6つのメガネの交換日記 9通目 ~安野光雅さんのことば~
年齢も仕事も性格もバラバラ。
大人6人による「6つのメガネの交換日記」、9通目です。
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5人のメガネたちへ
花粉症の時期が到来し、日差しもとっても柔らかくなってきました。
春はもうすぐそこですね。みなさんお元気ですか:)?
2週目の交換日記、
今回はわたしの大切なものについてお話ししたいと思います。
わたしは、整理収納アドバイザーとして活動をしていることもあり、
家の中のものが少なく、わたし自身の思い出のものあまり多く持っていません。
昔の写真、文集、卒業アルバムは、ありません。
家族と親友からもらった手紙だけ、とっています。
わたしの中で思い出のものを選ぶ基準は、記録ではなくて、記憶。
そのものと一緒に楽しかったこと、嬉しかったことが思い出すことが出来るものを厳選してとっています。
そんな中でも、
子どもの頃から約40年ちかくずーっと持ち続けている絵本があります。
それは、安野光雅さんの「旅の絵本」。
幼いころ、両親と一緒にわくわくしながら読んだこと、
ひとりでも、何度も繰り返し飽きずに読んでいたこと。
そんな楽しかった思い出と共に、ずっと大切にしています。
子どもが小さい頃は一緒に読みましたが、
この本は、どちらかというと、わたしのための絵本です。
昨年の12月にお亡くなりになった安野さん。
訃報を聞いて驚き、久しぶりに絵本を手に取りました。
安野さんはインタビューの中で、度々「自分で考えること」の大切さをお話しされています。
福音館書店の「絵本作家のアトリエ」の中のインタビューで
とにかく、自分で考えるくせをつけてほしいんだ。だれか偉い人がそういっていたからとか、判断を他人に任せるのはよくないよ。でも、自分で考えるためには、日ごろの訓練が必要だからね。いきなり考えろ、って言っても無理。
頭がやわらかいうちにたくさん本を読んで、世の中にはいろんな考え方があることをしっておいてほしい。
この「旅の絵本」はわたしにとって、
自ら考えること、感じることを学んだ、人生で初めての教科書なんだと思います。
「旅の絵本」には文章はなく、絵だけ。
絵本を読んでくれるのは両親で、読んでもらうことが当たり前だった幼いわたしにとって、読めなくてもじぶんでわかることが出来る、想像してわくわくすることが出来る初めての体験でした。
細かくて美しく、優しい色使いの初めてみるヨーロッパの街並みをうっとりと眺めて、行ったことのない風景の中に自分も行った気持ちになる。
青い服を着た旅人が馬を乗り継ぎ、川や丘を越え、草原や市街地を抜け、どこまでも続く道のりを背筋を伸ばしてたんたんと進む姿を見て、今の彼の眼にはどんなものが映っているんだろう。
街の人々の動きや表情を見て、どんな会話をしているんだろう。今どんな気持ちなんだろうと、人物が生き生きと生活している姿を想像してみる。
風景にかくれた「童話」の仕掛けの中に、さまざまな視点で物語や世界観を感じながら、あちこちの場面が繋がっていることを発見することは、とても五感を刺激されました。
この「旅の絵本」から学んだ自分で考えること、感じることの大切さは、
大人なった今のわたしにとっても、頭の中を柔らかくして想像力を豊かにするための、ふかふかの土壌づくりのスコップみたいものなのだと思います。
日ごろから本を読むのが好きで、たくさんのインプットをしてます。
ひさしぶりに「旅の絵本」を手に取って、
再び安野さんから「外からの情報だけに頼らずに、もっと自分で考えてみて、もっと感じてみてごらん。」と言われれたような気持ちになりました。
何度も読んで知っていたつもりの絵本の中から、
大人になったわたしに、改めて考える意味を問いかけてくれている。
自分で考えること、感じることを面倒くさがらず、スコップのように掘り下げていって、自分の考えの厚みをつくろう。他の人の考えを知って、もっと視点を広げてみよう。
そうやってやわらかいわたしの土壌をつくることで、よりすくすくと健やかに自分の思考や言葉の芽を育てて、アウトプットしていこう。
子どもの頃に感じた、絵本がわたしを癒してくれていた感覚とはまた違い、
絵本をきかっけにわたしが自分を癒すことができるかのような、時間を超えてもずっとわたしの心の拠りどころになってくれているのかも。
大人になってからの絵本の読み方って、子どもと一緒に楽しみながら読むのも面白いけど、ひとりでゆっくりじっくりとかみしめながら読むのもとても癒し効果抜群です。
この交換日記を通じて、離れていてもそれぞれの出来事や思いを共有できる、いろいろな考え方を知ることが出来ることは、安野さんからのメッセージ「自分で考える、感じる」ことへのよい刺激になっています。
みんなの日常や好きな本、いろいろなお話を聞けることをこれからも楽しみにしています。春になったら、またZoomやろうね~!
2021.2.20 のぞみ