1995年のバックパッカー13 香港2 善意と欲望とギャンブラー
それは、1995年の5月5日金曜日の出来事だった。
チュンキンマンション、スプレンディッドアジアのドミトリーで10時に目覚めた僕は、早くも馴染み始めた香港の街をゆったり歩き、木陰の多い九龍公園のベンチでくつろいでいた。
そこへ小柄で目の大きい東南アジア系の男が、屈託のない笑顔を浮かべながらやって来て、僕のすぐ隣に座った。歳は35くらいだろうか。その男はチャーリーと名乗り、初対面の外国人通しが交わすようなありきたりの会話をしばらくした。
彼のキャラクターと、昼間の公園ののんびりした平和の空気もあって、僕の警戒心は自然と緩んでいった。当たり障りのない会話も、やがて話題切れとなり、そろそろ行こうかと立ちあがろうとした時に、チャーリーは「実は妹が」と切り出した。
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