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この歳にもなってみっともないって誰が決めたの?

「この歳で職場で泣くのはみっともない」

「でもそれってだれが決めたんですかね?」

はっとする。

まぎれもない自分自身だった。

事務室で嫌な気持ちになって耐えられないときはトイレに逃げ込み静かに声を殺して泣く。それがどうやら社会人のマナーらしい。


「仕事中事務室で泣くのは最低の行為だよ。」

社会人2年目のころ同期から言われたことがずっと呪いのように残っている。みんな心配するからね、女の武器を使ってって思われるからね。って

だよね、って同意する。

そのころから涙がこぼれる前に急いでその場を去ることと、トイレで声を出さないで泣くこと、すぐに涙を止めることがうまくなっていった気がする。


でもうまくなればなるほど、感受性が死んだ。大人の出来上がりだった。


事務室で何もなかったかのように目を腫らして笑顔で戻る。自分の感情に嘘をつくことを重ねて重ねて。何層にもミルフィーユ状になっているのが今の私。


「でもそれって誰が決めたんですかね」

昼休み女子休憩室。

同い年の別部署の方がお弁当を食べながら呟く。


「泣いてもいいんですよ、辛かったら。いくつになっても」


だめだなんて、自分のプライドと、体裁が決めただけだった。


感受性は大事なものだったのに。

好き、嫌い、素敵、イライラする、感動する。


心を震わせる。


可愛いワンピースも、ぬいぐるみも、大きい声で女友達とはしゃぐことも、あの時置いてきたものたちは本当に置いてきてよかったの?


大事な感受性をころしたくない。まだたくさん心を震わせたい。


もし職場に復帰することができたら、辛いとき我慢しないで声出して泣いてやろうと思う。


おわり。

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