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【カラオケで出会う】シリーズ

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カラオケ大好き歌太郎の掌編小説集。好きな歌の歌詞から、勝手に空想を広げて書いてます。
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【カラオケで出会う#4】斉藤和義:ずっと好きだった

【カラオケで出会う#4】斉藤和義:ずっと好きだった

歌太郎は、カラオケが大好き。
今日は新宿のカラオケに行く。それも一人カラオケだ。
歌太郎は、一人カラオケをする時は、中央線に乗って地元を飛び出し、新宿にいく。安くない交通費がかかるのに、なぜそんなことをするのか。その問いに歌太郎もうまく答えられない。強いて言うなら、それによって彼の気持ちが引き締まるし、カラオケで歌うという行為が一連の儀式というか、参拝というか、なにか神秘的な意味をもつような気がす

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【カラオケで出会う#3】菅田将暉:まちがいさがし

【カラオケで出会う#3】菅田将暉:まちがいさがし

歌太郎は今日もカラオケでバイト。
最寄り駅から徒歩5分強で、お勤め先にたどり着く。

今日の授業は午前中にすべて終わる時間割だったので、歌太郎はお昼を軽くすました後、すぐにカラオケに向かった。着いた時は、13時45分くらいであった。

「お疲れさまです」
歌太郎は裏方に回って、先輩たちに挨拶した。

「おお」というそっけない返事がまばらに返ってきた。

「歌太郎、お疲れ」
無愛想な返事の内に、ひと

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【カラオケで出会う#2】ヨルシカ:ただ君に晴れ

【カラオケで出会う#2】ヨルシカ:ただ君に晴れ

歌太郎はカラオケ大好きの大学生。
気がつくと、彼はカラオケで歌うことに飽き足らず、カラオケでのバイトをするようになった。彼は歌を歌うという行為というよりも、カラオケという空間に属することを好んでいるようであった。

パチパチパチ

歌太郎がトイレ掃除をしていると、電球が消えゆく魂のように点滅した。どうやら、電球の寿命が来たようだ。

パチパチパチッ

点滅するごとに、周囲に一瞬の暗闇が訪れ、すぐに

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【カラオケで出会う#1】ゆず:栄光の架橋

【カラオケで出会う#1】ゆず:栄光の架橋

カラオケ大好き歌太郎(うたたろう)は、好きが高じてカラオケでバイトをしている。最寄り駅の北口前にある円状のバス乗り場を脇にそれたところに居酒屋が並んだ通りがあって、歌太郎が勤めているカラオケはその通りを5分ごど歩いた先にあった。歌太郎がそこでバイトをはじめてから早半年が過ぎようとしていた。

「いらっしゃいませ」

一人のご老人が来店された。時間は昼間の3時。ご老人は背丈は高くなかったが、薄いブラ

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