能力の差なんて存在しない

みんな同じスタートライン

よく自分のちっぽけさを痛感することがあります。自分に出来ることは、こんなものなのかと思ってしまうのです。大した能力もなければ、飛び抜けた才能もない。そんな自分に出来ることは、たかが知れていると思ってしまうのです。

そんな風に落ち込んでいる時に、思い返すことがあるのです。

ある人が言っていたのを記憶していたのですが、世の中の大抵の人は、個々に持って生まれた能力の差というのはあまりないそうです。人それぞれ、できることや出来ないことはあるけれど、全体的にみればさほど変わらないそうです。確かに、生まれたときから、何かに飛び抜けた能力を持っている人はいるそうですが、それは、本当にほんのひと握りなんです。人一倍記憶力が良かったり、直感力が特段に高い人、判断力が優れている人。そうした人たちは、きっと何をしても、上手くいくものだということ。

そうしたわずかな能力の長けた人を除けば、皆スタートラインは同じだということでした。

天才と言われた人の素顔

思い返せば、僕が料理人の世界に身を置いていたときのことです。誰もが憧れるほどの才能の持ち主がいました。多くの人が彼のことを天才だと称していました。僕もその方に憧れては、追いつこうと必死になって努力したけれど、彼はどんどんと先に行ってしまうようでした。彼のそばで3年ほど、共に働かせていただきましたが、とても僕なんかには手の届かない存在だと感じていたんです。手先は本当に器用で、新しいアイデアが次から次へと思いつく姿を見て、僕は持って生まれたものが違うと思っていたんです。

ですが、それは僕が勝手に思い込んでいたに過ぎないということ。当時の僕が、気付かなかっただけだったのです。その人のことを憧れていた僕は、誰よりもその方のことを分かっていたのに、現実をちゃんと受け止めていなかったのです。

だって、明かに熱量がちがったのです。彼は、誰よりも料理のことが好きだったんです。いつも話すことは料理に関することばかりだったし、新しい料理を求めて、どんな時も積極的に学んでいました。専門書だって隅から隅まで読んでいました。だから、新しいアイデアが次から次へと浮かんできていいたんだと思います。きっと、手先が器用なことも、人が見ていないところで、誰よりもやり込んでいたからこそ出来るようになったのだと思います。

それに比べて僕は必死になっていたというけれど、あそこまでの熱量は持ってはいませんでした。気分によってはやったりやらなかったりが多かったものです。モチベーションが高いときは、意欲的だったかもしれません。ですが、ちょっとしたことで、投げ出してしまっていたのでした。

当時、天才と言われた人の素顔は、誰よりも熱量を持って、誰よりも日々の努力を惜しまなかった人だったのでした。

結果を出す人出せない人の差

学生の頃を思い出してみれば、さらに分かりやすいかもしれません。僕は、よく一夜漬けをしていました。不断は成績なんか気にしないと思うくらい何もしていないのに、テストの直前になると、危機感を感じては焦るのです。

そして、科目は何でもいいのですが、前日の夜になると英単語を必死になって憶えようと必死になるのです。一気にインプットすれば、それと同じくらい頭から抜けていってしまうものであるとされています。ですが僕は、昨日勉強したところが出たのに何も思い出せなかったと悔いている。それでもって、自分には記憶力がないと落ち込んでしまっていたのです。

ですが、きちんとテストの結果を出している人は、日頃から少しずつ英単語を憶えていっているものだったりするものです。

その当時の僕もまた、そうしたことに気付かずに、頭が良い人悪い人で、くくりつけて判断していたのです。今なら容易に理解できます。毎日毎日の積み重ねの差だということ。単純に時間を計算しても、毎日1時間勉強する人と全くしない人の差。一ヶ月で31時間の差、一年で372時間の差、言い換えると15日半の差が生まれるのです。

それは、覚悟や意志の差でしかないのです。

人との差をつけるのなら、もうどうすることが必要なのか分かっているはずなんです。言われてみれば、当然のことです。自分が成長したいのなら、毎日積み重ねていくしかないのです。決して近道はありません。

これを、僕は改めて自分自身が、理解する必要があるのだと思いました。

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