GOOD WAR TOUR 24. いい夢がいい
以上が、名村造船所跡地(クリエイティブセンター大阪)での公演と、北千住BUoYでの公演によせたステートメントです。
ちょっとずつ違う。
なぜ大切な記憶や思い出を人と共有できることを嬉しく思うんだろう?
それを許すことのできる関係性が嬉しいのかもしれないな。
さて、12月から続いたGOOD WAR制作ニッキも残り2回で終了です。では参りましょう。
ある日突然分断され、会えなくなる。
それは今日かもしれないし明日かもしれないし、もっとずっと先かもしれない。でもいつかはわからない。
毎日必死で日記を書く余裕もなかった。
みんなそれぞれやることをやっていて全部を把握しきれないし、もういいやと思ってたのかもしれない。
会場内には10弱のスピーカーが設置されていて、どの言葉をどのスピーカーに振り分けるのかという作業が延々と行われている。
「PIPE DREAMは任せるから」
当たり前のように言われて、でもまあ、朗くんは吊られてるわけから全体がわからないし当たり前なのかもしれないが、それってめっちゃ重要じゃないか、どこからどういうふうに何が聞こえるか、ということが音響上演のほとんど、というのは過言だが、そうでなくてもだいぶデカい要素では、と思う。でも任されたのならできる限りのことをやるしかない。
割り振って、聞いて、調整して、割り振り直して、聞いて、調整して、を繰り返す。
既に上演を開始したGOOD WARでも隙を見て調整を重ねてゆく。
もうこっちはノータッチ。聞かれたことに答えるくらいしかできない。
GOOD WARの割り振り作業はまをさんと朗くんで行っていたのだが、まをさんは(側から見ていると)自信を持って(根拠あって?)振り分けているように見え、すごい、確実な作業、すごい、と圧巻。
あたりまえだろ、かもしれないし、いやそう見えるだけ、かもしれないが、そうであったとしても、人から見て自信あるように見えるというのは信頼できるし大事なことだなと思う。
GOOD WARとPIPE DREAM両方、開場前、閉場後、果てにはお客さんの入っていない隙を見つけては音響の調整を行う。修正を繰り返しながら上演回数を重ねてゆく。
これで大丈夫、そう思ったときにはもう最後の上演を控えているのみだった。
あっちが終われば次はこっち、こっちが終わればその隙にあっち、という具合で、音響の海人くんは休む暇もない中満身創痍でがんばってくれました。
宿に帰り、普段は見ないテレビを眺めていると、羽生結弦選手のインタビューが流れていた。
「僕の心の中にいる9歳の自分がいて、あいつが『跳べ』って」
私もそうだと思った。あの日の私が私を呼んでいる。
いや、引っ込み思案なあの日の私は呼んですらくれない。声も出さずにただ待っている。
5歳の、8歳の、14歳の私が、今もあそこでじっと縮こまっている。
だから私はときどきそういう自分を見つけては、ああこんなところにいたのか、私はこの子をどうにかしたくて、大丈夫大丈夫と言いたくて、今もなにか、生活以外のあれこれを辞められないんだなと思い知る。
制作38回目〜42回目
日時:2022年2月11日(金)〜16日(水)
出席:だいたい全員
場所:北千住BUoY
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『GOOD WAR』は、私たちが「あの日」と聞いて想像する争いと日常で構成されています。
私たちは生きている限り、これからも誰かと戦い続けなければいけません。現時点で戦っていなくても、生きている限りいつか争いに巻き込まれます。『GOOD WAR』ではいずれ来る「その日」と、過去にあった「あの日」との向き合い方を鑑賞者と共に考えるべく、だれかの「あの日」で集積された記憶のモニュメントとして演劇作品を立ち上げます。
『PIPE DREAM』は、演出と出演を行う河井朗の祖母が医療ミスで植物状態に陥ったことをきっかけに、河井自身がマッチングアプリなどで無作為に出会った人々に「理想の死に方」についてインタヴューを行い、その中で語られた言葉から構成されています。
自身で動かすことのできない自分の身体、生きることも死ぬことも決められなくなった遠い自身、その自身の決定権を握っている人、それぞれと意思の疎通を図ることを試みる作品です。
『GOOD WAR』『PIPE DREAM』
原案 『よい戦争』(作:スタッズ・ターケル 訳:中山容 他 1985年7月25日出版:晶文社)
構成・演出 河井朗
ドラマトゥルク 蒼乃まを、田中愛美
出演 伊奈昌宏、諸江翔大朗、渡辺綾子
美術 辻梨絵子
音響 おにぎり海人、河合宣彦
照明 松田桂一
制作 金井美希
制作協力 (同)尾崎商店、黒澤健
衣装協力 MILOU
記録 田中愛美
日時・会場2022年2月10日(木)〜2月15日(火)|北千住BUoY
※すべての上演は終了しました。ご来場いただきました皆様、気にかけてくださった皆様、誠にありがとうございました。
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