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占いとカウンセリング。

こんにちは。臨床心理士/公認心理師/精神保健福祉士のまりぃです。

大学院を終了してまだ一桁年の若輩心理職で、臨床心理士試験・公認心理師試験のダブル受験生応援公式LINE臨床心理学専攻大学院受験・Gルート公認心理師自己研鑽専用公式LINEtwitterYouTubeの運営や,豊かに学び豊かに生きる臨床心理士のためのInstagram、最近ではSNS発信/起業のお手伝いなんかもやっています。

占い好きの美容師さん

いつも,お世話になっている美容師さんがいます。
彼女は私の職業などは知らないのですが,先日『筆跡鑑定』に行くのだ,と話してくれたところから,その美容師さんは『占い好き』であることが判明しました。

彼女は,「筆跡鑑定も統計学かもしれない」と言いつつ,私が<普段から占いに行くんですか?>と聞くと,「結構好きです,なんか生年月日とかから占うやつだったら,信じられる気がする」と言ってました。
もう少し詳しく話すうちに,彼女の思う『占い』像が分かってきました。
(*以下,美容師さんの発言を「」,私の発言を<>で表します)

占いは統計学?!

彼女いわく,水晶玉みたいな感じで,占い師さんがその場で思いついて喋ってそうなものは信じられない。
でも,生年月日などを元にするものだったら,統計学に基づいた理論がありそうなので信じられる。

でもでも,「実は」とここで彼女から衝撃の一言。
「私,双子なんですよね〜」
ふわぁ?!
「だから妹と生年月日一緒なんですよね」

そりゃそうだ。私が<まあ,占星術とかで,生まれた時間まで見るものだったら多少は違うのかも?>と言うと,「ですよね〜でも,生まれた場所まで一緒で,時間が数分とかの差だから,大体星占い系は一緒だし,四柱推命も一緒なんです」

……
<でも占いは信じられるんですか?>
「んー,占い師さんに聞いてみたら,双子は基本的に同じ運命なんだけど,現れ方が違うんだって」
……なるほど?
 思わず<うまいこと言うなぁ>と言葉が漏れました。コールドリーディングとでも言いましょうか,相手が何を言っても『自分の発言が当たった』ように見せるテクニックがあるのですが,その占い師さんはそう言う意味で相当『うまい』ようです。

 私が占いに不信感を持ったと感じたのでしょうか,彼女は「結局生年月日とかから統計をとった結果が占いだと思うんで,双子だと一緒になるんでしょうね」と続けました。

占いは責任転嫁である⁈

 彼女と話していて,私の中で『人が占いに求めるもの』のイメージが修正されました。
 それまで,私の『占い』のイメージは,『占い師の方が,相手の運命をバーンと決め込む』ためのものでした。
 例えば『AさんとBさん,どっちとお付き合いすべきか』といった悩みを持った人が,占い師に『Aさんと付き合いなさい』と決めてもらうために行くもの,という印象です。

オラクルカード


 相談者は,もしAさんとうまくいかなければ占い師のせいにすることができますし,逆に,それでもBさんと付き合ってうまくいかなければ『占いに逆らったせい』にできます。逆に,Aさんとうまくいけば「占いのおかげ』で,Bさんとうまくいけば『あなたは自分で運命を切り拓いたのです。星回り(カード)ではAさんとの方がうまく行くはずだったけれども,あなたの選択がBさんとの未来をつくりました』となります。
 このように,目の前の選択とその結果に,自分で責任を負わなくて良いようにするため,自分で決めることができない人が,超自然的な決定に従うために活用するのが占いである,そんなイメージです。

ところが美容師さんの場合は少し違うようでした。

占いは傾聴される場である⁈

 私が<ちなみに,どんなときに占いに行くんですか?>と聞くと,彼女は「悩み事があるときですね」と答えました。
 ここまでなら,上記の,私が占いに持つ印象通りの活用法に思えたのですが,私はここでもう一歩踏み込んでみました。
<悩み事があるときにカウンセリングじゃなくて占いに行くのはどうしてですか?>
 彼女はキョトンとして(びっくりさせてごめんね),そしてこう言いました。
聞いてほしいだけやから,占いでいいかなって」

 なんと,私の占いに対するイメージが根底から覆された瞬間でした。
もう少し話して分かった,彼女の『占いとカウンセリング』のイメージをまとめると,以下のようになります。

占いとカウンセリングの印象の違い

 彼女にとっては
占い=ただ黙って話を聞いてくれるところ
カウンセリング=専門家先生にアドバイスされるところ,具体的な解決方法を探すところ
だったんです。

私のnote読者の方なら,おそらく『カウンセリングはそういうところじゃない!』と言いたくなることでしょう。笑

 その印象であれば,彼女が,水晶玉みたいな『占い師の思いつきを話してそうな占い』が好きじゃない理由は,そういった占いでは『占い師の考え』=アドバイスをされるから,ということになります。逆に言うと,生年月日とか統計学とかは,実は彼女にとって瑣末なことなのかもしれません。

専門的にカウンセリングを学んだ者として考えたこと

「なんもしない公認心理師」炎上

さて,先日Twittrerで,『仕事に疲れた友人に「精神科に行ってみたら?」といったら,怒られちゃった』というつぶやきがちょっと炎上……,もとい,盛り上がりました。
そのあと,『なんもしない公認心理師』という公認心理師/作業療法士ダブルライセンスの方も炎上……もとい,盛り上がりポイントになりました。

最初の方の呟きは,心理学部の学生さんのつぶやきで,その方の精神科に対するイメージは非常にフラットであったために(風邪を引いたら病院に行くように,心が疲れたら精神科に行く)出た発言が,多くの方の『精神科』へのイメージと異なっていたために起こった炎上……ではなくて,盛り上がりだったんだと思います。
後者は興味深いですよね,元々『作業療法士』という,メチャクチャ具体的に『何かする』役割だった人が,わざわざ公認心理師を取得して『なんもしない』と宣言したわけです。

おそらく前者の持つイメージは,私たち専門家に近くて,正確ではあるけれど一般には受け入れられないもの,後者の方のブランディングは,一般の方からしたカウンセリングのイメージを意識したもので,私の担当美容師さんなどの層に相談してもらうためのものなのではないでしょうか。

我々こそがホンモノである

 やっぱり,大学院出てます,臨床心理士持ってます,というと,人はある一定のイメージを持ちます。SNSで私たちのことを検索すれば,なんだか偉い人っぽい人も大勢出てきますし,ベテラン心理士先生の開業ルームのプロフィール写真なんかはちょっと父権的なものも多いですよね。

背筋伸ばして椅子に座ってドーン!みたいな


 だから,美容師さんにとって,カウンセリングこそが『どうにかされる』場所,ちょっと怖い場所でした。逆に占いは『なんもしてこない』安全な場所でした。

 でも,それはカウンセリングの「事実」とは異なることを私たちは知っています。私たちこそが,意味ある「なんもしない」をする人で(それを公言しないにしても),多くの通信教育や専門学校,セミナー系のなんとかカウンセラー,学部卒の認定心理士や占い師の方が,テクニック的に身につけた『傾聴』とは違う,『ホンモノの傾聴』をします。
……という,『ホンモノ意識』こそが,本来クライエントで来ていただきたかった方々を遠ざけてしまっていたのかもしれません。
(ちなみに,院卒でないカウンセラーの方も,占い師の方も,頭の下がる努力をされている方は多くて,しっかり傾聴できる方も多くおられます。逆に,院卒臨床心理士でも,自己研鑽の怠りが顕著な方はもちろんおられます)

専門家によるカウンセリングは怖い

 もちろん,『お金を払って,個人的関係にない人に話してスッキリする』美容師さんは,かなり健康度の高い方ですので,わざわざカウンセリングは必要ないとも言えるでしょう。
 一方で,キラキラ起業系とか子宮系とか,その他高額セミナー,高額セッションに誘導する人たちにばかり相談して,一向に現状が改善せず,『セミナージプシー』をしている方も多くおられます。この方々こそ,私たちのカウンセリングに来て欲しい層なのですが,精神科で楽になる薬をもらうことはあってもカウンセリングには来ないのです。

なぜかって?臨床心理士のカウンセリングは『どうにかされそうで怖い』からです。偉い先生に怒られそう,『こうしなさい』と正しい道を示されそうで『怖い』んです。それよりは20万とか300万とか払って,キラキラスピリチュアルのインフルエンサーの言うことを聞いて,コミュニティに仲間を作っている方が『安心』なんです。たとえそのせいで,借金が膨れ上がっても,デジタルタトゥーが残っても,です。

今,私たちにできること

私たち臨床心理士/公認心理師は,心に健康について,研究したり啓発する義務があります。
臨床心理士は,更新制で,研修などへの参加を怠ると,更新ができず『臨床心理士』と名乗り続けることすらできません。
この事実は,一般の方はあまりご存じないでしょうし,そもそも大学院がどれだけ大変か,自分の心,人格を見つけ直し,カウンセラーとしてのあり方を学ぶことがどれだけ大変か,これはやっぱりご存じないことと思うのです。
だから,他職種からの公認心理師の方の一部の方から,大学院教育を軽んじる発言が出るのでしょうし,一般の方はカウンセリングに行きにくいのでしょう。

だからとって,『カウンセリングをもっと身近に!誰でも受けられるように!』とかそういう話でもないような気がします。映画『ターミネーター』やドラマ『メンタリスト』最近ではネトフリの『ウェンズデー』などに,当たり前のようにカウンセリングが登場しますが,そうなるにはやはり一定のイメージ,その国で専門家カウンセラーにもたれているイメージがあると思います。

例えば,体の調子が悪いときに病院に行くのは当たり前ではありますが,だからと言って私たちは医師を身近な,近所の人のように感じているかというとそうでもなく,医学部入学も,医師国家試験も相当大変あると知っています。

一方臨床心理士はどうでしょうか。どこにいるのか分からないレアキャラですし,大学も別に難しくなさそう(大学院はちょっと大変そう)くらいのイメージで,そのくせなんだか聖人君子でなければならないようなイメージキープ力の強い資格ではないでしょうか。

実はこの話にオチはありません。まだ,私は考え続けています。
臨床心理士/公認心理師というラベルが目指すところ,カウンセリング/カウンセラーという言葉が目指すところ,その言葉を特別な何かにするのか,今のまま誰でも使える名称で,誰でも名乗れるものにするのか,それは,今や多種多様な職業の方がお持ちになった,しかし名称独占である「公認心理師」資格の行く末とともに,私たち一人ひとりが考えていかなければならないことでしょう。

私も,資格試験屋さんに留まることなく,もう少し一心理職として,そして「占いみたいに怖くないよ♡」でも「ガッツリ専門家だから,来ると本気の心の作業はできるよ」両方をアピールしていく存在として,何かできることはないかと考えています。⇨こんなことを始めました(2023年2月1日追記)
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長い文章を読んでいただきありがとうございました。
なお,この文章について,ご意見などありましたら,どんどんSNSの海で引用,Rt,メンションなさってください。

公認心理師/臨床心理士
精神保健福祉士 まりぃ

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