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冷静と情熱とヘヴィ・メタルの間

みなさんは、ヘヴィ・メタルに何を求めているだろうか?

日々のストレスをスカッと発散させる爽快感。生ゴミのような日常を忘れさせてくれるファンタジーとメロディ。重い現実よりも重い全てを薙ぎ払う重戦車のリフ・アタック。思わず夜の営みまで想像してしまうウルトラ・テクニック。

どれも、ヘヴィ・メタルをヘヴィ・メタルたらしめる重要な要素だよね。最近では、メタルの多様化につれてリスナーの求めるものやアーティストの背景も千差万別になってきていて、それがまた、ヘヴィ・メタルの魅力を倍加させているような気がするね。

僕はメタルに何を求めているんだろう。もちろん、さっきあげた要素は、すべて僕を笑顔にさせてくれる。だけど、それ以上に僕はヘヴィ・メタルに情熱を求めているんだ。

でもさ、情熱、パッションって何だろうね? Don't You Know? やっぱり、SIAM SHADE だろうね?

抱き合う時ぐらい 着飾らずに 感じて欲しい
割に合わない NO リアクションじゃ 寂しすぎる
今夜こそは剥がしてやる 偽りのSHY FACE
まだ知らない 君を見せてくれ愛してるからといって 甘えてないで
You gotta 有害な愛をもっと この胸に注ぎ込んで
どうすんの? Don't you know? このままじゃ終わってまうぜ
もうちょっと悩んで Night and day
ガラスの靴は脱ぎ捨てて PASSION
嘘吐くのは 恋泥棒の始まりだから
躊躇わずに 恥らわずに 答えてくれ
不透明なその仕草も これで最後さ
刺激的な夜に溺れたい
Hey! My girl! オマエが大好きで どうしようもないです
超高級な I know 調教で"素敵ね”と絶賛のはずが
大胆に抱いたって鮪じゃ もう
しょんぼりとしちゃうぜ
もうちょっと声だして 濃いのだしてぇ
孤独な夜を砕くDeath PASSION

大名曲 "Passion" の歌詞だ。もうね、1990年代後半の良いところがすべて詰め込まれたような完璧さ。

まずね、「大胆に抱いたって鮪じゃ もうしょんぼりとしちゃうぜ
もうちょっと声だして 濃いのだしてぇ 孤独な夜を砕くDeath PASSION」

2023年が絶対に許さない歌詞だよね。2023年が仮に許したとしても、ポリティカルに正しい人たちは絶対に許さないよねえ。鮪!漢字!濃いのだしてぇ、下ネタ!パッションとは性欲と見つけたり!

あと、「You gotta 有害な どうすんの?Don't You Know?」の踏み方ね!完全にジョイマン!時代を先取ってたね!豚汁、ブラジル、あそこどう、下水道と甲乙つけがたい。加えて謎ワードも目白押し。不透明なしぐさ???恋泥棒って…最高です!!いやー、マジで滾るよね、この曲。SIAM は変拍子が多いから、歌詞の謎具合がちょうどいい。あと、日本でいえば、あの氷室京介もパッションの使い手として名を馳せているんだけど、まあ今回は SIAM もヒムロックも本題には関係ない。

メタルでパッションといえば、僕はジェフ・スコット・ソートをまず一番に思い浮かべる。なんかねー、ジェフの歌を聴いていると、胸を鷲掴みにされて揺さぶられるような、そうして大声で叫び出したくなるような、なんとも言えない衝動にかられるんだ。CDを聴いているのに、ライブを見ているような感覚。

TALISMAN の "Tears in the Sky"。あの最終盤の煽りとか、腹筋500回はイケる。TAKARA の "December"。あの哀激情で背筋500回はイケる。Axel Rudi Pell の "Gettin' Dangerous" で濃いいのを500回は出せる。ちなみに、ここで聴けるアクセルのギターソロも実に情熱的で "危険" だ。

ジェフの歌って、CDでも全然 "正しい" 歌メロをなぞらないんだよね。もともとファンクが根底にある人だから、自分でインプロヴァイズして、一番、二番、三番をちょっとずつ変えていくんだよ。だんだんと、もっともっと、煽情的に、リズミカルになるようにね。だから、情熱が伝わるし、何度でも聴けるし、何度でもイクイクパンパンしてしまう。こういうことをやる人が、本当に少なくなったよねえ。

情熱といえば、音楽だけじゃなくて、やっぱり自分たちの思いの丈を伝えたいという部分もあるだろうね。で、ここからが本題なんだけど、ELEGANT WEAPONS のデビュー曲が実に素晴らしい!

エレガント・ウェポンズ。もうね、エレガントという単語のチョイスからして情熱的だよね。エレガントをこう、バーン!!と前面に押し出してきたのはアル・ディ・メオラのエレガント・ジプシー以来じゃないかな。

JUDAS PRIEST のリッチー・フォークナー、スコット・トラヴィス、PANTERA のレックス・ブラウン、そして RAINBOW や MSG のロニー・ロメオが結成したまさにゴージャスでエレガントな面子なんだけど、そもそもこのバンド、"やる必要がない" んだよね。

だってそうでしょ?みんなビッグ・バンドに所属していて、サラリーも大きいだろうし、ツアーだって大忙し。わざわざ、ご多忙の中このバンドをやらなくても、お金も名声も十分なわけだよ。濃いいのだって出し放題なわけだよ。知らんけど。でもやる。なぜか。それはきっと、そこに "情熱" があるから。

リッチーはこのバンドを結成するにあたって、こんなことを言っている。

「JUDAS PRIEST 以外のスコット・トラヴィスが聴きたかった」

これねー、すごくわかるんだよね。"Painkiller" のドラムサウンドに、もっといえば、RACER X の "Sacrifice" のオープニングに衝撃を受けた僕のような粗ちんにとって、スコットは神だし、もっともっと色んなスコットを聴きたいんだよ。

まあ、これはリッチーにも言えることで、2人がどれだけ才能に恵まれていようとも、結局 JUDAS PRIEST はロブとイアンとグレンの乗り物で、主役は彼らだから。

ロニーにしたって、RAINBOW や MSG で主役なわけじゃない。ネットで、ポッと出が調子にのるなみたいなことを書かれまくって自殺まで考えたってこの間話していたからね。

レックスにしても、PANTERA はやっぱりアボット兄弟だとみんな思っているし、今回の再結成だっていろいろと言われたわけじゃない。

つまりね、ELEGANT WEAPONS って、脇役が集まって、俺たちの本気を見せてやる!ってバンドなんだよねえ。パッションがあるじゃない?濃いいストーリーがあるじゃない?これぞ、メタルの "反発力" じゃない?

いやー、新曲、カッコいいよ。なんか、僕もちょっとロニーをナメていたんだけど、素晴らしいね。先日、DEEP PURPLE の "Battle Rages On" をカバーしていた時からずっとロニーには Say Ya! 正座で全裸謝罪を続けているんだけど、メロディのセンスと微妙な節回しがずば抜けているよね。

リッチーのトーンの美しさは今更言うまでもないけど、スコットがやりたいようにやっているのは、本当に久しぶりでこちらまで笑顔が溢れてくる。鳴りが違うよね。やっぱり、ヘヴィ・メタルは1/3の情熱じゃ、ワクワクしないんだ。脇役たちの下克上、最高じゃないか!(スコットとレックスはライブは参加しないみたいだけど)

関係ないけど、今週は幻のバンド DAATH が復活して13年ぶりの一撃をお見舞いしたし、VANDENBERG にマッツ・レヴィンが入って初めてのシングルも出た。やっぱり、実力に見合う評価を得られていないというか、裏街道を歩いて来た人たちだから、全部パッションが詰まっているよ。「人生めちゃくちゃにしてやる!」じゃないんよ。言われるまでもなく僕の人生はずっとめちゃくちゃだ。職場で射精ソムリエなどとカルトのように崇拝されだしたら人生終わりだ。ありがとう、オリゴ糖。ぜひ、チェックしてみてほしい!


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