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【おすすめ本】文系でもデータの分析とリサーチに強くなれる『マーケティングリサーチとデータ分析の基本』

『マーケティングリサーチとデータ分析の基本』
著者:中野崇
出版社:すばる舎
初版:2018/4/8
ページ数:299ページ

マーケティング関連の本を初心者でもわかりやすく紹介していくブログの第3弾。Kindle unlimitedでも読めるものを選書し、手に取りやすく、なるべく身になるポイントを紹介していこうと思います。今回は中野崇さんの著書『マーケティングリサーチとデータ分析の基本』を紹介します。本書はマーケティングリサーチやデータ分析方法について専門用語をあまり使わずに解説しているので、初心者でもとてもわかりやすく書かれています。

■著者プロフィール 
中野崇さんはマーケティングリサーチのスペシャリスト

中野崇さんは良品計画へ就職し2005年にマーケティング支援企業へ入社。中国支社立ち上げや韓国支社の経営再建、SaaS型の新規事業開発責任者、統合マーティング(PR、イベント、デジタル、CRM)部門の責任者や電通マクロミルインサイトの代表取締役となり、現在は日本だけではなくアジアにも多数のITエンジニアを擁する東証マザーズに上場企業であるSun*のビジネスプロデューサー・ビジネスインキュベーターとして、顧客の事業開発やDXプロジェクトなど、マーケティングやデータ分析だけに留まらず、わかりやすい解説で講師や執筆など多方面で活躍をされています。

■1章のポイント 
ビッグデータは魔法の杖ではない

 私たちの生活において、もはやインターネットは欠かせません。その一方で私たちのあらゆる行動情報は、ビジネスやマーケティングにおいてどんどんと蓄積をされています。
 メールやSNSでのやりとり、検索履歴や購買履歴、位置情報など私たちの多くの情報はライフログとして、多くの企業が分析し活用され、様々な商品やサービスに役立てています。そのことをデータ・ドリブンマーケティングといわれ、世界最大のプラットフォームを提供するいわゆるGAFAがこれらを支配していくことになるというのが大方の見方です。
 しかしそれは、そういったビッグデータを活用できる環境やスキルがあってこそ活かされるもの。データ・ドリブン=ビッグデータはないと中野さんは断言しています。ビッグデータ自体、専門家や専門企業でもアウトプットするのは難しいものであり、ビジネスパーソンの意思決定やソリューションなどのアクションにおいては、もっと身近にあるデータをシンプルに活用することが大切であると続きます。
 ビッグデータがあれば、課題は解決するということがいわれますが、ビジネス課題や意思決定においてはビッグデータでなくても、データ分析やリサーチ方法のスキルが身につけば十分に活用できるのです。

■2章のポイント 
マーケティングリサーチの必要性

 マーケティングリサーチは、ビジネス課題を解決するためのあらゆる情報収集や分析であり、リサーチすることにより、ビジネスでは、下記の点において有用であるといいます。

“*勘や経験だけではなく、客観的な情報や数値で判断できる
*他社の経験から学ぶことで、多面的な視点で物事を見ることができる
*思いがけない発見がある”

 あらゆるものが変化をし、トレンドやヒットの変化も著しい昨今、過去の成功にすがっていては、ビジネスにおいて取り残されていくことが明白になってきています。マーケターは無論、あらゆるビジネスパーソンには、リサーチやデータ分析能力といったデジタルリテラシーが必要不可欠になっていることは実感している方も多いはずです。
 本書では、リサーチやデータ分析を成功させるには①情報収集力、②情報分析力、③情報解釈力、④情報活用力の大きく4つのスキルが必要であるとしています。
 また、リサーチ成功の7ステップが丁寧かつ明快に書かれていますので、その順序に沿って行えば効果的にリサーチすることができるはずです。それに加えてマーケターにとって基礎的な3C分析やSWOT分析、STP分析についても記載がありますので、初心者はもちろん、マーケターにとっても中野さんの策定方法がわかるので、参考になることでしょう。しかし、リサーチの際にしっかりと必要な数値を見極めることができないと、分析結果に大きな乖離や齟齬が生じてしまうことがあります。それを防ぐには、5W1Hが必要であるとしています。
 当社でも5W1Hはリサーチだけにとどまらず、さまざまな企画立案、原稿作成など多くの案件に対して導入をし、判断や決定における指針のひとつとして取り入れていますので、5W1Hでの思考法の重要性は共感できる部分です。

■3章のポイント 
調査をよりよいものにする傾聴力

 3章では、インターネットリサーチとインタビュー調査方法が書かれています。依頼の方法や調査項目の作成方法、注意点が詳細に書かれています。
特にメンタルモデルであるアイセアスまたはアイシーズとも呼ばれるAISCEAS(認知[Attention]、興味・関心[Interest]、検索[Search]、比較[Comparison]、検討[Examination]、行動[Action]、共有[Share])をベースにした調査項目の作例がありますので、マニュアルとしても役立つはずです。
また、インタビュー調査における実践例も秀逸です。誰が読んでも一度で理解できるようわかりやすく書かれていますので、入念な準備とよりよい調査ができることでしょう。
 その中で特に注目すべきところは、インタビューにおけるスキルの部分です。インタビュースキルが高いだけで、得らえる情報は格段に変わると中野さんはいいます。そのスキルの中で中野さんが重視するのが聴くことです。本書では「きく」というアクションにおいては「聴く」という言葉が使われており一般的な「聞く」と使いわけられています。言い換えれば、それだけ中野さんは、「聴く」行為を大切にされているのだと理解しました。
 私自身、これまでにインタビューは多くしてきましたが、よいインタビューをするためには、傾聴力がとても大切だと考えています。相手に対してどれだけ真剣に向き合い聴くことができるか、その傾聴力の根本には、感謝・興味・好奇心が重要です。

■4章のポイント 
よいマーケターになるには

 リサーチやデータ分析においては、仮説を考えることが重要だと中野さんは解説します。仮説によって方向性が定まり、リサーチやデータ分析においてもゴールが明確になることがよりよい結果につながります。本書では、良質な仮説を立てるための方法が書かれていますので、こちらも注目すべき内容です。
 仮説を立てる上で、創造力は欠かせません、。よいマーケターは、ジャンルにこだわらず多くのものに興味をもち観察し学びインプットしています。そこからアウトプットをし、自分の知識として定着を図っています。そのような日々の習慣において、よりよい仮説は立てることができるのでしょう。
この章には、民俗学の研究調査において用いられているエスノグラフィーという行動観察について注目すべきビジネスにおける課題解決のひとつとして言及されていますので、興味・関心がある方はぜひ読んでいただきたい内容です。

■5章のポイント 
誰しもができるフォーマットの重要性

 5章ではデータの分析からアクションにつなげる方法が書かれています。こちらの章も非常に詳細で、比較軸、それぞれの値、認知度、分布図、因果関係など分析における留意点やポイントが、まさにかゆいところに手が届くほどの記述です。
 さらにデータの分析と解釈をアウトプット作成する方法も書かれていますので、特にデータ分析をアウトプットする経験の少ない方にとってはとても心強い1冊になることでしょう。
 中野さんが本書で上げているようなアウトプットの作成術は、とてもわかりやすいので、マニュアルやフォーマットという点においてもとても重要です。
 大企業では、業務分担が行われ各担当がそれぞれの専門分野に従事することが多いはずですが、多くの中小企業ではそういうわけにはいきません。横断的に業務をこなすことが多くなります。その中で誰しもが行える仕組みやフォーマットづくりは、利便性が高く非常に有効的になります。

■6章のポイント 
マーケティングリサーチの最前線

 6章では、マーケティングリサーチの最前線として、現役マーケターや研究員の考える今後の動向が書かれています。検索データの可能性や生体情報を活用したデータ分析、インターネットリサーチの調査設計といった解説がそれぞれのスペシャリストの寄稿という形式で解説されており、ここでは詳細には述べませんが、それぞれ示唆に富んだ内容といえるでしょう。2018年発行の書籍ですので、情報としての鮮度についてはどうしようもありませんが、検索データやデータ分析、インターネットリサーチにおける活用方法は、知識のインプットとして、知っておいて損はありません。

■まとめ

最後にまとめです。
・データ分析やリサーチのポイントがわかる
・データの適切な活用方法が理解できる
・ビジネスの意思決定の精度が上がる
「はじめに」で中野さんが書いていた通り、文系出身者や数字が苦手な方でもリサーチやデータ分析について非常にシンプルにわかりやすく書かれていました。「とりあえずこれだけ押えておけば」という謳い文句の本は多くありますが、その中でもひとつ抜きんでた印象です。
この本さえおさえておけば、多くのデータ分析やアウトプット、アクションまでのフローを理解することができるでしょう。読後感のよいおすすめの良書です。

よろしければ下記もご確認ください!
https://www.j-messe.co.jp/

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