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そもそも① 文字の誕生

「文字は、中央集権化し階層化した国家が自らを再生産するために必要なのだろう。・・・文字というのは奇妙なものだ。・・・文字の出現に忠実に付随していると思われる唯一の現象は、都市と帝国の形成、つまり相当数の個人の一つの政治組織への統合と、それら個人のカーストや階級への釘付けである。・・・文字は、人間に光明をもたらす前に、人間の搾取に便宜を与えたように見える。」

クロード・レヴィストロース 『反穀物の人類史 国家誕生のデイープヒストリー』ジェームズ・C・スコット 立木勝 訳 みすず書房


このレヴィ・ストロースの言葉に人間の原罪みたいなものの本質が示されているように感じる。このレヴィ・ストロースの言葉の引用から始まる『反穀物の人類史』は国家の発生には文字と穀物が必要だったという。(大雑把に言えば)

文字の発明は人の心を揺さぶる文学や聖典のためではなく、人々から税を取り立てるための「記録」の手段として生まれたと。それが冒頭のレヴィ・ストロースの「人間に光明をもたらす前に、人間の搾取に便宜を与えたように見える」という言葉に当たる。

国家の性質はもっぱら搾取にある。

なんだかアナーキストみたいになってくる。

イデオロギーはともかく、この『反国物の人類史』は国家が形成される前は「人間はどんな暮らしをしていたのだろうか」という疑問にメタ分析的に数万年前の暮らしぶりを浮き上がらせる。もちろん、21世紀の国民国家のシステムを全否定する必要はない。十分その恩恵を受けているのも事実だ。一人で水道網や電気網、現代医療や道路を整備できるはずもなく、小さな共同体でも限度がある。大きな枠で多様なマンパワーあっての快適な暮らしが成り立つのも現実だ。

とはいえ、21世紀の人新世が地球を覆い、資本主義の限界が見えてきて、格差が拡大し・・そういった状況だと、手放しに「国家」というあり方に根本的な分析が必要になってくるだろう。その手がかりとして国家以前の暮らしを詳しく考えてみるのは有効な気がする。単純にルソー的な「あの頃はよかった」ではなく。ルソーはそういってなかったろうけど。(曲解した人がそう単純化したんだろう)

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