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【読書感想文】モンテッソーリ教育を受けた子どもたち|幼児の経験と脳|

昨秋、今年度初めての個人面談のときに、前の方が少し長引いていたので、待機部屋で少々時間を潰すことになった。そういう私のような人のために、先生方がいつもモンテッソーリ関連の本や雑誌などをテーブルに設置してくださるのだが、その際、何気なく手を伸ばしたのがこの本だった。

相良敦子先生はモンテッソーリ教育の第一人者で、多数の著書がある。

藤井聡太さんの登場以来、モンテッソーリ教育にスポットライトが当たり、読みやすく書かれたHowto本や、ビジネス書が巷に溢れているが、それらはエッセンスが語られているにすぎない。「モンテッソーリ教育を知らない親が、モンテッソーリ教育の要素を日々の子育てにどうやって役立てるか」という内容だからだ。モンテッソーリ教育のバックグラウンドを知らなくても、理解できるように編集されている。

Howtoから入ったのちに、一歩進んで「モンテッソーリ教育とは何ぞや?」に興味を抱いた方は、迷わず相良先生の著書を読んでほしい。

本書では、モンテッソーリ教育には二つの側面があると語られている。

モンテッソーリ教育の中には、対照的な二つの側面があります。一つは、誰でもすぐに実行できる側面です。もう一つは、「モンテッソーリ教具」が整った「モンテッソーリ・クラス」があり、そこに「モンテッソーリ教師養成」を受けた教師がいて、穏やかに丁寧に指導してくれるという、いわゆるモンテッソーリ・メソッドを実践することを標榜する側面です。

本来のモンテッソーリ教育は、二つ目の側面、『モンテッソーリ・メソッドの実践』によって成されるのだろうが、我が家のように、近所にモンテッソーリ教育を実践している幼稚園がある人以外、モンテッソーリ教育に触れることができないというのはもったいない。

そこで、一つめの側面、『誰でもすぐに実行できる』動作や声かけ、環境設定などで、日常の育児に取り込めないか、という想いが、先生方や専門家による本の出版やインターネット等での発信につながり、日本でもモンテッソーリ教育が広く認知されるに至ったのではないかと思う。

私の母は、父が通っていたからという理由で、私を近所のモンテッソーリ園に通わせた。母自身、「モンテッソーリって何?」という状態で、私の入園と同時に、モンテッソーリ教育を学ぶ生徒として、自分も入園した気分だったと言っていた。

時代はめぐり、息子たちを入園させて、今は母の気持ちがよくわかる。

私はモンテッソーリ教育を受けて育ったが、その後、体系的に学ぶ機会は訪れなかった。自分の中に擦り込まれた価値観や性格、所作などについて、モンテッソーリ教育との関連性を検証するなど思いも寄らなかったので、母同様、私も生徒として入園した気分で、早7年が経とうとしている。

日ごろ、モンテッソーリ教育に関する本や記述についてパラリと目にすることはあっても、実は本腰を入れて読むことはほとんどなかった。

相良先生世代の園長なので、折に触れてモンテッソーリ教育に関するお話をされる中で、十分に薫陶を賜っているように思うからだ。メソッドの効果については、子どもたちの様子を見たり聞いたりする中で、ジワジワ実感を得ることができているし、まさに実践的にモンテッソーリ教育に触れているので、書籍からの知識を強く必要としなかった。

しかし、いよいよ卒園が見えてきたところで、これまでの幼稚園生活を振り返ると、私と子どもたちの幼児期における興味関心や好きな遊び、考え方、行動の様子などに共通点があるように思えてきた。私の手が本書に伸びたのは、それらがちょうど気になり始めたときに、目の前に現れたからである。

本書の初めに、『モンテッソーリ教育を受けた子どもたちには、共通した特徴があります』との記載がある。

・順序立てて、ものを考えることができる。
・何をするにも、計画を立て、順序を踏んで、着実に実行する
・段取りがよい。
・先を見通すことができる。
・一から出発する。
・省略しない。
・状況の読み取りが速く、臨機応変に対処することができる。
・わずかな差異に気づき、道徳性が高い。
・ひとりで、たじろがない。責任ある行動ができる。
・礼儀正しい。

上記は、相良先生の著書の中でも特に知られているであろう『ママ、ひとりでするのを手伝ってね!』の中でまとめられた、モンテッソーリ教育を受けた子どもたちに共通する特徴である。

これがなかなか、当てはまるのである。リストの内容の良し悪しについては横に置き、自らを自己分析したときに、心地良いと感じる思考や行動が書かれていることは確かだ。

さらには、子どもたちそれぞれに、何かしらが当てはまるものだから驚く。幼稚園のお友だちに聞いても、皆、当てはまるのかもしれない。だからと言って、これらの特徴に当てはまるようガッチガチに指導された、均質的な集団ではないのだ。十人十色、ひとりとして同じには見えず、むしろ多様性を歓迎する集団であるところがおもしろい。

『幼児の経験と脳』と副題があるように、「これらの共通点を脳科学者に提示するための書である」とも明記されており、脳科学から見たモンテッソーリ教育という視点も興味深い。気になっていた『モンテッソーリ教育を受けた子どもたちの共通項』というテーマより、しっかり読み込んでしまった。

モンテッソーリ教育と無縁で育った人には、体験エピソードより、脳科学からの切り口の方が興味をそそられるかもしれない。「脳に良い」と言われると、なんだか良いものに思えてくるし。

兎にも角にも、モンテッソーリ教育の真髄に迫りたい方は、ぜひ相良先生の著書に手を伸ばしてほしい。

今日は、幼稚園最後の個人面談の日だった。待つことなく順番が回ってきたが、テーブルに置かれていた本はこれだった。

卒園まであと1か月。もうすぐ、実践的なモンテッソーリ教育から離れることになる。そんな今だからこそ、「モンテッソーリ教育とは何なのか」「今後、自らで実践し続けたいことは何なのか」を探すべく、7年目にしてモンテッソーリ教育の読書を始めたいと思っている。次はこれにしようかな。

noteの中でもモンテッソーリ教育に携わっている方が数多くいらっしゃるが、Mapleさんのこの記事が一番好きである。

日々の子育ての中で実践するというのは、こういうことなんだろうなぁと思った記事。参考にさせてもらいながら、学童期の取り入れ方について勉強していこうと思う。

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