これまでの人生を無駄にしてはいけない

やりたいことが出来なかった過去

かつて僕は、体調を長い間、崩してしまいました。ふと、これまでの自分を省みたときに、無茶ばかりしていたことに気が付きました。生活習慣がとても乱れていたからでした。本当に酷いものでした。仕事に明け暮れてばかりでしたから。明け方に出勤して、深夜遅くに帰宅していました。家に帰っても何もする気にはなれないほど、毎日疲れ切っていました。いつも時間に追いかけられていた感覚でした。何かを楽しむと言ったことがありませんでした。やりたいことなんか出来るはずがなかったんです。そんな余裕もありませんでした。多くを我慢していたんです。何もかもが消化することが出来ずに自分の心の奥底に押し込むように生活していたんです。目の前のことで精一杯でした。自分の幸せを願っているはずなのに、自ら出口の見えないトンネルに入っているのだと感じていたのでした。

当時の自分を振り返る度に、僕はずっと自分を否定していました。やりたいこともしないで幸せになれるはずがないって。仕事を押し付けられているのが分かっているくせに、どうして断れないんだって。情けないじゃないかって。そんなに「NO」ということが、怖いのかって。意気地なし。それに、仕事が全てのように思っているけれど、もっと、大切なことがあったんじゃないか。それも、本当は気付いていたんじゃないかって。ただ、色んなことから逃げたかっただけじゃないかって。仕事に人生を捧げるなんて、あまりにも、もったいなかったのではないかって。

過去を振り返る度に溜め込んでいた、様々な思いが溢れてくるのでした。今だから分かることがたくさんありました。自分の人生において大切にしたいものや満たされる気持ちがあるからこそ、輝いて行くものだということ。当時の僕は、何も知らなくて、ただやみくもに生きていたこと。確かに、お金は手にすることが出来たかもしれません。でも、そのおかげで、多くのものを失っていたことに気が付いたんです。これまでの僕の人生は無駄だったんだと思ってしまいました。そう思うと、悲しくなりました。そして、いつしか後悔となってしまったんです。

どう振り返ってみても、若気の至りや過ちが多かったのです。多くの時間を無駄にしてきたような気がして、それを認めたくないあまりに、学びがあったと自分を慰めてきた部分もあります。

過去の自分をじっくり丁寧に味わう

多くを無駄にしてきたからこそ、そこから学ぶことが出来るんじゃないかと思い、必死になって自分の過去を振り返ることをしてきました。あの時の自分は、確かにダメだった。それを認めていこう。それが、今の自分や未来の自分に繋がるはずだからと。それが、正しい過去の振り返り方であり、辛い過去を変えていく方法だと信じていたんです。

でも、心の奥底は、どこか複雑だったのです。何か悔しくて、どこか悲しくあったんです。

ちょうどその日は、とても寝つきが悪く、何度も夜中に目が覚めてしまっていました。コップ一杯の水を飲み、眠れなくてモヤモヤしていると気分を変えようと夜風に当たろうと思い立って、ベランダに出たんです。

その時に、ふと昔の自分も同じことをしていたことを思い出したんです。必死になって頑張ってもその日の仕事が終わらなくて、だから、よく自宅に持ち帰っていたんです。深夜2時を回ったころから、いや随分とその前から頭が働かなくなってしまい、頭をすっきりとさせようとよくベランダに出て夜風に当たっていたんです。

今の自分と過去の自分が重なったとき、過去の自分が凄く一生懸命になれていたことを思い出すことが出来ていたんです。不満や不安を抱えながらも、必死になって頑張っていたんです。自分を認めたくて、でも、なかなか認められなくて、あと少しで認められそうで、そんな日々。良いか悪いかはさておき、間違いなく充実していたことに気が付いたのです。自分の人生に全力で生きていると実感していたんです。

思い返せば、どの過去の自分だって一生懸命だったのです。夢を叶えたい。多くの人に認められたい。成功したい。色んなものを抱えながらも、必死になって頑張っていたのです。

例え、同じような毎日でも、人から見れば、ちっぽけでしょうもないように見えても、僕自身だけが知っている。どんな時だって、頑張っていること。どんな過去であっても、その全てを否定してしまうと、自分という存在が無意味なものにしか見えなくなってしまいます。それは、あまりにも悲しいことです。

これまでの自分の歩みを無駄にしてはいかないのです。

失敗した過去は消し去りたいかもしれない。辛い過去は忘れ去りたいかもしれない。間違いをした自分は否定したいかもしれない。だとしても、その時の自分も必死だったし、人生をより良くしたいという気持ちを持っていたことは認めてあげる必要があるのだと思いました。

そうすれば、今よりも自分のことを大切に出来そうだからです。

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メルシー