どっぷりハマる、SF沼。 【おすすめSF長編3選】
小説は何だってできる。人間が想像できることは、何だって。
どんなに突飛な超常現象も、銀河を駆ける星間戦争も、時間や空間を超越した恋愛劇だって、実現できる。小説に限界は存在しないのだ。
今回は、おすすめの長編SF小説をご紹介。
壮大な世界観に圧倒され、予想外の展開に翻弄され、主人公の覚悟と勇気に、胸を熱くさせられる。
そんな読み応え充分のSF作品を、3つ揃えた。気になる作品があれば、ぜひチェックしてみていただきたい。
デイヴィッド・ミッチェル|ボーン・クロックス
英国の作家、デイヴィッド・ミッチェルさんの『ボーン・クロックス』は、時間的・空間的な広がりがとにかく壮大で、重厚感溢れる本格SFだ。
ホリー・サイクスというひとりの女性の人生を軸に語られる本作。6つの章で構成された物語は、全章それぞれがまるで一編の映画かのような、スケールの大きさだ。
イングランド、イラク、スイス、中国、コロンビア、アイスランド——物語の舞台は世界各地に渡り、各所で配置された伏線が、やがてラストの大きな”戦い”へと集約していく。
思春期の少女の複雑な心境を描くジュヴナイルのような幕開けから、濃密なSF的展開をどんどん畳み掛けてくる幕切れまで、振れ幅が大きく、満足度は抜群だ。
私が2023年に読んだSF小説で、最も面白かったのが本作だ。何も考えず、壮大な戦いの物語に浸っていただきたい。
本田壱成|ネバー×エンド×ロール
本田壱成さんの『ネバー×エンド×ロール』は、未来世界を舞台に3つの時間軸を遡っていく、青春SF小説だ。
章立ては現代から未来へと時代を移していくのだが、登場人物は未来から過去へとタイムスリップしていくという、「小説の構成」と「物語の登場人物」の時間軸がクロスしている点が面白い。
高い壁に囲まれた街という「進撃の巨人」のような世界から始まり、未来都市でのサイバーテロや、ディストピアの中のユートピア構築など、様々なSF要素が詰め込まれている。
メディアワークス文庫という、角川のライト文芸レーベルから出版されており、比較的ライトに読める点もおすすめだ。「重たいSFに疲れてしまった……」という方にぴったり。
私が高校生のときに出会い、以来ずっと好きなSF小説だ。私にSFというジャンルの面白さを教えてくれた、恩師のような作品と言っても過言ではない。
アンディ・ウィアー|プロジェクト・ヘイル・メアリー
アメリカで注目を集めるSF作家、アンディ・ウィアーさんの『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は、孤独な宇宙空間を舞台に繰り広げられる”真実の絆”の物語。
詳細はネタバレになるため差し控えるが、上巻のとある展開を境にギアが上がり、そこからラストまで、ノンストップでずーっと面白い。
記憶を失った状態で目覚めた主人公が、自分ひとりしかいない宇宙船で次第に状況を明らかにしていく展開は、王道だけれど、やはりワクワクする。
自分が全人類の命運を一手に握っていると知った主人公は、果たして地球を危機から救えるのか——観察・考察・検証という、科学の地道な足取りで少しずつ前進していく彼に、静かに胸を熱くすること間違いなし。
本作は、文体が意外にもライトな口語調で、するすると読み進められる。上下巻の長さを一切感じさせない面白さなので、ぜひとも読んでほしい。
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