マガジンのカバー画像

ラーメン屋である僕たちの物語2nd season

11
「ラーメン屋である僕たちの物語2nd」をまとめたマガジンです。2nd seasonの一気読みにオススメです。
運営しているクリエイター

記事一覧

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ①

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ①


「My winding road」

ドクン

えっと…今日の仕込みはなんだったっけ…

ドクン

この前の唐揚げ美味しかったな…

ドクン

彼女と喧嘩してまだ仲直りしてないや…

ドクン

昨日届いた食材試さなきゃ…

ドスン

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

2004年10月

AM7:30

「ん〜、爽やかな天気だなあ〜」

空は高く高く澄み渡り、どこからか金木犀の香りが風に乗ってやってく

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ②

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ②

「Take the Long Road and Walk It」

衝突から、地面に叩きつけられるまで、おそらく1秒もなかったろう。

僕は砂粒の様に砕かれた1秒の中を、見えない力によって宙へ投げ飛ばされ、空を掻きながら、背中からアスファルトに叩きつけられた。

ドスン

目の前にはただ、高く四角い青だけがあった。


|
|
|
|
|



|



|
|
|


緩慢な時間の

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ③

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ③

「The Long And Winding Road」

運命は決断の瞬間に形作られる

つまり

あなたの運命は

決断の積み重ねで作られているのだ

〜アンソニー・ロビンズ〜

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

善行の家 11月

事故から2週間が経った。

外は冷たい木枯らしが吹き抜けていたが、正午の日の光がたっぷり注ぐ僕の部屋は、汗ばむくらい暖かかった。

あれから僕は自宅療養と通院によるリ

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ④

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ④


「Mother」

母は海だ

時に穏やかに、大きな愛で僕たちを包み

時に荒々しく、僕たちを叱りつける

父を大きな山とするならば、母は大海だ

そんな母に僕たちは育てられた

母は生まれも育ちも高知県。

大学進学と共に上京したという。

卒業後、入社した会社で父と出逢い、交際3ヶ月で結婚したそうだ。

「初めておかあさんを見た時に『お、涼しい顔したいい女だな』って思って口説いたんだよ」

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑤

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑤


「青い影」

ズッ

ズズッ

ズズズーッ

ランチ営業後のひなどりのカウンター席で
1人の男がラーメンを食べている。

レンゲの持ち方、麺の啜り方、スープの味わい方など、その所作の一つ一つが、この男が只者ではないことを物語る。

その様子を僕とTっさんは緊張した面持ちで見守っていた。

僕たちの傍にはモニターがあり、大きなカメラが捉えた男の顔を映し出していた。

照明やマイクを持った男たちが、

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑥

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑥

「哀 戦士」
前編

認めたくないものだな

自分自身の

若さゆえの過ちというものを

シャア・アズナブル

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

【読者の皆様へ】
※今回の話では一部登場人物に対して、大西の「贔屓目フィルター」が過分に影響している可能性があります。
ご理解、ご了承の上、用法、用量を守って、正しくご書見ください。

2005年

2月

「いらっしゃいませー!」

「ありがとうございま

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑦

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑦

「哀 戦士」

中編

悔しいけど

僕は

男なんだな

アムロ・レイ

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

【読者の皆様へ】
※前編に引き続き、今話でも一部登場人物に対して、大西の「贔屓目フィルター」が過分に影響している可能性があります。
ご理解、ご了承の上、用法、用量を守って、正しくご書見ください。

2005年

2月某日 17:45 横浜駅東口

冷たいビル風が、僕たちの脇を子供の様に駆けていく

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑧

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑧

「哀 戦士」

後編

よく見ておくのだな

実戦というのは

ドラマのように格好の良いものではない

シャア・アズナブル

➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖

【読者の皆様へ】
※前中編に引き続き、今話も一部登場人物に対して、大西の「贔屓目フィルター」が過分に影響している可能性があります。
ご理解、ご了承の上、用法、用量を守って、以下略。

ズン
ズン
ズン
ズン

「休みの日は何してるの!?」

大音

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑨

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑨


「ロストマン」

前編

状況はどうだい?

僕は僕に尋ねる

旅の始まりを

今でも思い出せるかい?

2005年3月

AM8:00

鎌倉駅前「ら〜めん専門ひなどり」

ゴッ…

…ジャーーー

…パタン

「はぁ……」

「またですか?店長」

お腹を抑えてため息をついた僕に、Tっさんが心配そうに話しかけてきた。

「うん、今日もけっこう酷かったよ」

「心配ですね」

「うん、ストレス

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑩

ラーメン屋である僕たちの物語2nd ⑩



君を失ったこの世界で

僕は何を求め続ける

「ロストマン」
中編

「癌、ということです」

カチ

カチ

僕たちの距離を、重い足取りで時間が歩いていく。

カチ

カチ

僕はTっさんの言葉を真正面に受け止めながらも、どこか夢と現実の狭間に彷徨い込んだような浮遊感の中にいた。

カチ

カチ

宇宙の隅々まで探しても、Tっさんにかけるべき言葉は見つけられなかった。

カチ

カチ

なに

もっとみる
ラーメン屋である僕たちの物語2nd 11

ラーメン屋である僕たちの物語2nd 11

「ロストマン」

後編

是非、再生しながら読んでください
「この曲をかけながら読む」前提で書きました
このエピソードの後、ずっと聴いていた
特に思い入れのある曲です
※イヤホン推奨

2005年3月末日

PM16:30

ら〜めん専門ひなどり 店先

「忘れ物はない?」

「はい、大丈夫だと思います」

「もしあったら捨てておくよ笑」

「はい、焼き捨てておいてください笑」

僕とTっさんは、

もっとみる