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出来ると思うこと
そう思ったらそうなってしまう
自分は出来ると思えば出来るし、自分には無理かもしれないと思った時から出来なくなるものです。人の思い込みの力とは、それくらい凄いものであると言えます。
人間関係もそうだと思うのです。どんなにそれまで仲良くしていても、あるきっかけで、この人とは無理だと思ってしまうと、たちまち、その人が嫌な人に見えてしまうのですから。
出来ないと思い込んでいた僕が変わったのは
学生時代の僕は、何をしても続かない人間でした。幼い頃から、厳格な母に否定されてきた僕の頭の中は、「自分なんかが出来っこない!」という言葉がいつも先行していたんです。先ほどの人間関係の話も、その頃よく起きていたことでした。趣味もそうでした。やってみたいと思っては、すぐに行動するのですが、どれをやっても上手くいかずに投げ出していました。そんなもんだから、アルバイトも仕事内容がほんの少し厳しかったら、すぐに自分には無理だと感じて辞めたり、上司や先輩、同僚で少しでも気の合わない人がいれば、ここではやっていけないとすぐに感じては、辞めてしまっていたんです。
そんな時に、たまたまアルバイトの募集を見つけて応募したのが、通学途中の焼肉屋さんだったのでした。面接してくれた店長の話が、よく分からずに、とても長い話だったので、ここもすぐに僕は、続かないだろうといった予感しかありませんでした。
ところが運よく採用され、すぐに出勤初日を迎えました。
そこの焼肉店は、主に学生アルバイト主体で営業を回すお店でした。だからなのか、その中のアルバイトリーダーは、とても厳しそうな方でした。
僕は、お皿洗いや簡単な作業などを教えてもらい、調理場の端っこで、様子を伺うことになりました。忙しさが増すにつれて、スタッフみんなの声や動きが激しくなり、ピーク時には、戦場のような目まぐるしさでした。それを見ていた僕は落胆しました。とても、ついていけそうにもないって。僕には出来そうにもない。無理だって。
その不安で頭がいっぱいになって、お皿を持つ手の力が抜けてしまったんだと思います。大きなお皿は、僕の手からするっと抜けて地面に落ちました。大きな音が店内に響きました。
すると、すぐにバイトリーダーが、大きな声で、「失礼しました!」と言いました。他のスタッフもみんなも大きな声でそのあとに続きました。まるで応援団のようでした。僕もびくっとなりながらも、我に返り、必死になって続きました。焦りと申し訳なさで、凄く落ち込みました。ただの邪魔者でしかないって。そう思いながら、割ったお皿を縮こまって、ほうきでかき集めていると、バイトリーダーが僕のところにやってきました。多分叱られるだろうなって覚悟して構えていると、ぽんと僕の肩を叩き、一言こう言ったのです。
「なんくるないさー。」
後から知ったのですが、バイトリーダーは沖縄の方だったのです。当時の僕は、なんとなく意味を知っていても、実際に本場の「なんくるないさー」を、あのニュアンスで聞いたのは初めてでした。
緊迫した空気をずっと耐えていた緊張感と、お皿を割ってしまった罪悪感でいっぱいになって、硬直していた僕の気持ちが、その言葉で一気に、張りつめていたものが、ほぐれたような気持ちになりました。
なんか、よく分からなかったけれど、凄く心に響いたんです。とっても優しく、あたたかい感じがしたから。
それからというもの、僕の中で、「なんくるないさー」という言葉が、気に入ってしまったのか、いつも頭に浮かんでくるようになりました。
不安になりそうな自分がいると、もう一人の自分がすっとやってきて、ぽんと肩を叩き、あの時と同じニュアンスで言うのです。「なんくるないさー。」って。
そしたら、「そうだよね。大したことないよね。何とかなるよね。大丈夫だよね。」そう思えるようになったのです。
結局、僕はそこの焼肉屋さんのバイトを社会人になるまで続けることが出来ました。何一つ、続かなかった人間が、たった一つの言葉で、ここまで変わることが出来たのです。言葉は感情を変えることが出来るのです。そして、人生は、分からないものだし、誰もが可能性をもっているという証拠ではないかと思います。
ちなみに、あの応援団のような掛け声は、本当に応援の役割を持っていたことを、それも後になって知りました。
みんなで謝罪することで、お客様に嫌な思いをさせないようにと、ひとりが責任を感じることを、未然に防ぐように。失敗した人を励ます意味もこめて、みんなで謝ろうというものだったのです。
出来ると思うこと
最初にお話しさせていただいた通り、そう思ったら、そうなってしまうものなんです。出来ると思えば出来るし、出来ないと思うから出来ないのです。
だったら、出来ると思えばいいのだから、簡単ではないかって思いがちですが、それが難しいものだから、多くの人は、自分の理想を叶えることが出来ていません。
どんなに出来ると思い込もうとしても、無意識の部分では否定している自分がいるからです。
その理由は、どんなに過去を清算していても、心の何処かでは傷つき、そう思うことが出来ない、恐れている自分が隠れているからではないかと思うのです。
そんな自分がいることを認めてあげることは、とても大切なことではないでしょうか。過去の僕は、そんな臆病な自分を、どこか否定していた自分がいたから、上手くいかなかったのだと思います。
だからこそ、自分に大丈夫だよ。心配ないよ。何とかなるよ。そうした言葉が必要だったのだと思います。
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メルシー
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