1995年のバックパッカー23 中国13 チベット4 世界の屋根での大芝居 さらばチベット!
かくしてジープに乗り込んだ僕とグラントであった。
ティンリへの雄大な風景をグラントは楽しんでいたが、僕は病人のふりをし続けるために、後部座席で横這いになっているしかなかった。身を乗り出して風景を楽しんでいるのがばれたら、元気ならもう降りてくれと、言われかねない。僕は高山病という設定で頭が割れそうな呻き声を時々入れつつ(経験済みだったので簡単な演技だった)、チベットの空だけを眺めていた。
あの頃のチベットで、空だけを見続けた旅人といったら僕ぐらいだろう。だが、おかげで凍死はなく