『最強姉妹の末っ子』第46話
突然現れたモミジという不思議な魅力をもつ女性と簡単な自己紹介とかを話しながら入浴を済ませた後、仮の洋服に着替えて、食堂に向かった。
モミジはなぜか私の隣に寄り添うように歩いていた。
彼女と眼が合った時にはニコッと微笑まれたものだから、どう応えたらいいか分からず、何も言わずにサッと避けてしまった。
すると、ロリンが彼女を隠すように間に入っていった。
きっと緊張している私に配慮を――いや、唸り声を上げながら睨みつけているから完全に嫉妬だな。
なんて事を思っていると、食堂に付いた。
ここも先程の大浴場に負けないぐらい広くて、テーブルが何個もあった。
入国者が各々の席に座って、ワイワイと話したり一人で黙々と食事を取ったりしながら思い思いの時間を過ごしていた。
かなり広いカウンターがあり、そこではシェフが忙しそうにフライパンを振ったり、野菜や果物を切ったり、盛り付けをしたりしているのが見えた。
完成した料理はカウンターの上に置かれ、それをウェイトレスがお盆に乗せて席まで運んでいった。
中には待ちきれずにその人から直接取りに行く者もいた。
よくミスとかないなと思っていると、シェフがウェイトレスに何かを言った後に料理を出している事に気づいた。
なるほど、もしかしたらあそこで『この料理はあそこの席の人だよ』とか言っているのかな。
でも、なんで分かるんだ?
私が首を捻って考えていると、モミジが「何か食べますか?」と首をしなやかに傾けて聞いてきた。
私が答える前にロリンが「そうですね! めちゃくちゃ腹ペコだからメタちゃんと一緒に二人きりで食べたいと思います!」と早口で言ったかと思えば、無理やり私の腕を引っ張って行こうとした。
チラッとモミジの方を見ると、表情が暗くなっていたので、私はブンッと振り払ってロリの耳元で囁いた。
「気に喰わないのかもしれないけど、いくら何でも失礼過ぎない? あなたが同じ事をされたらどう思うの?」
私は言いたい事をぶつけた後、すぐにモミジの所に駆け寄った。
「うちの姉がすみません。少し……その……普段は優しいんですけど、空腹のせいかイライラしちゃって……」
私が必死に弁明していると、モミジが突然笑い出した。
「彼女の反応は正しいわ。私達はまだ出逢ってまだ少ししか経っていないんですもの。
これ以上、お姉さんの機嫌を悪くするつもりはないから……それじゃあ」
モミジはそう言ってスタスタと空いていたテーブルの方に向かった。
そして、上に置かれていた板を手に取って指先を動かしていた。
私はキッとロリンを睨んだ。
「もう! あなたのせいでモミジさんと食事が出来なかったじゃない!」
ムッとした顔をしていると、ロリンの表情が真面目になった。
「でも、あの人と関わるのを止めた方がいい。何か嫌な予感がする」
私は反論しようとしたが、ロリンを納得させる事ができる言葉が思いつかなかった。
それに彼女がこう言っている時は、おふざけなしの真剣な助言だ。
無性にあの人と話したい衝動を必死に抑えながら「分かった」と頷いた。
そして、今後も関わらないようにモミジが座っているテーブルから離れた席に座った。
さて、気を取り直してご飯にしよう。
モミジさんは確かこうやって板を取っていたっけ。
私はあの人の行動を思い出しながら操作していると、突然怒声が聞こえた。
ロリンも一緒になって同じ方を見てみると、私達と同じ淡いピンク色の無地を着た大柄の男二人組が誰かの席の前に立っていた。
表情から見て怒り心頭なのは明白だった。
「とうとう見つけたぞ、この詐欺師め!」
「よくも俺らを誑かしてくれたなぁ!」
「沼にハマったのはあなた達の方でしょ。破滅寸前で止められなかったのは自業自得だと思うけど?」
この声はモミジさんだ。
助けないと――そう思って立ち上がろうとしたが、ロリンに腕を掴まれてしまった。
「なんで?」
私が怒りにも似た感情で聞くと、ロリンは「あれは彼女の問題であって、あなたには関係ない」
やはり、そう来たか。
だったら、こう言っておけば納得するかな。
「でも、あいつらうるさくて周りの人の食事を邪魔しているから、一発……いや、二発ぐらいぶちのめしてくる」
私はそう言って腕を振り払うと、ツカツカと奴らの方に向かった。
近づくにつれ、やはり絡まれていたのはモミジだと分かった。
彼女は悠然と椅子に腰掛けていた。
その前には大柄の男二人が一触即発の雰囲気を醸し出していた。
「てめぇ、ぶち殺してやるぅ!」
もみあげまで髭のある男が拳を振りかざした。
(まずい! やられる!)
そう直感した私は急ダッシュで駆け寄ろうとした――が。
「持ってて」
いきなり目の前に銀髪のポニーテールの女性が私に料理が乗っかったお盆を差し出してきたかと思えば、姿が見えなくなった。
「あぎゃあああああああ!!!!」
そして、突然男の叫び声が聞こえてきた。
とっさに声のした方を見ると、さっき私にお盆を渡してきた銀髪が男達の隣りにいた。
叫んでいたのは髭の男で、手の甲にフォークが刺さっていた。
隙間から血が滴り落ちていた。
「このクソ野郎!」
もう一人の小柄な男が銀髪に殴りかかろうとした。
銀髪は片腕で受け止めた後、掴んでいた彼らの腕を振りはらってバランスを崩したのち、足で蹴り飛ばした。
「グホッ!」
小柄な男はテーブルと共になだれ落ちていった。
背後から髭もじゃの男が自分の手に刺さっていたフォークを引き抜いて、それを武器に背後から狙った。
銀髪は一切振り返る事なく両手でフォークの持った腕を掴むと、勢い良く投げた。
「ぐぉっ?!」
髭の男は間抜けな声を上げて、伸びている小柄な男の上に叩きつけられた。
その勢いが強かったのか、テーブルが割れてしまい、男二人組も一緒に巻き込まれてしまった。
「ぐっ……くっ……」
しかし、彼らも丈夫なのか、二人ともよろめきながらも立ち上がった。
これに銀髪は首をコキコキと鳴らしていた。
「お前がやれ」
髭もじゃの男が小柄な男にフォークを手渡してきた。
武器を貰えた事に嬉しいのか、小柄な男は「へへへ……」と気味悪そうな笑みを浮かべて、フォークの先をペロッと舐めた。
そして、大股で彼女の距離を詰め、フォークを振りかざした。
が、これもまた受け止められ、がら空きになった腹に三発おみまいされてしまった。
だが、髭もじゃの男が銀髪の背後に回り、羽交い締めにした。
「今だ! やっちまああああああ!」
しかし、両腕を拘束されていても両脚が自由に使えるので、銀髪はすぐに男の足を強く踏みつけた。
拘束が緩んだ瞬間、両腕を大きく振って髭もじゃの男を後退させ、前方からフォークを突き刺そうとする小柄な男を蹴っ飛ばした。
その後、バランスを崩した髭もじゃの男を飛び後ろ回し蹴りで頭を強打させた。
この一撃にはさすがに堪えたのだろう、口から血をブシャッと出した後、バタンと地面に倒れた。
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