ずっと心に残っている短編たち 〜後編〜
私の心の中に、ずっと残っている短編がある。
読んだときの感動や衝撃が忘れられなくて、今でも鮮やかに思い出すことのできる短編たち。
前編に引き続き、私がこれまで読んできて、特に心に残っている短編を3つご紹介する。
それぞれどんな短編なのかわかりやすいように、「◯◯を読みたい人へ」というキャッチコピーをつけてみた。気になる短編があった方は、ぜひ収録されている短編集を手に取ってみていただきたい。
米澤穂信|玉野五十鈴の誉れ
〜「伏線回収に背筋が凍るホラー作品」を読みたい人へ〜
まずは、直木賞作家・米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』から、「玉野五十鈴の誉れ」という短編。
米澤穂信さんのホラー・ミステリ短編集から、最も鮮烈な衝撃をもたらす「玉野五十鈴の誉れ」。ラスト数行の恐ろしさが、読者の背筋を凍らせる。
最初にこの短編を読んだとき、如何ともし難い空恐ろしさに、全世界が信じられなくなった。ただ恐ろしいだけでなく、そこに深い愛情が伴うところが、切なくて良い。伏線を鮮やかに回収する構成になっているのも良い。
時代背景や世界観も含めて、ものすごく完成度の高い短編だ。この世界観に、存分に浸っていただきたい。
恒川光太郎|風の古道
〜「どこか懐かしい異世界ファンタジー作品」を読みたい人へ〜
続いて、恒川光太郎さんの『夜市』から、「風の古道」という短編。
古来から日本に存在する、異世界に通じる神の道に迷い込んだ少年が、偶然出会った旅行者レンと共に古道を旅する物語。
どこか懐かしい雰囲気の漂う、独特な異世界ファンタジーの世界観が魅力。彼らと一緒に、不思議な古道を旅して帰ってきたかのような、美しい読後感が味わえる。
表題作「夜市」が有名だが、個人的には「風の古道」の世界の方が好みだ。ラストの哀しさも、味わい深くて良い。
稲見一良|パッセンジャー
〜「幻想が現実とリンクする作品」を読みたい人へ〜
最後に、稲見一良さんの山本周五郎賞受賞作『ダック・コール』より、「パッセンジャー」という短編。
自然や鳥、狩猟をテーマにした短編集で、ハードボイルドかつ幻想的な筆致がとても良い。中でも「パッセンジャー」は、幻想と現実のリンクを楽しむことができておすすめだ。
鮮やかな色彩の鳥を追って、危険な隣村に入り込んでしまったサム。そこで目にした人間の凶行。
自然界の美しさと、人類の愚かさが際立つ作品で、幻想的でありながら、現実と地続きになっているところが面白い。
決してやり直すことのできない人類の過ちに、胸が締め付けられる作品だ。『ダック・コール』は短編集全体としても本当に素敵な作品なので、ぜひご一読を。
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