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【ほろ酔いゲシュタルト】

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階段から始まる怪談。この世とあの世の境界で生きる意味を探す。蛇のように細く、長く綴っていきたい一作です。
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#私の作品紹介

ほろ酔いゲシュタルト 12

Before… 【十二】 何年振りかの風邪をすっかり拗らせた。決して動けないという訳ではないが…

ほろ酔いゲシュタルト 11

Before… 【十一】 何かが落下した音に遅れて、「チリリン」と細い風鈴が鳴った八月最後の日…

ほろ酔いゲシュタルト 10.5

Before… 【弐】 まさか、またここで過ごせるなんてね。  早朝、誰よりも早く起きてしまっ…

ほろ酔いゲシュタルト 10

Before… 【十】 日中こそ猛暑日は続いているが、日が落ちてからは徐々に涼しさを取り戻しつ…

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ほろ酔いゲシュタルト 09

Before… 【九】 陽が沈むまで熱中症の警戒アラートが鳴り響いていた町だったが、夜が訪れて…

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ほろ酔いゲシュタルト 08

Before… 【八】 あの無数の刺し傷は一度開きかけたものの、無事に完治して今まで通り事務所…

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ほろ酔いゲシュタルト 07

Before… 【七】 コン介の強大な妖力を含ませた包帯の効き目は凄まじく、数日で傷は塞がり、まだ少し痛みはあるものの完治までそう時間はかからなそうだ。 「コン介ありがとう、もうすぐ傷は治りそうだ。凄いね。」  コン介はえっへん、と胸を張って九本のしっぽを大きくふりふりしながらアヤの膝元で気持ちよさそうにしている。 「そりゃあね、仮にもがしゃくんと並ぶくらいの力はあるからね。それにこーゆーのは蜷局よりも得意だよ。」 「へッ、その娘が会いたがッていた老爺に会わせてやッたこと、

ほろ酔いゲシュタルト 06

Before… 【六】 むしむしする熱帯夜。日付を跨いだその時、「チリリン」と鈴の音が響いた。…

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ほろ酔いゲシュタルト 5.5

Before… 【壱】 光陰、矢の如し。  生前に自分を見つけてから初めてできた友達がふと教え…

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ほろ酔いゲシュタルト 05

Before… 【五】 今年の夏は特に暑い。にも関わらず、事務所の中は妙に涼しげだ。それは気温…

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ほろ酔いゲシュタルト 04

Before… 【四】 ケーキを届けたかった男を導いてから、数人の似たような魂を導き、あの世へ…

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ほろ酔いゲシュタルト 03

Before… 【三】 事務所と化した廃屋で過ごし始めて三日が経った。客は誰も来ず、ただのんび…

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ほろ酔いゲシュタルト 02

Before… 【二】 一行で明けない夜を歩き続け、辿り着いたのは広大な墓地だった。小喧しい都…

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ほろ酔いゲシュタルト 01

Prologue… 【一】 目を開いた。照明が落ちた「四ツ谷駅」の看板。都会だというのに誰もおらず、周囲の建物は全てが黒洞々としている。 「あァ、娑婆の空気!何と懐かしい、そして何と濁ッてしまったものか。」  ターバンのように頭に巻き付いた蛇は、俺の首元に這ってチロチロと舌を出してはしまう。 「俺、戻ってきたのか?」 「見りャァ解るじゃろ若僧。貴様、名を忘れたようじャな?」  言われてみれば、自分の名が思い浮かばない。 「そうだな、分からない。まぁ生き返ったからいいんだが。