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かくかくしかじか。

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エッセイ的なお話たちです。
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#日常

なるほど、そうか

なるほど、そうか

頭の上から、何かが落ちてきた。
それはつむじにフワリと着地したかと思えば、脳内いっぱいに広がる。

「なるほど、そうか」
口からこぼれ落ちたその一言は、確かな感触をもって空中に漂ったかと思うと、次の瞬間には綿あめのような淡い甘さとなって消えていく。

僕はメモを取り出す。
まだ、間に合う。まだその尻尾を舌先にとらえている。
こういうのはスピードが命なのだ。
僕はそいつの尻尾をペン先に引っ掛けて、紙

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歯が痛い

歯が痛い

コンコンコン

虫歯が歯茎にノックする

ズキズキズキ

そのたびに歯に痛みが広がっていく。

ああ、痛い。
虫歯の千本ノックに律儀な執念を感じつつ、
こんな状況になってしまった怠惰な自分に諦念を抱く。

ああ、痛い。
《歯が痛くない》、その状態がすなわち幸せの一部だったのだ。

いったり、きたり。

いったり、きたり。

いったり、きたりの往復作業。

なにが変わったのか、どうやって変わったのか、確認するよりも先に刻々と移り変わる日々と環境とめぐる季節。

摩耗して、もうダメだって思っても、また願望、野望、羨望が次から次に。

なにわともあれ結局は、いったり、きたりの往復作業。

「え、もう米が無くなったの?」にまつわる《時間概念》

「え、もう米が無くなったの?」にまつわる《時間概念》

「一ヶ月前」と聞くと、僕は遠いはるか昔のことのように感じる。
ちょっと大げさに言ったが、そんな気がするのだ。

しかし、昨日のことだ。

いつものようにご飯をたこうとすると、
この前買ったばかりの「お米5キロ」が、ほとんど無くなりかけていた。

「え、もう米が無くなったの?」
その事実に、僕はささやかながら驚愕した。
米がないということは、自炊をするものすべてにとって(いや、少なくとも僕にとって)

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僕のホクロをスイッチみたいに押すなって。

僕のホクロをスイッチみたいに押すなって。

僕の首の後ろには、ホクロがある。
それに気づいた友人たちは、「やる気スイッチ」と言ってポチッと押していく。
僕は押されるたびにイライラし、諸々の「やる気」が削がれていく。

押したくなる気を起こさせるホクロ。
押される側の気力を奪うホクロ。

押されるまで知らなかった、そんな魅力をふりまくホクロのことを。
押されるまで知る由もなかった、このなんとも言えぬ不快感のことを。

でも今になって、
これこ

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