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ふわふわ会計(番外編)『美しい決算書ってどんな決算書?』

顧問先様からの質問

前々回で下のような記事を書きました。読んで下さった顧問先様からこんな質問をいただきました。

記事の抜粋:「丁寧に作成された美しい決算書は、ステキだな」

質問:「『決算書』の美しさって何のことですか」



会計ソフトと決算書

ほとんどの決算書は、会計ソフトから出力されることが一般的ですね。

決算書が会計ソフトから出力されると考えると、
「決算書の形式は、会計ソフト側の仕様で自動的に決まってくる」と
考えることが自然なことです。

会計ソフトを利用する側での「決算書の様式や体裁を決める裁量」は少ないと考えられます。

このように考えますと、
同じ会計ソフトを使えば、誰が作っても決算書は同じように出来上がるので、「美しさ」という視点で差は出ないと思われます。

会計ソフトによる違い

市販の会計ソフトはとてもたくさんの種類があります。
またクラウドサービスとして提供しているものも多いですね。

今回の記事は、
「○○という会計ソフトを使いましょう」
「この会計ソフトならキレイに出力されます」
という話では決してありません。

うちの事務所では、顧問先様に合わせて、複数の会計ソフトを使用しています。複数の会計ソフトを使用する会計事務所も多いと思います。

会計ソフトごとに、出力される決算書の体裁は異なりますが、どのソフトもキレイな形に整えられていると感じています。

法人格(種別)による決算書の様式や量

前回の記事では、「決算書」と「計算書類」、「財務諸表」の表現の違いを確認しました。

多くの法人格、例えば、株式会社や社会福祉法人、公益法人などの決算書は、法令上は「計算書類」として定められていることが多いでしょう。

作成が求められている計算書類は、法人格によって異なっています。

法人格ごとに作成する計算書類の中の主な書類を挙げてみます(全てではありません)。

  • 株式会社・・・貸借対照表、損益計算書、(キャッシュフロー計算書)、株主資本等変動計算書及び個別注記表

  • 社会福祉法人・・・資金収支計算書、事業活動計算書、貸借対照表及び注記

  • 公益法人・・・貸借対照表、正味財産増減計算書、(キャッシュフロー計算書)、注記

計算書類とは別に、附属明細書や財産目録なども作成していきます。

法人格によって作成が必要な計算書類や附属明細書が異なるため、出来上がる計算書類のボリュームが異なることになります。

例えば、うちの事務所に併設している株式会社での去年の決算書のページ数は表紙を含めて6ページでした。(勘定科目の内訳書などは含みません)

社会福祉法人の決算書

社会福祉法人の作成する決算書(計算書類)のページ数はとても多いです。

決算書を構成するのは、法令等で定められた計算書類と附属明細書や財産目録、そして決算の金額を説明する内訳書などです。

社会福祉法人ごとに運営する施設の数が異なりますので、一概には言えないのですが、1つの施設だけを運営する法人で、決算書のページ数は、20ページ~30ページくらいでしょうか。

2つの施設を運営している法人さんで、60~70ページ
5つの施設を運営している法人さんなら100ページを超えることも珍しくありません。
PDF形式で決算書をもらう前には、フラットファイルの1冊に収まりきらないくらいのページ数でいただくこともよくありました。

社会福祉法人の決算書と会計ソフト

社会福祉法人の決算書は、上記のようにとても多いページ数になります。

そしてその全てを、会計ソフトが自動的に出力できるかというと、
決してそういう訳ではありません。

1つの会計ページから、数十枚の計算書類を印刷しようとすると、
設定だけでも大変な作業になります。
また、日々の伝票入力の積み重ねから出力が可能になる書類もあれば、
決算がほぼ確定した時点以降に、手入力で整えていく必要のある書類もたくさんあります。

社会福祉法人会計の簿記の特徴

また、会計ソフトでの1年間の日々の伝票入力にも大きな注意点があります。
それは、「一取引二仕訳」といわれる伝票仕訳になります。

一般的な商業簿記では、複式簿記は「一取引一仕訳」という手法を取ります。
社会福祉法人会計では、この仕訳を「一取引二仕訳」という形で行います。この一つの違いが会計上はとても大きいことになります。
会計ソフトがこの大変なところを担ってくれているのですが、完璧にというところが難しく、仕訳の正しさの確認を重ねながら、進めていきます。

この社会福祉法人簿記の特徴については、うちの事務所の勉強会では、1つのテーマとして開催しました。さらに、勉強会の内容を書き起こして、書籍として出版しています。下のページは、事務所スタッフによる書籍のご案内記事になります。


計算書類の整合性

決算書として作成した、たくさんのページは、それぞれがきちんと整合性が取れている必要があります。
このページとあのページでは、記載している金額や内容が違うという訳にはいきません。
決算書は、数十ページから100ページを超えるページ数で、
会計ソフトから自動で出力されるページだけでなく、手入力のページもあります。エクセルやワードなどで作った参考資料もあります。

経理担当者は、これらをきちんと金額を合わせて、さらに文言についても正しい表現で一致させていく作業を行います。


特に手入力を中心に合わせていく大変さも勉強会のテーマにしています。
このテーマもスタッフが案内記事を書いてくれています。

顧問先さんの決算業務を見て思うこと

社会福祉法人の経理担当者さんは、とても多くのページの決算書を作成しています。
その作業を見て感じた思いが、最初に紹介しました記事です。


うちの事務所は、社会福祉法人様の会計ソフトの入力状況から確認します。
まず、決算書を作る前の伝票仕訳「一取引二仕訳」のところから確認していきます。

この段階で、とても丁寧な入力が行われていることが伝わってきます。
会計ソフトを見ながら、感嘆の声が出てしまっている自分がいます。 

そして決算での丁寧な手入力の作業と、キレイにまとめられた100ページもの決算書を確認します。

その100ページの決算書の一枚一枚が互いに整合性を取れた形で仕上がっているのが確認できると、「美しい」と思わずにはいられません。

私の「美しい」とは、このようなことかもしれません。

社会福祉法人で働いておられる方には、ぜひ自分の法人の決算書をご覧になって欲しいと思います。社会福祉法人では、情報公開制度の一つとして、事業所には決算書が備え置かれています。

令和6年度からは、社会福祉法人に限らず、介護事業者の財務諸表の公表制度が始まります。
財務諸表の公表内容(予定)には、社会福祉法人会計で取り入れられている考え方が色濃く反映されている印象があります。
介護事業者の方々にも、社会福祉法人会計の状況を知っていってもらうことができればと思っています。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。







最後まで読んで下さり、ありがとうございました。


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