【読んだ】ピエール・クラストル/酒井隆史『国家をもたぬよう社会は努めてきた』
クラストルは南アメリカでの諸部族のフィールドワークを通じて、「国家に抗する社会」を発見した。そこに国家が存在しないのは欠如や未熟さの故ではない。国家の出現を積極的に拒絶するため、複雑な論理と制度によって権力の流れが統御 ——コード化—— されているのだという。クラストルのこの発見は、国家の存在が必然でも普遍的でもない事を明らかにする。例えば文明の発展に伴って国家が出現する、というような進化的発想は斥けられる。それは社会契約説や史的唯物論といった、西洋近代哲学の前提を脱臼させる