【読んだ】百瀬文『口を寄せる』
百瀬文の展覧会図録を書店で見つけて購入した。いくつかの作品は観たことがあったけども、こんなに多作な作家だとは知らなかった。ドキュメント写真と解説文から未見の作品の鑑賞体験を想像しながら、各論考を読んだ。
黒嵜想の「オーラルセックス」は、百瀬の作品を観る時に否が応でも自覚させられる鑑賞者自身のセクシュアルな視線と、脳内を巡る連想を執拗に言語化するのかと思いきや、最後にそれを唐突に切断=否定する。それは拒絶のようにも思えるし、「ツッコミ」のようにも思える。
伊藤亜紗の「身体の捕獲」は、百瀬の映像作品に頻出する「読ませる」という状況に着目して自由意志を論じるのだけど、例えば「中動態」や「ケア」や「利他」のような概念を用いるのではなく、「身体の捕獲」「他者の暴力的な侵入」という「不気味な状況」として描き出しているのは膝を打つ。