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どっぷりハマる、SF沼。 【おすすめSF長編3選】
小説は何だってできる。人間が想像できることは、何だって。
どんなに突飛な超常現象も、銀河を駆ける星間戦争も、時間や空間を超越した恋愛劇だって、実現できる。小説に限界は存在しないのだ。
今回は、おすすめの長編SF小説をご紹介。
壮大な世界観に圧倒され、予想外の展開に翻弄され、主人公の覚悟と勇気に、胸を熱くさせられる。
そんな読み応え充分のSF作品を、3つ揃えた。気になる作品があれば、ぜひチェックしてみていただきたい。
デイヴィッド・ミッチェル|ボーン・クロックス
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1984年夏、英国グレイヴゼンドのパブの娘ホリー・サイクスは、母との喧嘩で家出したある日、老婆エスター・リトルと出会い、不思議な約束を交わす。1991年、ケンブリッジ大の小賢しい学生ヒューゴ・ラム、2004年、イラク戦争を取材する仕事中毒のジャーナリスト、エド・ブルーベック、2015年、才能の枯渇した作家クリスピン・ハーシー。彼らはそれぞれの日常の中で、ホリーとのささやかな邂逅を果たし、いっぽうホリーは彼らと交差する人生の背後で、〈時計学者(ホロロジスト)〉と〈隠者(アンコライト)〉との永遠に続く戦いに巻き込まれていく。そして2043年、自然災害が頻発するディストピアと化したアイルランドで、死を前にして静かに暮らすホリーは、ボーン・クロックス〈骨でできた時計〉の意味を悟る——。ひとりの女性の人生を舞台に、6つの物語が展開する壮大なるサーガ。
英国の作家、デイヴィッド・ミッチェルさんの『ボーン・クロックス』は、時間的・空間的な広がりがとにかく壮大で、重厚感溢れる本格SFだ。
ホリー・サイクスというひとりの女性の人生を軸に語られる本作。6つの章で構成された物語は、全章それぞれがまるで一編の映画かのような、スケールの大きさだ。
イングランド、イラク、スイス、中国、コロンビア、アイスランド——物語の舞台は世界各地に渡り、各所で配置された伏線が、やがてラストの大きな”戦い”へと集約していく。
思春期の少女の複雑な心境を描くジュヴナイルのような幕開けから、濃密なSF的展開をどんどん畳み掛けてくる幕切れまで、振れ幅が大きく、満足度は抜群だ。
私が2023年に読んだSF小説で、最も面白かったのが本作だ。何も考えず、壮大な戦いの物語に浸っていただきたい。
本田壱成|ネバー×エンド×ロール
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この街は壁に囲まれている。札幌を襲った天災から十六年、復興という名の再開発事業のせいで、街は高い壁の中にすっぽり収まっていた。風変わりなその街で育った十五歳の少年・駆は外の世界への憧れを抑えきれずにいた。怖いもの知らずの彼は、街一番の秀才・勇夢と幼なじみの夏月を巻き込み、無謀すぎる脱出作戦を立てるのだが……。そんな夏の日、放課後の屋上に“過去へ駆ける少女”が落っこちてきて——!? 悩める彼らの運命が動き始める!
一人の少女が巡る三つの暦。高い壁に秘められた小さな星のナゾを紐解く、青春ロスタイムストーリー。
本田壱成さんの『ネバー×エンド×ロール』は、未来世界を舞台に3つの時間軸を遡っていく、青春SF小説だ。
章立ては現代から未来へと時代を移していくのだが、登場人物は未来から過去へとタイムスリップしていくという、「小説の構成」と「物語の登場人物」の時間軸がクロスしている点が面白い。
高い壁に囲まれた街という「進撃の巨人」のような世界から始まり、未来都市でのサイバーテロや、ディストピアの中のユートピア構築など、様々なSF要素が詰め込まれている。
メディアワークス文庫という、角川のライト文芸レーベルから出版されており、比較的ライトに読める点もおすすめだ。「重たいSFに疲れてしまった……」という方にぴったり。
私が高校生のときに出会い、以来ずっと好きなSF小説だ。私にSFというジャンルの面白さを教えてくれた、恩師のような作品と言っても過言ではない。
アンディ・ウィアー|プロジェクト・ヘイル・メアリー
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地球上の全生命滅亡まで30年……。全地球規模のプロジェクトが始動した!
グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号——。ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を発動。遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放った……。
『火星の人』で火星の、『アルテミス』で月での絶望的状況でのサバイバルをリアルに描いた著者が、人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント。
アメリカで注目を集めるSF作家、アンディ・ウィアーさんの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、孤独な宇宙空間を舞台に繰り広げられる”真実の絆”の物語。
詳細はネタバレになるため差し控えるが、上巻のとある展開を境にギアが上がり、そこからラストまで、ノンストップでずーっと面白い。
記憶を失った状態で目覚めた主人公が、自分ひとりしかいない宇宙船で次第に状況を明らかにしていく展開は、王道だけれど、やはりワクワクする。
自分が全人類の命運を一手に握っていると知った主人公は、果たして地球を危機から救えるのか——観察・考察・検証という、科学の地道な足取りで少しずつ前進していく彼に、静かに胸を熱くすること間違いなし。
本作は、文体が意外にもライトな口語調で、するすると読み進められる。上下巻の長さを一切感じさせない面白さなので、ぜひとも読んでほしい。
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