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【音楽連載】旅する輪ちゃんドタバタ劇場 vol.4|音楽と文:輪(りん)@石垣島|「みち」

ひさしぶりのギターを持っての海外、ちょっと長旅(1ヶ月)。
那覇でライブをしてから、香港、バンコクと経由してタイの古都チェンマイへ。

良いライブが出来た後というのは、色々浄化されちゃうようで、飛行機整備の人が手を振ってくれるのを見るだけでも涙が出るもんだ。
「あなたがいるから私は飛行機に乗って旅に出られるよ、ありがとう」

今回のメインイベントはチェンマイの更に北、チェンダオという村で行なわれる日本人主催の音楽フェスへの出演。10日間のキャンプイン。タイと言えども夜は結構冷え、借りたヨガマット、寝袋、ブランケットで暖を取った。

日本人が始めたけれど、今は欧米人が大半で、たまにいるアジア人は日本?韓国?中国?タイ?見分けがつかない。

このフェスに来るのは10年ぶりだった。
実は大変もじもじであんまり楽しめなかったあの頃。10年どころか、つい最近、うじうじ輪ちゃんの汚名を晴らしたばかりなのだ。

40歳すぎてようやく、本当にやりたいことをやろうと決め、やり始めたら、人のことを羨ましいと思わなくなって、人の目も気にならなくなった。そうしたらどこにいても、誰といても、大勢の中にひとりでも、いつでも楽しくなってしまった。

あの頃、苦手意識があったのは、みんな競う合うようにオシャレして、人ばかり良く見えたから。
今、自分がオシャレになったわけでもなく、見た目は変わらずダサいままだけど(笑)、大丈夫。

色んな人がいて(文字通り国籍も人種も色々)、みんなそれぞれで、そのままで良くて。

ひとりでいても、みんなでいてもいい。
ひとりでいても寂しそうと思われない、そんな場所だった。

10日間の一番最後の日が私の出番だった。
緊張が日々募っていった本番の時。

客席(席って言ってもゴザだけど)には知ってる顔がちらほらと見えた。
毎朝温泉で一緒になる台湾人女性、一緒にセッションしたドラマーだというアメリカ人の男の子、去年知り合った中国人シンガーの女の子、なんとなく顔見知りになった日本人の人たち。そして10年前に私のオリジナル曲のタイ語訳をしてくれたタイ人ミュージシャン。
みんなちゃんと時間を覚えててくれて見に来てくれたんだ。

今回、一番のネックだったのが、英語でのトーク。
別にしてもしなくても自由だけど、やっぱり自分のストーリーを伝えたかった。英語の出来る人に教えてもらおうかとも考えたけど、歌うのも話すのも心からやれば伝わると思った。とてもブロークンだったと思う。

伝えたかったこと、
「実は10年前にもここに来たんだけど、その時はナーバスで歌えなかった。なので今日ここで歌えてとても嬉しい。旅することが私を変えてくれた。歌うことが私をここまで連れて来てくれて、みんなと会うことが出来た。ありがとう」

色んな国の人たちがいて、それぞれの表現をしている。それをちゃんと受け止めてくれ、楽しんでくれる人たちがいる。そんな様子を見ているだけで涙が出る。そしてここにいるみんながみんな、きっとそう思っている、と確かに思える、そんな場所だった。

今回、ひとりで来るのはちょっと迷ったけど、来て良かった。航空券取ったり宿を予約したり、準備の段階はなかなか面倒だけど、一歩踏み出してしまえば、あとは流されるのみ。歌にたくさん助けられたし、過去の自分にありがとうと言いたくなるような、嬉しい再会がたくさん。変わらず、目の前の人と真摯にかかわっていきたい。

旅は人生にたとえられる。

旅にも始まりと終わりがあって、その限られた日程の中で会える人、会えない人、少しの時間差、選ぶ道で見える世界はまったく違ってくる。

いくつもの条件が重なり合って目の前に現れる現実が、私にとって最善のものであると思えた。
前より少しだけ、胸を張って生きていられているようになったみたい、
ありがとう。

カンボジア・シアヌークビルの空の下より。

みち

歌いたてホヤホヤ?の輪さん映像です!「たまたま知り合ったタイ人男性が撮ってくれていました」とのこと。すごい!!(by 編集部)


この記事を書いた人

旅する輪(りん)ちゃん
神奈川県出身。東南アジア、インド、ヨーロッパの旅の末、沖縄県石垣島に流れ着く。自分自身と世界に「こんにちは」を言うために。旅、ふるさと、身近な自然と内なる自然をテーマにしたオリジナル曲の他、金子みすゞや谷川俊太郎の詩に曲を付けたり、色んな国の歌を歌う。各種音楽配信サービスで、石垣島でレコーディングした2ndアルバム『渡り鳥のうた』が聴けます。2022年から自宅ガレージを改装したお店「なずな文庫」で自分にちょうどいい働き方を模索しながら、「楽しい」「わくわく」「大好き」をひそかに発信しています。


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