共感のためのポイント(1) 相手を理解するための6つの視点

ビジネスの現場では、どれだけ仲間を増やすことができたか、どれだけ多くの人に当事者意識を芽生えさせることができたかが大事です。
そのためには共感力が欠かせません。最終的には共感力が勝敗を左右した、そんなシーンを私は何度も見てきましたし、体験もしました。

私は共感をこう定義しています。

「共感とは、自分が創り上げた概念を相手の中に移植する作業のことである」

つまり、概念化なくして共感はありません。
しかし、概念化できたからといって共感できるわけではありません。
自分本位に概念を説明するだけでは共感は起こらないからです。
相手を理解し、相手が理解しやすいように伝えてはじめて共感は生まれます。

今回は、相手を理解するための手法について考えましょう。

相手を理解するのは容易ではありません。
そこで私は「6つの視点」を準備しています。

・ 問題意識
 ・関心の対象
 ・価値観
 ・持論
 ・セオリー
 ・思考パターン

これらの中でもイメージをつかみにくい後半の3つについて解説しましょう。
「持論」とは、自身の経験に基づいた、自分の中でしか成立しない主張のことです。一般的に証明されたものではなく、はた目には「思い込み」と同じですが、違うのは信じる強さです。正しい理由をうまく説明できないだけに、下手に論破しようものなら大ゲンカ間違いありません。

この場合の「セオリー」は主にビジネスセオリーを指します。例えば「苦手な分野への投資は経営を圧迫するだけ」とか「コスト高の大企業がベンチャーと価格勝負しても勝てるわけがない」などです。

「思考パターン」とは、相手が日頃から使い慣れている思考の流れや意思決定の手順などのことです。何をインプットにするか、インプットに対してどのようなロジックでアウトプットを生み出すか、そこには人それぞれの思考パターンが存在します。「帰納法的アプローチ」「MECE(重複なく漏れなく)」「数値重視」などがこれに当たります。

では、私たちはこれらの「6つの視点」をどう活用すればいいのでしょうか。

共感のためには、創り上げた概念を相手なりにアレンジすることも必要です。しかも、「本質を温存したままに」です。
それだけではありません。共感には、何に例えるか、どこに訴えかけるかといったシナリオも欠かせません。
つまり、共感を促すには総合的な「戦略」が欠かせないのです。
「6つの視点」は、共感戦略の立案に役立ちます。

「問題意識」と「関心の対象」は課題識別に影響を与えます。これらが皆さんとズレていたのでは、説明の良し悪しよりも先に興味が失せてしまいます。説明の際には、なるべく相手の問題意識や関心ごとに関連付けて話を運ばなければなりません。
しかも、これらに関しては、能動的に働きかけることができます。十分な準備をしておけば、新たな「問題意識」や「関心の対象」を相手に植え付けることもできなくはありません。

これに対し、残りの4つは、評価や意思決定に影響を与えます。皆さんの考える課題が相手にうまく伝わったとしても、想定した結論に相手が到達するかどうかは、この4つの扱いにかかっています。
ところが、この4つにうまく働きかけるのは容易ではありません。自分たちの考えを無理やり押し付けると、逆に反発や怒りを買ってしまいます。対立関係ができてしまっては元も子もありません。
たとえ「セオリー」は共有できたとしても、「価値観」や「持論」を否定するのはあまりに危険すぎます。
そこで、これらに対しては、相手を無理やりにコントロールしようとはせず、相手に寄り添いながら自分たちに有利な方向に誘導することが一番です。そのためには、ある程度の妥協や強引な論理置換も必要です。自分たちの概念に固執しすぎてはいけません。第一歩としては「総論賛成」を狙うべきです。

「6つの視点」それぞれに対処方針を整理しておくので、参考にしてください。

・「問題意識」と「関心の対象」に対しては、活かせるところは活かしつつ、相手に不足している問題意識や関心の対象をこちらから補う。
・「価値観」と「持論」に対しては、こちらの意見を主張し過ぎず、むしろ相手の意見を利用する。
・「セオリー」に対しては、こちらが前提にしているセオリーを共有する。
・「思考パターン」に対しては、相手の思考パターンに合わせてシナリオを練る。

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