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オススメ短編小説

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自信のある短編小説をどんどんじゃんじゃん追加していきます!
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#創作小説

短編小説『地面着陸』

短編小説『地面着陸』

月面着陸をなんとなく夢見ていた。
クレーターの真ん中にでっかい旗を刺す奴がやりたかった。

でも正直宇宙飛行士になろうとは思わない。
無重力の生活は怖いし、絶対普通のラーメンとか食べたくなるし。
なにより自分の家以外であんまりトイレに行きたくない。

「…だからビジネス始めてお金持ちになろうって?」
「うん。それならすぐ帰ってこれるじゃん?」
「いやまあ気持ちはわからんでもないけどさ。」
「でしょ

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【短編小説】群雲に隠れる

【短編小説】群雲に隠れる

エアコンががんがんと効いた電車に揺られて数十分、快速に乗るはずが間違えて普通列車に乗ってしまった彼は、都会から田舎へとゆっくり変わっていくグラデーションを見て楽しんでいた。

「あ、あの…」

普通列車だとここからさらに二十分ほどかかるが、乗り換えたらミスするかもしれない恐怖と、電車の椅子の気持ちよさで立ち上がれない彼は誰に見られているわけではないのにすました顔で乗っている。

「あ、あの…!」

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【掌編小説】レモンって何の味だっけ

【掌編小説】レモンって何の味だっけ

夏休みも終盤、私は今年出来た同じ高校の彼と地元の小さな神社でやっているお祭りに来ていた。

「ねえ、かき氷のシロップって全部同じ味らしいよ。」
もう使い古されたような雑学をあたかもとれたて新鮮かのように紹介してくるキミの表情に笑ってしまう。

私が食べたいものに指を指すと、キミは屋台のいかついおっちゃんにイチゴとレモンのかき氷を頼む。
「え、てかレモン食べたい。あとで一口交換しよ。」
さっきの自慢

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【短編小説】うみおばけ

【短編小説】うみおばけ

海と街をつなぐ一つの踏切
第三火曜日の14:00には電車が通った後に、なぜかもう一度踏切が下がるという謎の現象が起こる。

異世界につながる合図だとか、ネッシーや海坊主だったりが目を覚ますアラーム代わりだとかいろんな噂があるらしい。

そこで、先日なんも上手くいかなくて会社を辞めてニートになった俺は時間が出来たので、何となくその噂の真相を確かめにいくことにした。
別に信じているわけではない、暇だか

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短編【入道雲が見たいので。】

短編【入道雲が見たいので。】

「あ、おーい!葵さん!」

俺は大きな声で制服の女の子を呼んだ。

彼女は先日引っ越してきた高校二年生の俗にいうJKだ。

「あ、日向さん!」

あ、俺の名前は日向蘭。めちゃ女の子っぽい名前だけどちゃんと男。今年で19。

葵さんはこっちに来た。

揺れる髪は暖かい風に美しい香りを乗せた。

「この町は慣れた?」

「結構なれてきました!」

まあ、町と言っても正直かなり田舎だ。

学校まではバス

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