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似たような日々の、その先に。

日々を重ねるということ。

同じような毎日を繰り返しているだけのように感じていても
ふと振り返った時。
色々なことが、大きく変わってしまっていると感じることがあるかもしれない。

似たような日々の、その先にある未来について
考えるきっかけとなる作品に出会った。


見たのは『さよならの朝に約束の花をかざろう』というアニメ映画。

たくさん感じて、たくさん考えた。
特に「愛」と「強さ」と「生き方」について、感じた気持ちを残しておきたいと思う。

とても綺麗な映像で
繊細な表情や感情の変化が、丁寧にアニメーションで表現されていて

ストーリーも世界観も
ファンタジーなのに、身近に感じるリアルな描写が
とても素敵な作品だった。


ちなみに
お借りした冒頭の画像は、「機織り機」である。

作中に登場して、懐かしさに胸が躍った。
小学生の頃に夏の自由研究で、小さな機織り機を注文し、マフラーを作ったのを思い出したのだ。
…思えば、夏に完成するマフラーほど悲しい立場のものはないかもしれない。

また、機織り機で何か織ってみたいな。


「住めば都」で生きていく


たとえば今、大切な誰かがいるとして
突然、その人と長い間、離れ離れになったとする。

その期間を、それぞれがどう過ごすか。

どんな思いを抱き、生きていくか。

それによって、日々を積み重ねた先にいる人は、大きく変わっているのかもしれない。変わるのは“見た目”だけでなく、“考え方”や、“大切なもの”など。


仮に数十年後、再会できたとして

離れた相手のことだけを“思い続けて”生きてきた1人と
離れた地で、“新たに”生活を営んでいた1人

そこには「時間」という「大きな穴」があるように思えるけれど
実際には「穴」ではなくて
それぞれ別の場所で過ごした日々が埋まっているだけなのだろう。


そう考えると

“自分に今ある時間をどう生きるか”

“自分の人生を生きることの大切さ”

考えずにはいられなかった。


…しかし
1人のことだけを思い続けた1人が、無駄な時間を過ごしたかといえば決してそんなことはなくて
その人のことを思っている時間こそが、最も幸せで
「その時間があるから、ここまで生きてこられた」とか
「その時間があれば、これからも生きていける」など
そんな風に思えるのなら、それはこの上なく価値のあるものだとも思う。


それでも

「住めば都」というわけではないけれど

どんな境遇に置かれても
その場所で“大切なもの”や“幸せ”を見つけられる人は、かっこいいな、と思った。

ずっと過去に囚われて生きているよりも
ほんの少し幸せに生きられるような気がして

どちらかといえば私はこんな風に生きたいと、魅力を感じたのだ。


大切なものを失った時。

再び手に入るまで追い続けるか
新たにかけがえのないものを見つけるか。

その対象にもよるけれど。


「時を進める」ということ


だからこそ。

「どうして 時を進めた…。」

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』より

数ある素敵なシーンの中でも
不思議なことに、このセリフが強く印象に残っている。


これは、長い間ずっと1人を思い続けてきた登場人物のセリフだ。

相手は、もう違う世界を生きてしまっていた。
昔のようには戻れない。
どちらの気持ちもわかるからこそ、とても胸が苦しかった。


…きっと、どちらの生き方も、不幸ではないのだ。
積み重ねた日々が、苦しかったり、悲しかったり、諦めたくなったりするものだったとしても
その中に、ほんの少しでも必ず、“心が大きく動く瞬間”がある。
それが幸せというものなのか…その時はわからなくても、かけがえのない日々だ。

それが「生きる」ということで
「日々を重ねる」ということで
だからこそ、儚くて
後になってから「美しいと思える思い出」なのかもしれない。


…私にも「時間が過去で止まってしまっている“こと”や“もの”」は無いだろうか、と考えてみる。

その中で、「もう時を進めてもいいかもしれないな」と思えるものがいくつか思い浮かんでいく。

それは「忘れる」ということではなくて

「思い出にする」というわけでもなくて

ただ、「今を生きよう」という気持ちになる。

手放したわけでは無いけれど
日々を重ねていくうちに
自分の一部として占める面積が、ほんの少し小さくなって
心が軽くなっていくような気がした。


機織りも、単純作業だ。
それでも続けていくと、布が出来上がっていく。

似たような毎日を積み重ねていくことにそっくりだ。
この先に、どんな自分が出来上がっていくだろう。


ほつれることがあっても、絡まることがあっても

それは大きな布の、ほんの一部に過ぎない。

…そう思うと
なんか色々、大丈夫そうだな、と思えた。


そして

“愛情を持てる存在”があること
その“愛を受け継いでいく”こと

それが「人」でも「もの」でも

「綺麗」や「美しい」という言葉では足りないと思うほど、この作品をみて、眩しく感じた。



2024.8.1

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