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脚本42「立て籠もり」

《言い換えただけでイメージは変わるね》


「腹が、減ったな。立てこもりを始めてどれくらい経ったろうか。おっと、カーテンに触れるんじゃない、中の様子がバレちまうじゃねぇか」
「次はないと思え、いいな。さて定時連絡の時間だが、電話が鳴らないぞ~? これはイケないねぇ、人質の処刑としますか」
「さぁて、銃殺、絞殺、撲殺……どれがお好みか……」

★電話の音

「ふん、命拾いしたな」

★電話に出る

「遅かったじゃないか。定刻より1分の遅れだ」
「なんだと? 言い訳とはいい御身分だな。貴様の息子がどうなってもいいのかな?」
「そうだろう、腹を痛めて生んだ息子だ。何よりも大事なことだろうよ」
「はっはっはっは、だったら早くカツ丼を用意するんだな」
「……あぁ、いる。紅ショウガはいる。大丈夫だ、心配するな。いや猫舌だけども」
「……そうか、冷ましてからね。しかし早くしないと貴様の息子がお陀仏だぜ、母さん」

★電話を切る

天使「もうやめてっ、人質なんて可哀想っ」
悪魔「いいや続けろ、この人質は使えるぞ」
天使「悪魔の言う事を聞いてはだめっ。あなたが意見を変えないなら、親兄弟皆殺しよ」
悪魔「こ、この鬼畜めがぁ……」
天使「人質を解放して日の光を浴びてっ」
悪魔「人質を解放して日の光を浴びるがいいいいい」
「……うるせぇ」

★天使と悪魔を捨てる。電話が鳴る

「どうした」
「なに? 温泉卵が上手く作れた? うん、食べてみる。……それでは要求を告げる。温泉卵は割って提供しろ、さもなくば貴様の息子は絞殺する」
「え、あ、ちょ、嘘、絞殺はしない。しないから泣かないで、うん、うんホント。ごめんね、うん、カツ丼と分けてくれるとボク嬉しいかな」
「では次の定時連絡を待つ。えっ! どしたの!? 火傷!? 早く冷やして、いいよいいよカツ丼くらい自分で持ってくるから!」

★自室から出る

「えー、わかったよリビングで食べるよぉ」

★自室に戻ってくる

「いやいやいやいや、出ちゃったよ。え、なにボクの意志ってその程度だったの?」
天使悪魔「やっぱり君は優しいね! その優しさに付け込まれてバァカバァカ」
「だからうるせぇって」

★天使と悪魔を捨てる。電話が鳴る

「定時連絡の時間はまだだぞ。あ、カツ丼? おいしかったよ」

★電話を切る。電話が鳴る

「なんだ、しつこいじゃないか。人質の解放には応じな、え? 先生?」
「それでも僕は学校に行かない! ……なんだと、来ないと人質の命がないだって? 既に全方位に待機しているスナイパーが母さんを狙っている!?」
「ふっ、抜かったな。こんなこともあろうかと我が家は防弾ガラスだ!」
「何を笑っている先生。……なんだって!? スナイパーの一人は、母さん……?」

★電話切れる。電話をかける

「無駄な抵抗は止せ、そんなことをしても息子を悲しませるだけだぞ? カツ丼、また食わしてやれよ。さぁ要求はなんだ? そうか、息子が学校に行くこと、か」

★電話を切ってかける

「先生、負けたよ、あんたの熱意にね。母さんを、解放してくれないか」

★電話が切れる。
★外に出た瞬間袋に詰められる。

「うわ! んーんー! ぷは、え、マジの誘拐!?」

おわり

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