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【自伝小説】最南端の空手フリムン伝説

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フリムンという言葉は沖縄の方言で、バカ・愚か者という意味で使われる。この物語は、日本最南端の石垣島に生まれ、後に全日本空手道選手権大会を制する田福雄市氏の空手人生、そしてフリムン…
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【自伝小説】第2話 小学校時代(3) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第2話 小学校時代(3) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

未来少年

その頃の石垣島にはまだ民放はなく、テレビ放送はNHKのみ。更に少年が5年生になるまでアニメ放送は皆無で、子ども向けに放送されていたのは人形劇のみであった。

その日、石垣島に激震が走った。遂にお茶の間でアニメが見られる日が来たのだ。

子どもたちは飛び上がって歓喜し、「ビートルズがやってきたYAYAYA」どころの騒ぎではなかった。

そんな記念すべきアニメ放送の第一弾は、未だ根強いファ

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【自伝小説】第3話 中学校時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(2) |最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

ドラゴンロード

あの時代は、全国的に校内暴力が蔓延り、日常的に不良少年が我が物顔で跋扈していた時代であった。

例外に漏れず、この島でもビーバップワールドが広がっていた。

少しばかり郊外に行けば、必ず金銭を巻き上げられるのが常であった。

そんな中でも、群を抜いて暴君が蔓延る地区があった。

通称「七町内」である。

そこは泣く子も更に泣き出す悪夢のような地区だった。

ちなみにそこを通過する

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【自伝小説】第3話 中学校時代(3)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(3)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

実戦の定義いきなり始まった代表戦。二人を取り囲んだ敵側の仲間が、少年にのみ次々と罵声を浴びせてきた。

これ以上の恐怖は他にない。しかし、何もしなければフルボッコは確実だ。

少年は仕方なくジークンドー(李小龍が考案した武術)のサイドキック(足刀横蹴り)を繰り出した。

だが、いつもよりスピード、タイミング、角度までもがイマイチだ。

足がすくんでいるのだから当然だ。

直後、その空手野郎が「フシ

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【自伝小説】第3話 中学校時代(4)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第3話 中学校時代(4)最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

警察故事「オワタ」
「完全にオワタ」

少年は心の中でそう呟きながら、人生初となるパトカーの後部座席に身を委ねた。

そして、署でおまわりさんにこっぴどく叱られた後、保護者に連絡を取るため自宅の電話番号を聞き出された。

時計の針は既に深夜を指していたが、寝ているはずの祖母の事を思いながら、泣く泣く電話番号をおまわりさんに告げた。

それから僅か数分後の事であった。

「いや…あの……」「〇×▼※

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【自伝小説】第4話 高校編(1)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第4話 高校編(1)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

FIRST LOVE(初恋)

何だかんだあった中学校生活(あり過ぎやっ)、

入試直前に「深夜徘徊」と「無免許運転」で補導されたにも関わらず、奇跡的に県立Y高に入学する事ができたのは、これが初犯であった事と、先生方へのウケが良かった事などが上げられよう。

昔からよくトラブルに巻き込まれてはいたものの、平和主義で揉め事が嫌いだった少年。それを先生方はキチンと見抜いてくれていたのだ。

ただ、そん

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【目撃談】実録 |新聞沙汰となった「マミドーマ事件」関係者の証言|by フリムン同級生@石垣島

【目撃談】実録 |新聞沙汰となった「マミドーマ事件」関係者の証言|by フリムン同級生@石垣島

この記事では、約45年ほど前、沖縄県石垣市内のN中学校生徒(石垣第N中であろうと思われる)が、天敵のI中学校の生徒(石垣市立I垣中であると推察される)に集団で殴り込みを掛けたという、通称「マミドーマ事件」についての目撃証言を公開した。この事件は全国的に新聞報道されたという。(詳しくはこちらをご覧ください)

【同級生Tさんの証言】

同級生T:
一生忘れられない全国的に報道された事件にふれちゃたわ

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【自伝小説】第4話 高校編(2)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第4話 高校編(2)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

ケンカ空手
部活を辞め、町道場に通う決意をした少年。

退部した後も、顧問の先生から執拗に戻るよう説得されるも、意固地な少年の心が揺らぐことはなかった。

これが少年の良いところでもあり、悪いところでもあった。

しかし、この一本気な性格のお陰で、俗に言うミラクルを何度も引き起こすのだから、それはそれで良かったのだろう。

ただ、それもまだまだ先の話しである。

それから暫くして、知人の紹介で極真

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【自伝小説】第4話 高校編(3)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第4話 高校編(3)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

魔法の言葉極真ルールでは反則となる投げ技によって、かなりのダメージを負ったフリムンだったが、痛みよりも感動の方が遥かに上回っていた。

それは男に掛けられた言葉にではなく、自分のような相手に本気を出してくれた事。そして形振り構わず「投げ技」まで繰り出してくれた事。

その事に対し感動を覚えていたのだ。

そう、県内トップクラスの実戦空手家に、彼は本気を出させた事になるからである。

「俺は…確実に

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【自伝小説】第4話 高校編(4)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

【自伝小説】第4話 高校編(4)|最南端の空手フリムン伝説|著:田福雄市@石垣島

虹とスニーカーの頃強さに憧れるが余り、これまでファッションには殆ど興味の無かったフリムンだったが、イキりだした頃から少しずつヤンチャなファッションに傾倒していった。

開襟シャツやツータックのボンタン。それと先の尖った革靴が欲しくて堪らなかったフリムン。

バイトの新聞配達も辞め、遊び呆けてばかりで金欠だった彼は、程なく知り合いから「お下がり」を「おねだり」するようになっていった。

そうして何と

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