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大人のADHDの自己肯定感を高める「できたことノート」という素敵なツール。

ADHDは自己肯定感がとてつもなく低い。幼少期から「できないこと」だらけで、叱られたり、侮られたりしたことがあまりにも多いからだ。ADHDは、感情は繊細で、傷つきやすいタイプも多いようだ(周りのADHDを観察してみての意見)。
だからこそ、自分ができていないことで、自分をさんざん責めている。誰かに注意されてがっかりするより、自分自身で、いつでも自分のできていないところを叱り続けているのだ。年から年中なんだから、すっかり自己肯定感が下がるのも頷ける。

しかし、大人になってからでも、ADHDが自己肯定感を高めることは不可能ではない。コツコツとした努力は必要だけど、必ず自己肯定感を高められる。カギは「できないこと」ではなく「できたこと」に注目することだ。

今日は、できたことに注目する心の癖(習慣)を身に着ける「できたことノート」を紹介してみたい。

できたことノートとは

人の行動を変える専門家である永谷氏が開発した「できたことノート」は、1日5分から始められる。できたことノートの書き方は非常に簡単だ。

1:毎日できたことを3つ書き出す
2:一週間に一度、できたことを内省する
3:気づきを実践する

永谷氏の本を読んで、私なりに理解した点を説明してみよう。

1:毎日できたことを3つ書き出す
これは、毎日の習慣だ。寝る前に3~5分とれると良い。
できなかったことではなく、できたことを思い出し、それをメモしておく。どれほど小さくてもよい。大したことないのに感謝されたことや、何かを終えてスッキリしたことなど。今日は、これは「できた」と思ったことをメモしておく。
ちなみに、夜寝る前には、書き出したメモを見ながら「今日もできた!明日は、もっとよくなる!」と自己暗示にかけよう。

ADHDが夜に思い起こすのはできなかったこと、失敗が多いだろう。こういうことは意識しなくても覚えてしまう。しかし、日常の小さなできたことは、意識しないと簡単に忘れてしまう。そして、こういう小さなできたことにこそ、自己肯定感を高める秘訣があるのだ。

2:一週間に一度、できたことを内省する
毎日、3つずつ、できたことを書き綴っていくと、一週間で20個前後のできたことがたまっていく。意識しないと、自分が、これほど「できている」ということには気づきづらいだろう。

できたことノートのノウハウで、重要なのは、ここからだ。できたことのリストを見ながら、その週の中で特にできたことを選び出してみる。そして、内省文を書いてみるのだ。以下のような項目に分けて書き出そう。

・事実(何ができたか)
・分析(なぜできたか)
・感情(どう感じたか)
・行動(何を変えるか)

単にできたことを羅列するだけではなく、なぜできたか?と問いかけることで、自分自身の成功パターンを見出すことができる。そして、それを繰り返し行うことができれば、一つのできたことをきっかけに、どんどんできることが増えていくことになる。

ADHDの人生はできないことだらけなんだけど、実は、その中でも小さなできていることが、たくさんあることに注目したい。そして、狙ってできていることを増やせるようになると、自己イメージが「できない僕・私」から「できる僕・私」に変わっていくのだ。

3:気づきを実践する
次の週は、一つチャレンジすることを決めて、実践しよう。気づいたこと、やってみたいことを行ってみることにしよう。自己肯定感が低い人は、どうしても行動できないことが多い。失敗が怖くて何もできないのだ。
しかし、自己肯定感が高まるにつれて、リスクはあっても何とかなる!という謎の自信が生まれるようになる。そして、多くのことは、実際、どうにかなるのだ。

日記を書く習慣に付け加えてみる
もし、日記を書く習慣を持っているなら、毎日5分時間を取り分けて、できたことをメモしてみよう。分析するのは一週間に一回だ。その日のことを思い出しながら、できたことをメモすることくらい難しいことではないはずだ。できないことを思い起こすのは辛いことだけど、できたことを探すのは気持ちがよいことが分かるはずだ。

なぜ、自己肯定感を高める必要があるのか?

できたことノートを書く習慣が身につくと、自己肯定感が高まる。しかし、できたことノートは、ただ自己肯定感を高めることが目的のツールではない。自己肯定感を高めることは目的ではなく手段にすぎない。では、なぜ自己肯定感を高める必要があるのだろうか?

永谷氏によると、できたことに注目し、自己肯定感を高めるのは「本音の感情」に向き合って、自分を内省できるようにするためだ。人は本音の感情に向き合った時に初めて、自分の行動を変えようとする。そして、行動が変わる時に、人は本当に変わるのだ。行動が変わらなければ本物の自信など得られない。

「反省」ではなく「内省」する

しかし「内省」は簡単ではない。意識しないと、人は「反省」しがちだから。「反省」と「内省」は似ているようで違う。「反省」というのは、できなかったことに注目して、謝って(取り繕って)その場をしのぐことだ。反省している時の人の心理状態は本当に自分を変えようとするものではない。むしろ、何とかその場をやり過ごそうとするものだ。

できなかったことを叱られたりするとき、人は反省の弁を述べる。「すみません、もうしません。これからは気を付けます。」しかし、実はそういう時には、実は心の中では素直に自分の感情を見つめていないのだ。浮かんでいるのは、怒りや憤懣の気持ち。そして「言い訳」だ。こんな状態では、本当に自分の行動を改善しようという気持ちにはならない。

この辺の心理に関しては、下記の本が詳しい。非行少年の心理について分析し、うわべの反省を促すことの害を説いた名著だ。

大事なのは「内省」。つまり、本音の自分の感情に向き合うことだ。

永谷氏があげる例で言えば、ある人は「忙しい、時間がない」と言い訳するかもしれないが、本音の感情では「相談する人がいなくて寂しい。孤独だ。」と感じているかもしれない。しかし、その感情を自覚すると傷ついてしまうので、あえて、その感情を避けて、安易に反省する方法を選んでしまうことが多い。本当の感情に向き合わないと人は変わることができない。

そのデリケートな本音の感情に触れる方法は一つしかない。それが、自己肯定感を高めることだ。「できてもできなくてもOK、それでも大丈夫!」と自分自身をみなせること。そういう自信があって初めて人は、内省(自分の感情に向き合える)できるのだ。

永谷氏は、できたことノートを書くことにより、自己肯定感を高め、その結果、本音の感情に向き合うことができるようにし、人の行動を変える手助けをするコーチなのだ。できたことノートは、非常に簡単で、誰でも実行できるツールだが、その背後にある心理学理論はヒジョ~に深い。

小さな成長を続ける人になる

できたことノートを書く習慣が身につくと、コツコツと小さな成長を遂げていく自分に気づくようになる。ADHDの記憶は、できなかったことで覆われているのだけれど、その中に、無数のできたことがあることが分かるようになってくる。できたことの積み重ねは誰にも奪われない自己肯定感につながる。そして、その自己肯定感は人がチャレンジを恐れず変化するモチベーションになっていくのだ。

最後に、永谷氏の名言で、この記事をシメよう。

「不器用だっていいじゃないですか。明日、少しだけでも前に進めばいいのです。このペースで十分です。この「小さな変化の道のり」が楽しいのです。純粋な心に触れながら生きているときこそ、人生は彩られるのです」

引用:1日5分 「よい習慣」を無理なく身につける できたことノート 永谷 研一 クロスメディアパブリッシング

この本、自己肯定感の低さに悩むADHDに超おすすめ。

綿樽剛の著書一覧

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq