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医療 製薬業界|グラフで読み解く企業分析【住友ファーマ】

クリニファー株式会社でインターンシップをさせて頂いております、大学院生のオダニと申します。
今回の記事は「グラフで読み解く企業分析【住友ファーマ】」です。コメントやアドバイス等ありましたら、ぜひお願いいたします!

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記事本文↓↓

精神・神経領域に強みを持ち、再生・細胞医療やDX人材育成に力を注いでいる住友ファーマ。本記事では住友ファーマの①成長性、②強みを持つ領域・モダリティ、③将来性の3つに焦点を当て、企業分析を行った。それぞれの項目について、グラフを用いて述べていく。


① 成長性

 売上高、営業利益の5年間推移

住友ファーマの5年間(2018~2022年度)の売上高と営業利益を、決算情報(*1)~(*5)をもとに下のグラフにまとめた。なお、2023年度は住友ファーマの決算情報(2023年3月期)で報告された業績予想である。


※23年度は予想

売上高の推移から、2018年度から2022年度の5年間は緩やかではあるが成長していることが読み取れる。営業利益の推移は2018年度から2021年度は大きな変動は見られなかったが、2022年度に赤字となった。加えて、住友ファーマの決算情報によると2023年度は売上高が3,620億円で34.8%の減収、営業利益は-780億円でさらに1.3%の減収が予想されている。これは最主力製品である抗精神病薬「ラツーダ」の北米での独占販売終了が大きな要因であると報告されている。

 地域別売上高の5年間推移

 住友ファーマの売上高の国内・海外比率における、5年間の推移を下のグラフにまとめた。

2018年度から2022年度にかけて、国内・海外売上比率に大きな変動は見られなかった。住友ファーマの大きな特徴として、北米での売上比率が最も高く半分以上を占める。これは、2011年2月から北米での販売が始まった「ラツーダ」によるもので、「ラツーダ」単体で住友ファーマの総売上の約4割を占めている。

② 強みを持つ領域・モダリティ

 領域別の製品数と売上高

住友ファーマの2022年度における領域別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。

※売上が100億円以上の製品をまとめた

住友ファーマが最も売上をあげている領域は精神・神経領域であり、次いで糖尿病の生活習慣病領域、感染症領域となった。精神・神経領域で最も多い3製品を有しており、精神・神経領域の医薬品の開発に強みを持つことがわかる。生活習慣病領域では、2型糖尿病治療剤の「エクア・エクメット」や「トルリシティ」が多くの売上を占めている。以上のことから、糖尿病治療薬にも強みを持つことがわかる。

 モダリティ別の製品数と売上高

住友ファーマの2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。

※売上が100億円以上の製品をまとめた

住友ファーマの主要製品のモダリティは低分子だった。次いで、タンパクだった。従って、住友ファーマは低分子創薬に強みを持つことがわかる。

 主力3製品の売上高の5年間推移

住友ファーマが開発した製品の中で最も売上を上げているのは「ラツーダ」、次いで抗てんかん剤の「アプティオム」、糖尿病治療薬の「エクア・エクメット」だ。これら3つの製品を主力3製品とした場合、住友ファーマの成長は主力3製品の売上高の増加に大きく依存していると考えられ、主力3製品の過去5年間の売上高推移をグラフにした。

最主力製品の「ラツーダ」の売上が住友ファーマの売上の多くを占めていることが読み取れ、約4割を占めている。ほかの主力製品である「アプティオム」の売上は5年間でほとんど変動はなかった。2019年度から販売が開始された「エクア・エクメット」は、翌2020年度は売上を伸ばしたが、それ以降は伸び悩んでいる。また、全体の売上高に占める主力3製品の割合は約5割を占め、これらの売上が好調かどうかが住友ファーマの売上高に大きく影響を与えていると考えられる。そのような状況の中、「ラツーダ」の北米での特許が今年2023年に切れたことで2023年度の売上が大きく減収する見込みである。このパテントクリフを克服するため、住友ファーマは「ラツーダ」で培った北米でのパイプラインを生かし、北米事業のさらなる強化や社内DXの加速、再生医療やフロンティア事業など新たな価値創出に注力している(関連記事はこちら)。

③ 将来性

 国内開発パイプライン数

住友ファーマの将来性を評価するため、国内開発パイプライン数を調べた。下に現時点(2023年度第1四半期)でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数(*6)をまとめたグラフを示す。

現在申請の段階まで達している医薬品はなく、P3は4製品ある。以上のことから、近い将来「ラツーダ」の代わりになるような製品が登場する可能性は未だ低い状況であり、新薬の開発が急務である。

 領域別の国内開発パイプライン数

続いて住友ファーマが現在注力している領域を調べるため、2023年度第1四半期でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数を領域別でまとめた。そのグラフを下に示す。

現時点でP3段階まで進んでいるのは精神・神経領域が全てで、4つだった。住友ファーマは精神・神経領域に加え、がん領域も重点領域として開発に注力しているが、未だがん領域の製品はP1~2の段階である。

 モダリティ別の国内開発パイプライン数

最後に住友ファーマが現在注力しているモダリティを調べるため、2023年度第1四半期でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数をモダリティ別でまとめた。そのグラフを下に示す。

現時点でP3まで進んでいるのは低分子が全てで、4つだった。住友ファーマは低分子以外にも現在再生・細胞医薬の開発に力を入れており、iPS細胞治療の実用化に向けて京都大学との共同開発に取り組んでいる。また、2022年にはiPS細胞実用化を見据え、米国に再生医療拠点の建設を開始しており、2023年度中に完成予定である。

まとめ

✓ 成長性
● 2018年度から2022年度の5年間は緩やかではあるが成長。
● 2023年度は「ラツーダ」の特許切れにより大幅減収
● 北米での売上比率が最も高く半分以上を占める。

✓ 強みを持つ領域・モダリティ
● 精神・神経領域で最も売上を上げている。精神・神経領域と糖尿病治療薬に強みを持つ。
● 低分子創薬に強みを持つ。タンパク製剤も有している。
● 売上高全体の約4割を「ラツーダ」が占めるが、2023年に特許が切れた。

✓ 将来性
● 国内パイプラインで申請段階にある製品がなく、新薬開発が急務である。
● パテントクリフ克服に向け、北米事業のさらなる強化や社内DXの加速、再生医療やフロンティア事業など新たな価値創出に注力している。

他の国内製薬企業についてもグラフを用いて企業分析しています。ぜひご覧ください!(マガジンはこちら


*1 住友ファーマ[4506]:2019年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結)br20190510.1.pdf (sumitomo-pharma.co.jp)
*2 住友ファーマ[4506]:2020年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結)br20200513.1.pdf (sumitomo-pharma.co.jp)
*3 住友ファーマ[4506]:2021年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結)br20210512.1.pdf (sumitomo-pharma.co.jp)
*4 住友ファーマ[4506]:2022年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結)br20220513.1.pdf (sumitomo-pharma.co.jp)
*5 住友ファーマ[4506]:2023年3月期 決済短信〔IFRS〕(連結)br20230515.pdf (sumitomo-pharma.co.jp)
*6 住友ファーマ[4506]:2024年3月期 第1四半期決算 参考資料br20230731.2.pdf (sumitomo-pharma.co.jp)


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