僕が通訳者になるまでの道のり
こんにちは、日伊通訳マッシ(@massi3112)
「日本語上手ですね」「ペラペラですね」「さすが通訳者ですね」など、よく言われている。この言葉には、マッシ=日本語を当たり前に話せる、の意味が少なからず込められているように思う。そう言う人たちは僕の現在の結果しか見ていない。
大学生になり、ようやく大人として学べる!と意気込んだ矢先に、まるで小学生に戻ったかのようにわからない事だらけ。社会人になって日本に来て、苦労しながら、泣きながら、毎日コツコツと勉強しつつ働いてきた結果が、今の僕である。
言語のレベルは話せば分かる。だが、ネイティブレベルで話す人の今までの道のりとは、辛く厳しい坂道であり、その道に潜む様々な悪魔によってさらに複雑で困難になるのだ。
大学1年生の僕を思い返すと、「私はマッシです。」「私はイタリアから来ました。」を言うので精一杯だった。今学んでる事は将来お金になるか、使いこなせるか、仕事にできるか、そんな不安を抱えながら毎日必死で勉強していた頃から17年。日本語を当たり前に使いこなし、仕事にし、高時給の職業に就き大成功!と思われる方が大半だろう。しかし今の僕の生活というと、通訳の仕事がない時は日本語の復習し、弱いところを練習し、毎日泣きながらコツコツと勉強している。あの頃の僕と今の僕に違いがあるとするならば、日本語が話せるようになった、ただそれだけだ。
通訳業においてよく言われるのは、「外国語が話せる=通訳ができる」だ。実はそうではない。簡単に言うと、日常生活で自分の気持ちを自分の言葉で表現するのと、専門家の考え方や専門用語、人柄を理解しつつ、話の要点を絞って人から人へ伝える、の違いだ。どんな事があっても自分の気持ちや考え、感情を完全にオフにしなければならない。そこには精神的な強さが必要なのだ。
同業者なら当たり前の考えだが、同業者以外の方の目には、現場に行って仕事をし家に帰って給料をもらう。そんな楽な仕事に映るのだろう。「現場に行ってぱっと話して帰ってお金をもらう、楽でいい仕事ですね」と言われた事がある。悲しみの悪魔が僕の心を痛ませた。なぜそう言う気持ちになったか。
1日の逐次通訳のために必要な準備は、
①お客様から送られてきた資料を読み理解する
②資料内の専門用語を調べる
③資料外の関係ありそうな用語を調べる
④両言語で翻訳したり用語集を作ったりする
⑤当日のタイムスケジュールの調整と、脳内でのリハーサル
⑥移動と宿泊先の手配と道のりの確認
⑦通訳で使う道具の準備(電子辞書の電池やペンの芯、ノートの予備等)
⑧通訳者に欠かせない、糖分(僕にとってぴったりなのは一口チョコレート。通訳中に頭が回らなくなった時、コソッと食べる。)
⑨会議から工場見学まで様々な現場に合わせた服の準備
ここまできてようやく今までのことを復習できるかと思いきや、
⑩新たに送られてきた、追加資料や変更スケジュールの確認
さらに、現場でどんな事があってもプロとして笑顔を絶やさず、責任を持つ事。
そして何より大事な事は、自分自身の健康管理である。
他の仕事もある中、この1日のために約2週間の準備が必要だ。準備の期間を考えるとそこまで高時給ではない。さらに、通訳者を頼む価値が分からないクライアントからの依頼も時々あるから、僕にとって最大の悪魔だ。
逐次通訳に向いている人は、ツイートにも書いたような人でないと、精神的に難しい。
通訳者というのは、外国語力だけではなく、ビジネスマナーや話し方、様々なことに対しての対応能力、そして言うまでもなく一番重要な事は、母国語力である。綺麗な母国語で話すと、綺麗な外国語も話せる、と強く感じる。
外国語を勉強している皆さん、ハードで長い道だと思うけど、諦めないで。少しだけでも毎日コツコツとやれば、自分の夢を叶える事ができる。実は僕も日本語との戦いを続けている。
Massi
みなさんからいただいたサポートを、次の出版に向けてより役に立つエッセイを書くために活かしたいと思います。読んでいただくだけで大きな力になるので、いつも感謝しています。