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発達障害の治療とは?~発達障害と診断された人のための発達障害の説明書4~

一緒につくるマガジン

この度、【「発達障害」と診断された人のための発達障害の説明書】と題して、マガジンの作成を始めた。

このマガジンは、『一緒に作るマガジン』という設定にしている。

「受け身ではない、主体的な学びの機会を作りたい」
という思いからの『一緒に作るマガジン』。

マガジンの作成に読者が参加してもらうことで、きっと、受け身ではない、主体的な学びの機会が作れる。

このマガジンで扱う内容は、「今まで誰も言ったことのないことを言う」とか、「段違いにわかりやすい」とか、そんなことはおそらくないのだけれど、参加型で、一緒に作っていくという点だけは、チャレンジングで価値ある試みであるように感じている。

たとえば、もし何か質問が出たら、次回はその質問について取りあげた記事を書きたいし、もし発達障害について書いた記事を紹介していただけたら、次回はそれについて一緒に考えたい。

そんな風に、発達障害のことについて一緒に考え、理解を深めていきたい。

そんな風にして行う皆さんとのやりとりこそ、リアルな「発達障害」の説明書になり得ると考えている。

「発達障害」の説明書、よかったら、一緒に作りましょう。

前回の続き

DSM-5の診断基準は、たとえば発達障害のひとつ自閉スペクトラム症(ASD)であれば以下のようになっている。

以下のA、B、C、Dを満たすこと
A:社会的コミュニケーション及び相互関係における持続的障害
B:限定された反復する様式の行動、興味、活動
C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになる物もある
D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている

ここで注目してもらいたいのはDの記述。

D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている

その他の発達障害の診断基準においても、このDに似たような記述がある。

発達障害の治療では、ASDでいう診断基準Dの状態、いわゆる不適応の状態にしないようにすること、そして、二次障害(うつや身体の不調)を引き起こさないようにすることが大きな目的となる。

つまり、発達障害の治療で目指すことは、『発達障害の人を、発達特性を持った元気な人にする』ということである。

今回も引き続き、発達障害の治療について考えてみたいと思う。

発達障害の治療はどのように進む?

大人と子どもで少し、治療のプロセスが違ってきたりもするが、最終的に目指すところは同じである。

大人の発達障害の治療においては、おおむね以下のようなプロセスを踏んでいく。

 自分の発達特性を理解する。
 自分の発達特性が、生活に活かせそうであれば活かす。
 自分の発達特性が、自分や周囲の困りに関わるものであれば、対策を考える。
 1~3に取り組む中で、不適応の状態から抜け出し、発達特性を持った元気な人になる。

子どもの場合もおおむね大人とおなじようなプロセスが目指されるが、そこに支援者や親が関わってくる。

 親や支援者が子どもの発達特性を理解する。
 子どもの発達特性が、生活に活かせそうであれば活かす。
 子どもの発達特性が、子どもや周囲の困りごとにかかわるものであれば、対策を考える。
 1~3に取り組む中で、子どもが不適応の状態から抜け出し、発達特性を持った元気な子どもになる。
 1~4に取り組む中で、親や支援者が理解したことを子どもに返し、子どもが自分で自分のことを理解できるようにしていく。

子どもの場合はまず最初に親や支援者が子どもを理解するというフェーズが設けられ、そして最後に子どもに理解できたことを返すというフェーズが設けられるということである。

どちらにも共通するのは、自分で自分の発達特性を理解し、自分の発達特性とともに元気に生活していくことを目指すということである。

したがって、支援者としては、発達障害の人が、自分のことを理解できるようなお手伝いをしていくということになる。


自分で自分を理解するための方法、それは、別になんでも構わない。

文章が得意な人は文章を書くことで自分を理解できればいいし、絵を描くことが得意な人は絵を描いて自分を理解できればいい。
親や友達と話をすることで自分を理解できる人もいるかもしれない。

どのような方法であれば、自分で自分を理解できるのか。

それを探ることがもう、自分を理解しようとすることにつながっている。

noteでは、文章を書くことで自分自身の理解を深めている人が多い印象であるが、それも素晴らしい方法だと思う。

別マガジンで箱庭療法についての記事をまとめているが、箱庭療法も自分を理解するためのツールとしては優れていると思う。

興味のある方は是非どうぞ。

要は、自分で自分を理解して元気に生活できればいいということ。

自分で自分を理解して、元気に生活する ≒ 二次障害を引き起こさない

『自分で自分を理解して、元気に生活していくことを目指す』
これは発達障害があろうがなかろうが、人間が生きていく上で価値あることに変わりはない。

では、発達特性を持つ人とそうでない人では何が違うのかということであるが、発達特性を持つ人は、そうでない人と比べて、二次障害(うつや身体の不調)を起こしやすいと言われている。

前回の記事でも述べたが、「普通」の人が生きやすいように作られた社会で、発達特性を活かしながら元気に生きていくことは、困難なこともあったり、コツがいったりするものである。

なんとか自分で自分を理解しようとするけれども、なかなかうまくいかなかったり、自分を理解することはできたけれども、それをどう生活に活かしていいかわからなかったり、ということが、発達特性を持つ人には起こりやすかったりする。

そうして不適応や二次障害に至ってしまうことがあるのである。

専門家の力を利用する

現在の社会で、発達特性を活かしながら元気に生きていくにはコツがいるということ。

専門家の力を利用する意味はここにある。

発達特性を持つ人、といっても一人一人異なるし、同じ診断名でも一人一人の個性はまったく異なる。

ただ、専門家は、どうすれば上手くいきやすいかということを知っている。

これまでの歴史や研究の蓄積から、発達特性をどのように生活に活かしていけばいいのかというネタを、専門家はたくさん持っているということである。

その中から、それぞれが自分に合いそうなネタを選び取って実践してみる。

そんな風に専門家を利用してみると、何か元気に生きるためのヒントが得られるかもしれない。

カウンセリングの専門家ができること

また、カウンセリングの専門家は、発達障害の人が自分で自分を理解するためのお手伝いができる。
カウンセラーは、大したネタは持っていないかもしれないが、話を聴くプロではある。

自分一人で、自分のことを理解するというのは大変な作業である。

自分は自分のことを客観的に見ることができないし、一人で自分に向き合うのは孤独な作業になるからである。

しかし、カウンセリングでカウンセラーに自分の考えを話すことによって、自分というものが明確になり、客観的な視点も得られる。
それは、自分で自分を理解するための近道になり得る。

そのように、専門家の力を利用したりもしながら、自分で自分を理解する。

利用できるものは利用しながら、『自分で自分を理解して、元気に生活していくことを目指す』こと。

それが、発達障害の治療であると私は考えている。

次回予告(仮)

次回から、発達障害に含まれる疾患を個別に取り上げて、その特徴を見ていきたいと思う。

最初は、自閉スペクトラム症(ASD)について取り上げたいと思うが、ある数名の読者の方が、本マガジンでご自身の記事を紹介しても良いと言ってくださったので、そちらの紹介と私が感じたことなどについても併せてまとめてみたいと思う。

それぞれの方の体験はすごく個別的なもので、皆に共通するものではないかもしれない。

ただ、本来、それぞれの方の個性や生き方というのは「発達障害」とひとくくりにできるものではない。

それでも、いろんな個が集まることで、「発達障害」のことを、偏見なく、リアルにイメージできるような、そんな「発達障害」の説明書を皆で作れたらいいなと思っている。

『自分で自分を理解して、元気に生活していく』

そのリアルな実践に触れさせていただきながら、考えを深めていければと思う。

よろしければ、お付き合いいただけると嬉しいです。

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