隣になったおばあさまがまさにそんな感じのスタイルで、思わず観察してしまうほどだった。(話しかけられたのだけど、フランス語話せないの…と申しわけながら答えた。会話を断絶させてしまったの悔しいな、フランス語の勉強今年こそ始めたいな…。)

そんなおしゃれなマダムたちをみて、
とあるフランス独自の考え方を思い出した。

(フランス人は、ワインやチーズなど熟成させた食材が好きだ、という文脈で)
"そんな時間をかけ、熟成させるからこその魅力を愛するフランスで、私が特に素敵だなと思うのは、歳を重ねた女性を素敵だと思う文化。日本では、やたらと年齢を気にする傾向があり、若い方がいい、若い方が好き、というような風潮を感じます。しかしフランスでは、さまざまな経験を重ね、歳を重ねたマダムの方が、経験の浅い若い女性よりも素敵だ、というような考え方もあります。
もちろん価値観は人それぞれですが、私は歳を重ねることをネガティブに捉えず、むしろ肯定的に捉えるフランスの文化を尊敬します。"

https://parismag.jp/paris/14989

本当にこんな考え方があるのか、フランスに留学している友達に聞いたところ、「私も聞いたことある」と答えられたので、実際あるのかもしれない。
若さが商品化・ステータス化され、"JK"がブランド化された国で生まれ育った私には、この考え方がとても新鮮に、魅力的に見えた。

いろんな経験をして、いろんなものを見て、いろんな考え方を知って、
ずっしり熟成した重みがあって面白い人間になりたい。
美味しいワインやチーズのように、うまみのある人間になりたいな。

(余談だけど、初めて飲んだワインがあまり美味しくなくてそれ以来苦手意識を持っていたのだけど、フランスで飲むワインは本当に美味しくて苦手克服できたのかな…と錯覚した)

右が私のいただいた白ワイン"Happy Hours Jurançon Doux" 。
これまで飲んだどのワインより私好みで、人生ワインになるかも…と感動した
(真ん中はバター。あまりに美味しすぎたので一生食べ続けたかった)
アルザス地方の都市、ストラスブールでいただいたPinot Blancのワイン。白ワイン用の葡萄の種類の一つらしい。旅は食べ物や飲み物についても世界を広げてくれるから良い。

【Musée YSL】マスキュリニティ、ラグジュアリーブランドの意義、エンパワーメントについて考える

せっかくパリまで来たので、パリで生まれたブランドの美術館に一度くらい行ってみたい、ということで、私が足を運んだのは、イヴ・サンローランの美術館。

館内は比較的小さめで、疲れを感じることなくさっと見てまわれる規模。
デザイナー イヴ・サンローランの人生から、メゾンの歴史、デザインやそれに込められた思いまで、じっくりと堪能することができた。

イヴ・サンローランと、ブランドのミューズ・ルル・ド・ラ・ファレーズとベティ・カトルー。ベティの方は「唯一無二の女性」と題して日本でも展示が去年あったそう。行きたかった…

なかでも私が好きだったのが、イヴ・サンローランのこの言葉。上のゴールドの服の展示の前後にあったもの。

"日中は落ち着いた色が好きだ。というのも、明るい色はパリの街の光にあまり溶け込まないと思うから。その一方で、夜のあいだは、女性たちを楽園の鳥のように見せたい"

イヴ・サンローランがどのように色彩とパリのまちを見つめていたのか、女性をどのように見せたいと感じていたかがはっきりと分かる文章だと思う。
これはイヴ・サンローランに限った話ではないけど、ラグジュアリーブランドの展示を見ていると、いかに女性を魅力的に見せるか、さまざまな角度から模索し、いろんなスタイルを提案してきたということが伝わってくる。

イヴの若き日のスケッチブックの一部

特に印象的だったのが、これらのデザイン。

これは自分の話になるんだけど、私はずっと、肩幅が広いことがコンプレックスだった。骨格診断の結果はドラマティック(ゴージャス、と表現されることが多いが、これまでは存在感が大きいだけじゃん…と感じていた節もあった)。広くがっちりした肩幅は男性的で、華奢で細い体躯が女性らしいと思ってたし、そういう女性らしい体型の方が望まれると思っていた。
でも、イヴ・サンローランのデザインにあったのは、肩幅が強調され、大胆で、堂々として豪華なスタイル。そこに私は、男性らしさ、マスキュリニティの肯定を見出した
イブのパートナーで共同創業者のピエール・ベルジェは、

シャネルは女性に自由を与え、イヴ・サンローランは女性に力を与えた

と語ったそうだけど、まさにその通りで、"女性のための男性服"を提案したパイオニアだったらしい。

「ル・スモーキング」

イヴが「ル・スモーキング」を発表した1966年当時、女性が人前でパンツを履くのは物議を醸す行為だった。(中略)「ル・スモーキング」は、当時も今も、本質的には反骨精神やアンドロジニー、グラマーさ、挑戦的な現状への挑戦を示唆するスタイルである。「女性にも男性と同じ基本的なワードローブを持ってほしかった。ブレザー、パンツ、そしてスーツ。これらのアイテムは非常に実用的だ。女性はこのような実用的なワードローブを求めていると思っていたが、その考えは間違っていなかった」サンローランは、1977年に『ザ・オブザーバー』紙のインタビューで、そう語っている。

https://www.vogue.co.jp/fashion/article/2019-08-01-yves-saint-laurent-cnihub

このデザインを見た時、私は自分の持つ「広い肩幅」という男性らしさ、マスキュリニティを肯定されたような気がした。
男らしくてもいい、女性らしさに囚われ、自己否定しなくてもいい。
むしろ、肩幅ががっちりしていた方が、このデザインのジャケットの良さを引き出せるんじゃないか、よりかっこよく着こなせるんじゃないか。
いつか、イヴ・サンローランがデザインした服をまとってみたい。
また新たな夢ができた。

女性をエンパワーメントしたい、
最初にそういう気持ちを抱いたのは高校生の時で、その時は具体的な手段が"UN Womenに入ること" くらいしか思いつかなかったんだけど(視野せま)、
ファッションを通してエンパワーメントするという方法もきっとあるはずで、
媒体や手段、影響する人は大きく変わるにしろ、ビジョンの叶え方は多岐にわたるし、
ファッションを通して人間はより魅力的に、美しく、なりたい自分に近づくという自己実現を叶えられるのではないか、という考えに至った。
消費者行動論を少し勉強してみても思ったけど、
ラグジュアリーブランドにはそのような目的にも存在していると言えると思うし、
その購買体験を通して得られる経験や自己実現は、ファストファッションでのそれと一緒に語ることのできるものではない、とも感じた。

タイムレスなものをつくりたい

Musee YSL で展示されていたデザインは、おそらく古いものは約60年ほど前のものもあって。
優れたデザイナーだから当たり前だと言われるかもしれないが、それらは驚くほどに「古くささ」を感じさせなくて、2023年の今でも洗練されていて、高貴で、華々しく、美しく見えた。

セーヌ川沿いではよく古本や古いカタログが売られているんだけど、これはそのなかで見つけたファッションカタログの一つ。
お店の優しいマダムが、これは1950年代のものよ、と教えてくれた。
私はここでも、"70年以上前のものなのに古さを感じさせない"、という現象を目にした。
"流行り"としてのみ消化され、その時代が終わったら忘れられるようなものではなくて、
数十年経っても魅力的に見えるような、時代の流れに影響されないような、タイムレスな何かを残りたい。
すごくぼんやりとだけど、私の中にもう一つ、やりたいことが生まれた。

"美はメイクアップだけにあらず" 香水の重要性

そんなこんなで、パリ滞在最終日、23:30。
オペラにて1人空港行きのバスを待っていた私は、不安に駆られていた。
バスが来ないのだ。。(フランスあるある、思ったように事が進まない)
このまま深夜になっても来なかったらどうしよう、泊まるところもないし、深夜のパリで野宿だけはぜっったいに嫌!
緊急事態の私に声をかけてくれたのは、同じくバスが来なくて途方に暮れていた、中華系の観光客の方と、フランス人のマダム、レバノン出身パリ在住のマダム。
4人でウーバーをシェアして、空港まで行かないかと提案してくれたのだ。
彼女たちがみんないい人だったのと、そのうちの2人がフランス語を話せたのは不幸中の幸いだった。
夜のパリを見て、
「これがパリだよ!」「夜のパリ最高、踊りに行く?」
なんて軽く冗談を言い合い笑う彼女たちは強かった…(笑)
無事にシャルル・ド・ゴール空港に着き、他の2人はホテルに向かったのだけど、レバノン出身のマダムは空港泊するとのこと。
私もその日は空港泊の予定だったので、"一緒にいてもいい?🥺"と聞くと、もちろん!とのこと。

私が、「空港泊は初めてで、パリということで治安も不安だったから、あなたがいてくれてよかった、すごく心配してたの」と言ったら、
彼女はなんと、温かいカフェラテを奢ってくれた。。(泣)

この時飲んだカフェラテ、すごくあったかくて美味しく感じた

「パリは初めてで、1人で来たの」と私がいうと、
「本当に!?That's nice to hear!!」と彼女は驚いて笑っていた。笑
彼女はパリに15年住んでいて、数々のブランドでメイクアップアーティストとして働いてきて、今はGUCCIで働いているとのこと。
レバノンにいる家族に会いに行く途中だと話していて、
すごく良い国だし大好きだけど、経済や国が安定していなくて…と語っていた。

レバノン、と聞いて中東の辺り、としか想像できない私に、
彼女は、なぜレバノンを離れたか、家族はどうしているか、話してくれた。

その時、長旅ですごく疲れていて眠かったのだけど、
私もコスメ好きなので、どのブランドのコスメが好きでどこのがお気に入りか、といった話を気づいたら二時間ほどしていた。
その時彼女が言った言葉で、印象的だったものがある。

「美っていうのはね、メイクアップのことだけではないの。メイクアップ、スキンケア、香水。この3つが揃って初めて美が完成されると私は思ってる。だから、メイクの学校に通った後に、自分でスキンケアや香水についても勉強したの。」

思い返せば、可愛くなりたい、綺麗になりたいと思って、中学生の時にスキンケアについて調べ始めたし、中3でメイクを始めてからはメイクの技術の向上こそが美しさにつながるものだと思ってた。
そんな私の中で、香水の優先順位度はいつも少し低かった。
高校の時、学校に行きたくなくて、推しのフレグランスをつけて自分を慰めていたこととかはあったけど、毎日つけていた訳ではなかったし、大人になった今でも正直毎日つけているわけではない。
そもそも、日本人は西洋の方に比べて香水を日常的につけないと言われてるくらいだから、気づかなかったのも普通かもしれないが、
フランス、そして美の業界の中でどれだけ香水のプレゼンスが大きいか、気付かされた。

そういえば、パリと香水といえば、YSLのパルファム「モンパリ」を思い出す。
イヴは、「パリ」という街の名を冠した香水に、「ラヴィアンローズ」から、薔薇の香りとイメージを吹き込みたかったようだけど、フランスでは薔薇の香りは売れない、と当初は反対されたこと、それでも、イヴが「"パリ"にはノスタルジックなムードが欲しい」とローズの香りを求めたこと、1人の無名の調香師がこのパリの香りを作り上げたこと、煌めくクリスタルボトルはイヴが熱望した"パリの街の灯り"であることなどを思い出した。(【イヴ サンローラン】パリ カイエ・デ・モード https://cahiersdemode.com/paris/ より)

一つの香水にこのような思いと逸話が秘められているのも、ブランドならではかもしれない。そして、どうして、メイクに思いを込めるのと同じように、香水にもイメージや思いを重ねてこなかったのだろう、と感じた。

ちなみに、人間は五感の中で、嗅覚で覚えたものを一番忘れにくいらしい。
パリでふらっと入った香水店で、高校の頃大好きだった国語科の先生が使っていた香水の香りと雰囲気に似たパルファムを見つけて買ってしまった時は、さすがに私も拗らせすぎだろ、と自分で自分にひいたが、少し納得がいく。

「自分の香り」があって、それがもし誰かの記憶の中で良い香りとして残ったら、なんか嬉しいよな。

カフェラテが疲れた体にしみる午前3時、そんなことをぼんやりと考えた。

いま、パリに来れてよかった

ずっと来たかった憧れの街、パリでの11日間は、
私にたくさんの出会いと刺激、気づき、インスピレーションを与えてくれた。
ここで書ききれないことも、たくさん。
もちろん良いことばかりではなかった。(トイレは汚いし、駅は階段多いし、イースターで人は多いし、ストで街は燃えているし、ノルマンディー地方に行ったらパリに帰る電車が説明もなく運行休止してパニックになるし、駅員にフランス語で冷たくあしらわれるし、空港に行くバスは来ないし…)

でも、ぼんやりとだけど、やってみたいこと、なりたい姿がまた明らかになったし、
これまでの旅の中で一番、収穫の多い旅になった気がする。
そして、これは振り返ってからいうべきことかもだけど、後で振り返って、「私の人生に影響を与えた旅」になる気がする。

20歳、大学3年生、留学中、就活中、進路に人生にいろいろたくさん考えることがあるけど、このタイミングで来れて本当によかった。出会ってくれたみんな、ありがとう。

次はいつ来れるかな。


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