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「劇場」に衝撃を受けすぎてnote作ってしまった

又吉直樹原作、行定勲監督の『劇場』をAmazonプライムでみた。

夜中にボロボロ泣いて、泣きすぎるので一気に観られなくて途中で何回も止めた。配信だとこういうことができる。

あまりに衝撃を受けたので、だいぶ前に一度登録して放置していたnoteに記事を書くべくアクセスしてしまった。※多分に映画のネタバレを含む内容になることをここでお断りしておきます。

あらゆる「元彼」を内包している永田という男

なぜこんなに心が動かされるかは映画が始まった瞬間から明らかだった。山崎賢人演じる永田というダメな劇作家が学生時代の彼氏にそっくりだったのだ。

言い過ぎではなく、長身痩躯の見た目も姿勢も、喋り方もそっくり。でも山﨑賢人を観ていて今までそんなこと一度も思ったことなかったから、やっぱりこの映画と「永田」というキャラクターのもつパワーだったのだと思う。

松岡茉優演じる沙希ちゃんと永田の恋愛は、楽しげな日常の中に危うさと切なさと残酷さが溢れていて、見事に心を抉られた。永田という男は彼氏としてはクズのような男で、ヒモ同然で沙希ちゃんの家に転がり込み、家賃も光熱費も支払わず「演劇と向き合う」と言って好きなものを買ったり読んだり食べたりしていた。沙希ちゃんは、そんな彼にお金の話を切り出すこともやめ、自ら昼も夜も働き、怒りたい時も泣きたい時も笑い、ひたすら「永くんすごい」と彼の才能を褒め、彼のために梨を剥いた。

私の元彼は劇作家ではなかったし、ヒモではなかったし、人見知りではなかったし、永田ほどクズではなかったと思う。もちろん私は松岡茉優のように可愛くなく、劇中の沙希ちゃんのように天使のような寛容さはなく、怒りたい時は怒り、泣きたい時は泣いた。

それにも拘らず衝撃を受けるほど「そっくり」だと思ったのは、映画を観ながら永田に対して抱くどうしようもない苛立ちや愛おしさが、本当にヒリヒリと当時の記憶を呼び起こしたからだろう。

そしてこのヒリヒリした感覚は、後から私が友達に感想を聞いたところ、私だけが抱いたものではなかったようだ。「永田」は「元彼」(あるいは現在のパートナーの昔の姿かも)の象徴なのではないだろうか。

言い訳としての永田のモノローグ

映画では全編通して、永田によるモノローグがナレーションとして差し挟まれる。これがなければ、もしかすると辛くて観ていられなかったかもしれない。永田は沙希ちゃんの周りの男に、沙希ちゃんが好きになるかもしれない芝居や映画に、そして沙希ちゃん自身に嫉妬する。甘えや妬みや恥ずかしさや羨望は、永田の攻撃性となって現れる。

終盤、沙希ちゃんはだんだん心が壊れてきて、永田に対して声を荒げるシーンがある。

「永くんは一回も私のこと褒めてくれたことなんてない。一回も。」(すみませんうろ覚えです)

いくらモノローグで言い訳をしたところで、沙希ちゃんには届いていない。もう2人の関係が修復できないところまで来て初めて、永田は沙希ちゃんを自転車の後ろに乗せて、沙希ちゃんを褒める。思いを伝える。(ちなみに私はこの自転車のシーンでボロ泣きだった)

それでもなお、変わろうとしない永田に傷つき、「でも変わったらもっと嫌だ」という沙希ちゃんの台詞がすごくよく分かるのだ。

永田(という「みんなの元彼」)のもつ繊細さや壊れやすさを、守ってあげられるのは私しかいないと思ってしまう。「ここが一番安心できる場所です」と、小さな部屋に2人は閉じこもってしまう。

ギリギリだけど心地良い場所に2人が立っていることを、観客である私たちは知っている。

山崎賢人の可能性

松岡茉優は大好きな女優さんだったけど、山崎賢人にこんなに心を動かされるとは思わなかった。とても失礼な話だけど、アニメの実写版によく出るイケメン俳優だと思っていた。行定監督は、最初は山﨑のキャスティングを「思いもしなかった」と言っている。

https://natalie.mu/eiga/news/388177

何様目線だよ、と我ながら思うけれど、今後の活躍が楽しみな俳優さんが増えて嬉しい。

これからこれを見る人は、昔の恋愛が否が応でも呼び起こされてしまうことに気をつけてほしい。でも絶対おすすめ。




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