2023年上半期映画・ドラマ10選
ピークTV時代の終焉もぼちぼち見えてきた感がありますが、とはいえ今の時代に「映画だけ」もしくは「ドラマだけ」観るというスタイルは目が節穴になってしまうので両方併記で行きます。
映画10選
この半年間での新作映画の鑑賞本数は55本でした。
2022年度のアカデミー賞や国際映画祭で既に十分評価されたと思ったものは敢えて外しています。
例えばこの辺り。
イニシェリン島の精霊
別れる決心
ボーンズ アンド オール
逆転のトライアングル
フェイブルマンズ
EO イーオー
TAR/ター
aftersun/アフターサン
小説家の映画
そうしないと昨年末に海外で年間上位と言われてた作品で埋まってしまって面白味が無いので。
非常宣言
年明け早々に韓国から届いた航空パニック映画。
ソン・ガンホにイ・ビョンホンという名優2人を揃えながらあくまで娯楽に徹しているのが良い。
政治サスペンスにアクションにサービス精神満点で、何より地対空のパラレル編集が古典的手法だけど「あぁ〜俺は今これ映画観てるわぁ」とw
終盤の展開はコロナ禍を経験した今となってはゾッとするほど身に迫る。
SHE SAID/シー・セッド その名を暴け
2022年度アカデミー賞で完全スルーを食らっていたので「俺が評価しなければ!」と思った1本w
過剰にドラマを盛り上げて煽らない誠実な脚色。
そして終わり方の切れ味!
ちひろさん
今泉力哉監督×有村架純主演のNetflix映画。
WOWOWドラマの『有村架純の撮休』を見て、いつか長編映画で組んでほしいと思っていたので嬉しかった。
キャラクターも演出もどこか俯瞰的で冷めているのだけど、エンドロールでくるりの『愛の太陽』を聴いてる時は温かい気持ちに。
グリッドマン ユニバース
テトリス
AIR/エア
「明日からまた仕事頑張ってみようかな」と思わせてくれる、めちゃくちゃよく出来たウェルメイドなお仕事映画。
劇中でかかる80年代ポップスの選曲も王道すぎてどう考えてもダサいはずなのに、照れずに仕事に打ち込むストーリーと直結して感動してしまう。
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3
怪物
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
前作でアニメの歴史を軽く10年は先に進めたシリーズの続編はアニメを芸術・アートの領域にまで推し進めた。
あまりの衝撃にアニメ不感症に陥ってしまい、友人から薦められてコツコツ見ていた某テレビアニメを視聴休止中w
幸い(?)もうすぐ宮崎駿の『君たちはどう生きるか』があるのでそこでアニメ復帰予定。
ザ・フラッシュ
ジェームズ・ガン体制になり仕切り直しが決定したDC映画から突然変異的傑作。
個人的に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は「やりすぎ」と感じてやや苦手だったのだが、同一原作の過去作品を絡めるマルチバースはこれぐらいの緩さがちょうどよかった。
ドラマ10選
完走した作品数は25本。
ガンニバル
遂に日本発の配信ドラマからもこういうバイオレントかつしっかり作り込まれた1本が。
第3話の冒頭ワンカット長回しと終盤のカーチェイス銃撃アクションは凄まじかった。
ブラッシュアップライフ
流行りのタイムリープ・タイムループをこういう形でコメディに落とし込むバカリズム脚本に脱帽。
これまでの作品からの引用要素も多く、ベスト盤・集大成のようだった。
THE LAST OF US
『ゲーム・オブ・スローンズ』が終わり『サクセッション』も終わる予定で、この先がほんの少しだけ心配だったHBOから特大ホームラン級のヒット作。
メガヒット原作×クレイグ・メイジン脚本×アート映画畑の渋い人選の監督たちという異色の座組みがバチっとハマった。
個人的好みは脚本は第3話、映像美は第6話、アクションは第5話。
キラー・ビー
『アトランタ』が昨年完結したドナルド・グローヴァーが手がけた新作。
トキシック・ファンダムをテーマとした不条理ホラー。
ちょうど自分は映画でもドラマでもお笑い番組でもファンダムから出来るだけ距離を取りたい人間なので刺さった。
ちなみにビリー・アイリッシュが本作で俳優デビューしたことでも話題だが、それだけを目当てに観ると火傷必至なのでご注意を。
BEEF/ビーフ
配信直後に序盤を観た時点では、何にも上手くいかないブラック日常系の辛い話かと思い離脱してしまっていた。
数ヶ月後に気を取り直していざ視聴再開したらコメディ要素も多いし、終盤は予想の遥か斜め上空を行く展開にw
いやぁ、ぶっ飛んでたなぁw
フェンス
野木亜紀子の新作ドラマはWOWOW放送。
有料放送ということもあってか、あまり観られてないのかも?
沖縄、米軍基地、性被害、人種差別、戦争とイシュー盛り沢山。
事件の真相はやや意外というか人によっては肩透かしと感じそうだが、米軍=悪という単純な図式に落とし込まない自戒・警鐘と読めて個人的にはむしろ好印象。
新垣結衣と松岡茉優の邂逅は短いシーンながら重かった。
アラスカ・デイリー
『スポットライト 世紀のスクープ』で2015年度のアカデミー賞を受賞したトム・マッカーシーが脚本を手がけた作品。
チーム群像劇、冤罪事件ミステリー、女性の権利、メディアのあり方、アラスカの美しい大自然。
『エルピス』『SHE SAID』の系譜に並ぶ傑作。
『エルピス ー希望、あるいは災いー』が好きだった人は是非観てほしいです。
サクセッション(メディア王)
第3話の衝撃。
第8話の批評性に溢れた政治サスペンス。
そして視聴者全員が放心状態になった最終話。
足かけ4シーズン、我々は一体何を見届けたのか?
現役世界王者が最強のまま引退。
最後の最後までずっと強かった。
テッド・ラッソ
Apple TV+でずっと気になっていたコメディ。
過去2シーズン連続でエミー賞を受賞してのファイナルシーズン。
完結に合わせて5月の1ヶ月間でマラソン。
他者をリスペクトすること・周囲に優しくあることの大切さを教えてくれる傑作でした。
キャラクターへの愛着もどんどん湧いてラストの大団円はしみじみ…
ちなみに世間的に上半期最も話題になった1本であるNetflixの『サンクチュアリ』は本作の割を食う形で10選にはもう一歩及ばす。
(十分に面白かったんですけどね)
あなたがしてくれなくても
不倫ドラマというよりは夫婦ドラマとして、ストーリーや登場人物への感情移入よりは奥行きのある画面設計や耳に残る劇伴をはじめとする演出を中心に楽しんだ。
一部で物議を醸しているらしい最終話の結末については
自分は劇中の登場人物に感情移入する見方をしていないこと
2組の夫婦および4人の主要登場人物の人間的成熟度にデフォルメ的ですらあるほど差を付けて描いていたこと
楓と誠がみちのメンターになる布石が第8話から仕込まれていたこと
といった辺りから特に気にならず(そもそもなぜ燃えてるのかあまりピンと来てない)
Netflixで宮藤官九郎と大石静が共同脚本を手がけた『離婚しようよ』は1組しか夫婦が出てこなかったこともあり(そういう話なので仕方ないのですが)対比的な描き方によるメッセージの幅は本作の長所かなと。
でもやっぱり本作は演出が変態的で(褒めてます)素晴らしかった。
ああいう風に画面手前から奥にレイヤーを重ねる形で緻密に設計された映像が地上波ドラマで観られる悦び。
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