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#お姫様
『最強姉妹の末っ子』第50話
『オールシーズフェアリー』というアイドルのコンサート会場は密集地帯から少し離れた所にあった。
とは言っても、そこも信じられないくらい人だらけだったけど。
どうやら公園は野外で行うらしく、遠くの方に神殿かと思うくらい荘厳な建物が見えた。
くり抜かれたように長方形に空いている部分で演者が歌ったり踊ったりするのだろうか。
しかし、そこまでの道のりは埋め尽くすほどの人混みの中を泳がなければならか
『最強姉妹の末っ子』第49話
「メタちゃん、どうしたの?」
私の顔が蒼白な事に気づいたのか、ロリンが覗き込むように聞いてきた。
私はグチャグチャの紙の塊を見せながら説明すると、ロリンは「えぇ?!」と声を上げていた。
そして、マジマジと塊を見た。
「うわぁ……ちょっと、職員に文句行ってくる」
ロリンが眉をひそめて来た道を戻ろうとしたので、私は腕を掴んで引き止めた。
「もういいよ! 過ぎた事はしょうがないし……出し忘れたの
『最強姉妹の末っ子』第48話
突然の演奏が終わると、入国者達はさっきまでの暗い表情はどこへやら和気藹々と食事や談笑を楽しんでいた。
私はお盆を持ったままロリンの元へ戻った。
ロリンは私を見つけるなり、「大丈夫だった?」と心配そうな顔をしていた。
「うん、平気」
私はそう言って、お盆を置いた。
ロリンは「いつの間に頼んだの?」と目を丸くしていた。
「いや、えっと……もらったの」
「誰に? まさかモミジからって言う訳じゃ
『最強姉妹の末っ子』第47話
銀髪は男二人が動けない事を確認した後、落ちていたフォークを拾った。
そして、ナイフみたいにギュッと握った後、小柄な男に近づいた。
銀髪の赤紫の瞳が殺気立っていた。
まずい、なんかもっと悲惨な事が起きそうな気がする。
そんな予感は的中し、銀髪は小柄な男の右脚の太腿部分を突き刺した。
「ぎゃああああああ!!!」
たちまち悶える小柄な男。
銀髪は一旦引っこ抜いたかと思えば、また突き刺して、
『最強姉妹の末っ子』第46話
突然現れたモミジという不思議な魅力をもつ女性と簡単な自己紹介とかを話しながら入浴を済ませた後、仮の洋服に着替えて、食堂に向かった。
モミジはなぜか私の隣に寄り添うように歩いていた。
彼女と眼が合った時にはニコッと微笑まれたものだから、どう応えたらいいか分からず、何も言わずにサッと避けてしまった。
すると、ロリンが彼女を隠すように間に入っていった。
きっと緊張している私に配慮を――いや、唸
『最強姉妹の末っ子』第45話
施設は入国審査された所よりも天井や幅が大きく、二階まで吹き抜けだった。
大勢の入国者が楽しそうに歩いたり何かを飲んだり食べたりしているのが見えた。
私とロリンは受付らしき所に向かった。
カウンターの前には青色のジャケットを羽織った青年がいて、彼はポーイのお腹にライトをあてると、「はい、大丈夫です。ごゆっくりお過ごし下さい」とにこやかに二つのかごを渡された。
中にはタオルと石鹸、髪用と書か
『最強姉妹の末っ子』第44話
「あっ、そういえばお二人の名前を聞いていませんでしたね」
ポーイは思い出したように私の背中に隠れるのを止めて、再び向かい合う形で浮かんだ。
「メタよ」
「ロリン。よろしくね!」
名前だけの自己紹介だが、ポーイは嬉しそうに「よろしくね、メタ! ロリン!」と笑顔を見せた。
初対面なのに呼び捨てかい。
そう突っ込もうとしたが、ポーイは「どこかに行きたい所とかありますか?
オススメは温泉です!」
『最強姉妹の末っ子』第43話
「おい、なんだ……チアリーダーの服に水着、白衣……どういう経緯で使うつもりなんだ!」
「趣味に決まっているでしょ! そんなにジロジロ見ないで!」
「おい、なんだ! この箱は?! 押したら馬鹿でかいものになって、危うく圧死する所だったぞ!」
「それは馬なし馬車だって! 馬がなくても運転できるの!」
「なんだ、それは……おいおい、この液体はなんだ? まさか人の頭を混乱させる非合法な酒じゃないだろうな!
『最強姉妹の末っ子』第42話
案内ボード(私が勝手に名付けた)が言っていた事は本当で、休憩を挟みながら二時間ほど走っていると、何やら見られない建物が見えた。
いや、見慣れないどころじゃない。
一瞬お城かなと思うくらい高い建物が何個も見えたからだ。
私とロリンは一旦車を止めた。
小高い山の中腹辺りの開けた場所だったので、景色がよく見えた。
さらに詳しく見るために遠くのものがよく見えるポーションを久しぶりに食べた後、観
『最強姉妹の末っ子』第41話
「末っ子ぉおおおおおおお!!!」
すると、鏡にムーニーが狼の魔機に乗りながらこっちに向かっているのが見えた。
「止めて! ムーニーが来ている!」
私がそう言うと、ロリンは「え?!」と慌てた様子で急停止させた。
その反動で頭がグンと背後から押されたような感覚がした。
固定されていなかったら、本当に突っ込む所だった。
縄が自動的に解除され、私は馬なし馬車から降りた。
ムーニーはすぐ近くまで
『最強姉妹の末っ子』第40話
「じゃあ、そろそろ妹達とお茶会があるから帰るね」
メタリーナは突然私にそう告げると、スタスタと歩き出した。
「え? あ、うん……いや、ちょっと待って!」
危ない、危ない。
メタリーナの揚げドーナッツ注文に気を取られて、本来の目的をすっかり忘れる所だった。
私はメタリーナに王子を返すように頼んだが、長女は「嫌よ」と拒否した。
一瞬諦めそうになったが、ここで怯んでしまったら、二度とチャンスは
『最強姉妹の末っ子』第38話
私とメタリーナは並行しながら歩いていった。
鼓動が未だに元に戻らない。
恋ではないのは明らかだ。
チラッと長女を見た。
メタリーナは優雅に揚げドーナッツを食べながら歩いているが、一切隙を感じられない。
仮にもし攻撃しようとしたら、あっさりかわされて致命傷の反撃を被る事になるだろう。
それくらい彼女の身体から目に見えない不気味な何かがまとっていた。
こんな未知数の恐ろしさを持つ相手に
『最強姉妹の末っ子』第37話
だけど、数秒で出発の準備が終わってしまったので、せっかくだから食べ物を売っているお店があるかどうか探す事にした。
個人的にはこの国を初めて訪れた時に見たフワフワのパンケーキや揚げる系のお菓子(チュロスや揚げドーナッツなど)があれば、数々の戦闘で疲弊した私の身体を癒やす事ができる。
ついでにロリンとムーニーに差し入れとしてあげたいので、ブラブラと廃墟も同然の道を歩いていった。
すると、こんな
『最強姉妹の末っ子』第36話
ティーロとティーマス達は早速王国の外にある水と源泉を確かめに行った。
実際にある事が確認させると、今後これをどう有効活用させるかを話し合っていた。
ティーナはムーニーに頭と胴体が離れないように直してくれた。
そのおかげか、前よりも倍くらいに動けるようになり、魔物ロボットにもテキパキと瓦礫を運んだりしていた。
そういえば、一つ気になる事があった。
城の残骸には恐らく工場にいたであろう魔