まつ

読書から考えたこと、その他諸々。

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最近の記事

『月の満ち欠け』

都内は霙(みぞれ)が降るほど冷えたあとに桜が咲き始めるほど暖かくなる。 気候の情緒不安定。 池袋のジュンク堂で人類学や共同体論の本と一緒に『月の満ち欠け』佐藤正午・岩波書店を購入する。岩波文庫のコーナーで見つけた時は「? この内容で岩波文庫に何であるの?というかグレーの帯?社会科学でもないし・・・」「岩波文庫に入るほどのテーマ性を持った作品なのか?」と疑問をいくつか抱えつつ読んでみた。 読了後に検索してみると、「岩波文庫的」「的」だった。装丁をよくみると帯もグレーではなく

    • 「構造と診断②」

      「分ける根拠、分ける深度は「分ける意味」、有用性に依存している。それはプラグマティックな分け方であり、西條剛央先生的に言うならば、「関心相関的」に決定される。すなわち、自分たちの関心こそが分類の方法を決定するのである。」 『構造と診断 ゼロからの診断学』岩田健太郎 医学書院p35 人類学である。『野生の思考』の印象的なエピソードは、学者が現地の人々にくっついて散策していると「この植物はなんて名前?」と学者が尋ねると、現地の人に笑われた。要は「そんな役に立たない植物の名前なん

      • 「構造と診断」から

        2022年になった。それだけ。 「初等教育から高等教育にいたるまで、日本の教育を規定しているエートスである。飲み込むこと。咀嚼せずに飲み込み、そのままで吐き出すこと。これこそが優秀な生徒の証である。学校の先生は、「2×2は4ですよ」「はい、わかりました」と飲み込ませる。先生の言ったことが「わかるか」「わからないか」が問題になる。「どうしてそうなるの?」「納得いかない」という子供は「劣等生」のレッテルを貼られる。嚥下能力を欠いているからだ。そこでは、必要なのは嚥下能力であり、

        • 「くらしのアナキズム⑦」

          「だれかが決めた規則や理念に無批判に従うことと、大きな仕組みや制度に自分たちの生活をゆだねて他人まかせにしてしまうことはつながっている。アナキズムは、そこで立ち止まって考えることを求める。自分たちの暮らしをみつめなおし、内なる声とその外側にある多様な声に耳を傾けてみようとうながす。その対話が身近な人を巻きこんでいく。「私たちそんなことやるために生きているわけじゃないよね?」と。ぼくらはときに真面目であるべき対象をとり違えてしまう。大切な暮らしを守るために、日々の生活でいやなこ

        『月の満ち欠け』

          「くらしのアナキズム⑥」

          「ダネッサには、人びとを戦争へ均質的に動員するいかなる制度化された調整機構も存在していないだけでなく、個人レベルでも他者への強制を嫌い、相手の「胃」の自己決定を尊重する態度が共有されている。彼らは、個人を超越した規範や命題に依拠して組織された「われわれ」として、斉一的に集団行為へ参加することによってではなく、これまで経験をともにしてきた他者がその過去の経験に基づいておこなっった決定を、「胃のちがい」という論理をとおして最大限に受容しあう態度を共有することによって、ゆるやかなま

          「くらしのアナキズム⑥」

          「くらしのアナキズム⑤」

          「マックス・ヴェーバーは、国家を物理的な暴力の行使を正当に独占することに唯一成功している共同体と定義した(『職業としての政治』)。・・・警察にせよ、軍隊にせよ、「物理的な暴力の行使」をひとつの集団や組織が独占する。それが国家の本質にある。自由・平等・自治というアナキズムの目指す価値は、その独占を志向する力との絶え間ない拮抗のなかにあった。」 『くらしのアナキズム』p131 松村圭一郎 ミシマ社 国家は私事なり。福沢諭吉が言った通り。国家権力というやつ。 根本的な性質として

          「くらしのアナキズム⑤」

          「くらしのアナキズム④」

          「国家権力を生みだす根底には、権力への欲望とともに、隷従への欲望があると指摘する。一度、権力関係が生まれ、社会が支配者と被支配者に分化してしまうと、もはやあともどりできなくなる。(・・・)「生産活動が初期の目的からそれ、自らのためにのみ生産していた未開人が、交換も互酬性もなしに他者のために生産する時、全てがひっくり返る。その時、すなわち、交換の平等性の規則が社会の「民法法規」であることをやめ、生産活動が他者の必要を充足することを目ざし、交換規則に負債の恐怖がとって代わる時、我

          「くらしのアナキズム④」

          「くらしのアナキズム③」

          「国家から逃れた人びとはどこへ行ったのか?多くは国家の支配がおよびにくい険しい山奥へと逃れた。スコットの本のタイトルになっている「ゾミア」とは、そんな広大な非国家空間がひろがる中国南部から東南アジア大陸部の山岳地帯のことだ。(・・・)ぼくらが学校で学ぶ歴史は国家の中心から描かれた「国史」だ。だから、文明化した国家の中心が先進的な優れた場所で、その価値観に馴染まない周辺の僻地は遅れていて、そこに住む人々は「野蛮人」として描かれる。それは、東京にある大学や企業こそがすばらしくて、

          「くらしのアナキズム③」

          「くらしのアナキズム②」

          「ホッブズは、戦争状態を抑止し、危機に対処するためにこそ、主権国家が必要だと説いた。だが歴史的にみれば、国家は人民を守る仕組みではなかった。人びとから労働力と余剰生産物を搾りとり、戦争や疫病といった災厄をもたらす。国家はむしろ平和な暮らしを脅かす存在だったのだ。」          『くらしのアナキズム』松村圭一郎 ミシマ社 p35、36 ウエストファリア条約以降、「国民国家」って概念が原始国家システムに上塗りされたんだろう。今、私たちが「国が国民の生活を保障すべきだ」と

          「くらしのアナキズム②」

          『くらしのアナキズム』①

          「どんな思想も「イズム主義」が目的化すると、プロセスが犠牲にされ、正しさを競いあうゲームになる。でも、人生はプロセスそのものだ。誰も正しさのために生活しているわけではない。」                     『くらしのアナキズム』松村圭一郎 P13 ミシマ社 「論破」がちらほら目につく。『竜馬がゆく』でも竜馬が相手を論破しないことを心がけていた。と司馬遼太郎が書いていた。確か、陸奥宗光が亀山社中で仲間から好かれていない場面だったか、清川八郎と話していてか(巧言令色す

          『くらしのアナキズム』①

          「愛の不時着」

          その時が来た。 ほとぼりが冷めて『愛の不時着』を観た。 はじめの数話観て、「韓国ドラマはいつの間に、こんな重層的な物語を作るようになったんだろう」と思った中で、作中に『天国の階段』がチラリと話題に上がる。 夕方の土曜か日曜にフジテレビで放送されていたのを「何となく」見はじめて、何気に毎週楽しみにしていたことを思い出した。よく泣いているし、記憶無くすし、感情表現が大きいし、「物珍しさ」が先行していたと思う。話の筋はほとんど覚えていない。「韓流」というイメージの作品だった。

          「愛の不時着」

          そもそも① 文字の誕生

          「文字は、中央集権化し階層化した国家が自らを再生産するために必要なのだろう。・・・文字というのは奇妙なものだ。・・・文字の出現に忠実に付随していると思われる唯一の現象は、都市と帝国の形成、つまり相当数の個人の一つの政治組織への統合と、それら個人のカーストや階級への釘付けである。・・・文字は、人間に光明をもたらす前に、人間の搾取に便宜を与えたように見える。」 クロード・レヴィストロース 『反穀物の人類史 国家誕生のデイープヒストリー』ジェームズ・C・スコット 立木勝 訳 み

          そもそも① 文字の誕生

          「テニスのコムニタス① 」駒込コムニタス

          昨日の雨が止み、曇りではあるものの涼しく過ごしやすい1日だった。 絶好のテニス日和である。昨日まで降っていた雨で、「今日は壁打ちにくる人は少ないだろう」と期待して茗荷谷の壁打ちへ向かった。 到着してみると確かに壁打ちをしている人は少なかった。(2人)しかし、隣のテニスコートではテニス大会が開催されていた。テニス人口は大会参加者であり、壁打ち参加者ではなかった。大会参加者は壁打ち禁止のルールらしく、壁打ちをしにきた自分としては有難いことだった。 練習方法は窪田テニス式で、

          「テニスのコムニタス① 」駒込コムニタス

          「カッパギ❗️②」

          ハウスクリーニングは繁忙期のエアコン、年末の大掃除シーズンを過ぎると「閑散期」になるらしい。なので、何かできることはないかと考える。 害虫、害獣駆除をやることもあるらしい。 で、スズメバチの巣の駆除に同行した。 何が大変かと言えば、防護服の暑さだ。それが何よりきつい。炎天下のアスファルト照り返しの中を密閉度の高い厚い服を着るとか、拷問でしかない。 服の暑さを除けば作業自体はシンプルだ。 蜂の巣の出入り口に薬剤をスプレーし戻ってきた蜂がいれば捕獲する。 最後に巣を切

          「カッパギ❗️②」

          「カッパギ❗️ ①」

          久しく、というかこれからのスタンダードとしてなのか、雨が続いた後の猛暑。 そんな日に「浴室クリーニング」に行くことになった。 2世帯?一戸建ての浴室2つ、エアコン、レンジフードのクリーニングという依頼。 自分は1階の浴室を担当することになった。洗剤、道具が入ったコンテナボックス、ブルーシートを持ちこんで、状態をチェックする。 チェックする。とは言っても、浴室クリーニングに入るのは4回目くらいだ。経験は浅浅だ。スタンダードな浴室クリーニングに加え、浴槽のエプロン内を高圧

          「カッパギ❗️ ①」

          「通り抜ける」

          転職して13日が経過した。5月に入ってからエアコンクリーニングをやるようになった。メーカーによったり、個体差でケースバイケースで臨機応変さが意外と求められることを知った。エアコンクリーニングの肝?は本体カバーを外す。お掃除ユニットの分解が面倒なポイントの2つなんだと思う。それらをこれからエアコンクリーニグシーズンに入って数をこなす中で体得していきたい。独立のための技術その1だ。3年後を独立(貯金と技術習得の年月)として1095日のうち残り1074日になる。2年後として730日

          「通り抜ける」