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まるいの家族エッセイ

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まるいるいの、父親をはじめとした家族の話です。
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#父

父との徒然なる思いで【家族エッセイ】

父との徒然なる思いで【家族エッセイ】

父がセルフで髪を染めた日。
幼い頃の私は父と共に風呂に入った。
横並びになって頭を洗っていると、父がシャワー水栓の上に黒いモコモコの泡をいくつか並べていた。父の行動の意図を知る由もなかった私はそのモコモコを無慈悲にシャワーでザッと洗い流した。

「あっ!!!色の違いを見てたのに!!」

どうやら父は髪を数回洗うことで、染め粉混じりの黒い泡が白に近づいていく様子を面白がっていたらしい。
そんなことと

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親の期待に応えられない【家族エッセイ】

親の期待に応えられない【家族エッセイ】

私は自分のことを大切に思うし、大好きだ。
それは両親が幼い頃から私という存在を認めてくれて、愛を注いで育ててくれたからだ。
私は自己肯定感が高い方だと思う。しかし、承認欲求も強いのだ。
その理由は私に成功体験がないからだ。親の期待に応えられた例がないからだ。

私は小学一年生の頃から中学三年生までバスケットボールをやっていた。それなのに金メダルやトロフィーを獲ったことは一度たりともない。

父は私

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母を泣かせた日【家族エッセイ】

母を泣かせた日【家族エッセイ】

人生で一度だけ、母を泣かせてしまったことがある。私が年長の頃だ。
兄と共に悪さをして叱られたのだが、叱られてる最中に私たちがケラケラ笑っていたら母が泣いてしまった。なぜ叱られたのかも、その前後のことも何も覚えていないのに、母を泣かせてしまったという事実だけは20年経っても覚えている。

小学校に上がるまで、母の口から「お父さんに電話するよ。」という台詞をよく聞いていた。父の帰りが遅い日は好き勝手が

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父と陰【家族エッセイ】

父と陰【家族エッセイ】

私には物凄く陰口を言っていた時期がある。中学生の頃だ。
今現在も言う時は言うがあの頃は比ではなかった。
私は小学5年生の頃から毎日日記をつけているのだが、中学校に入った途端に愚痴っぽさが顕著に現れている。
その原因は部活動にあった。私の進学した中学校のバスケ部には3年生は一人もおらず、2年生だけだった。その中に経験者は3人しかいなかったので小学生の頃からバスケを習っていた私と幼馴染は入学して早々、

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父の涙【家族エッセイ】

父の涙【家族エッセイ】

私の10歳の誕生日に、我が家にうさぎがやってきた。そのうさぎは灰色でもぐらみたいだからと父に「もぐたん」と名付けられた。

長年、犬を飼いたいと里親募集のページを印刷して提出し続ける私と頑なに却下し続ける母とのやりとりを見ていた父が、折衷案として連れて来てくれたのがもぐたんだった。

もぐたんはホーランドロップのメス。ホーランドロップの性格をネットで調べると、「人懐っこく愛嬌がある。活発で好奇心旺

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父と痛み【家族エッセイ】

父と痛み【家族エッセイ】

私の父は異様に痛みに強い。
痛みの感じ方は人それぞれなので、強い弱いの比較が難しいが、それにしても父は異様に強い。

父は若い頃、群発頭痛を発症した。この頭痛は別名「自殺頭痛」と呼ばれており、その痛みのあまり自ら命を絶ってしまう患者もいるそうだ。
私が小学校高学年になる頃まで毎年、決まった季節に父はこの頭痛に襲われていた。その季節が来ると父は夕飯の時間にはベッドに入って時が過ぎるのを待っていた。あ

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父のすごいところ【家族エッセイ】

父のすごいところ【家族エッセイ】

父の、異様に機械に強いところが尊敬するポイントの一つだ。
PCも、ヘアアイロンも、ゲーム機も、何か不具合があった時は父のところへ持って行くとすぐに直してくれた。

小学校1年生の頃、父と近所のおもちゃ屋に行った。
そこにはお猿のおもちゃが500円で売っていた。電池を入れると動く仕組みになっているのに、やけに安く売っているなと思ったらどうやら不良品で動かないため大特価で叩き売っているらしい。
私はそ

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父との切ない思い出【家族エッセイ】

父との切ない思い出【家族エッセイ】

私は6歳の頃、七五三に向けて髪を伸ばしていた。
幼稚園の日は、母が髪を結ってくれた。母は髪を結ぶのが得意ではなかったと言うが、写真に映る私はいつも可愛らしい髪型をさせてもらっていたと思う。

その日は休日。父と二人で出掛けることになった。
「今日はお父さんが髪を結ぶよ。」
私の記憶の中では父に髪を結ってもらったのはその日が初めてだった気がする。
どのくらい時間が掛かっただろう。母がやってくれるより

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父の酒癖【家族エッセイ】

父の酒癖【家族エッセイ】

うちの父の最大の欠点は酒癖である。
休肝日など1日たりとも存在しない。休日は昼間から飲む時もある。

父は今までに酒による悪事を何度もしでかしてきた。

父は飲酒によって気が大きくなったり、怒鳴ったり、暴れたりするタイプではないのがまだ救いなのだが、如何せん自損事故が多すぎるのだ。

私が高校3年生の頃のクリスマスの日。父は会社の部下と飲みに行ったので、母と2人で寿司をとって静かな夜を過ごしていた

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初めての彼と父ちゃん【家族エッセイ】

初めての彼と父ちゃん【家族エッセイ】

「そんな話お父さんにしたら可哀想だよ。」
と、娘を持つ男性に言われたことがある。

「そんな話」というのは所謂‘‘恋バナ’’だ。
私はよく父に恋愛話をする。
自分より人生経験が豊富で、尚且つ私のことを良く知る異性、こんなに都合の良い相手が他にいるだろうか。

私が初めて異性と交際の約束を交わしたのは高校2年生、16歳の頃だ。
彼とは1年生の頃同じクラスだった。バスケ部の彼にマネージャーにならないか

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父が居なくなった日【家族エッセイ】

父が居なくなった日【家族エッセイ】

2022年6月。
目の不調が気になり眼科に行くと、網膜剥離と診断され手術を受ける事になった。
目薬で治せるくらいの軽いものだと思っていたので医師から「このままじゃ失明するから1週間後には手術を受けて」と告げられた時の衝撃は大きかった。

実は異変はその年の1月頃から感じ始めていた。
しかしその時は横になってスマホを眺めている時のみに異変が起こる状態だった為、あまり問題視していなかった。
それが数ヶ

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父のお弁当【家族エッセイ】

父のお弁当【家族エッセイ】

私の家には、高校生になったら自分の弁当は自分で作るというルールがあった。
それは母の、「大人になって料理が出来ないと困るから」という意図の下に施行された。

高校に上がってからの最初の1年間は毎日自分で作っていた。
「作った」といっても母が炊いておいてくれたご飯と、母が買っておいてくれた冷凍食品を詰めるだけ。

これが何の意味も成さなかった事は現在の私の家事力が物語っている。

実はこのルール、姉

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