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過去の人物を道徳的に評価すること
「今の価値観で過去を裁くな。」 このような主張を見たことはないだろうか。この主張は、過去の不当な免罪に都合よく使われることがほとんどだが、一分の理もないわけではない。現在の倫理的基準からすれば不当だが、とはいえ当時の人々がそれに気付くことが出来たかというとそうではない、という事例はありふれている。ここで問いが浮上する。我々は時間を超えた道徳判断を差し控える他ないのか。
哲学者のミランダ・フリッカ
「法はどのようにして文学に似ているか」
ロナルド・ドゥオーキン『原理の問題』第6章の要約
裁判官は、係争中の案件について、どのような扱いをすることが法に適っているのかを判断する。しかし、ケースによっては、参照すべき法に適切な扱いが明記されていないことがしばしばある。例えば、アメリカ合衆国はついこの間まで、女性が妊娠中絶を行う権利をプライバシー権によって正当化していた。しかし、当然のことながら、プライバシー権に関する憲法の条項に妊娠中絶
ドゥルシラ・コーネルの妊娠中絶論
フェミニズム法学者、ドゥルシラ・コーネルの『イマジナリーな領域:中絶、ポルノグラフィ、セクシュアル・ハラスメント』における妊娠中絶擁護論の要約
差異と平等のジレンマ——コーネルの基本戦略
差異を認めつつも平等を実現するにはどうしたらよいだろうか? 例えば、男性と女性の身体には明らかな違いがあるので、両者の抱えるニーズは同じではないが、それでも両者を平等に扱うとしたら、どのような方法が考えら
偶然性・アイロニー・連帯
アメリカの哲学者、リチャード・ローティの著作。本書の中核は、「私的な完成と公共的な責任の統合を諦め、リベラルなアイロニストたれ」という主張にある。
伝統的に、真理と道徳的な良心の間には何らかのつながりがあると考えられてきた。私たちの社会の道徳的発展は、合理性の進歩であると。ところが、真理が宿るのは、時間の相対性を逃れているとされる、世界の側でもなければ、理性の側でもない。むしろ、歴史的な偶然によ
私が分裂したとして・・・
英米系の哲学ではしばしば、自己同一性や人格をめぐる問題を考えるにあたって、「分裂の思考実験」を用いることがある。これはどういう思考実験かと言うと、ある人物の脳を二つに分割するなり、オリジナルの身体を破壊して複数のコピーを作るなりして、当の人物の分裂体を作るという思考実験である。こんなこと出来るわけねーだろと思う人も大勢いるだろうが、哲学者というものは「丸い円」のような言葉の定義から言ってそもそも不
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