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夏祭り ※詩の朗読台本

夏の夜の匂いは刺激的だね。
僅かに送る風の中に、湿ったぬるい空気とあなたの匂いがする。
風呂上がの石鹸のいい匂いが、ドキドキさせる。

(間)

夏の朝は、爽やかな青い空に、蝉音(せみおと)と陽射しがうるさいのに、
夜になっても、ビール片手に談笑する人々と露店のおじさんの呼び声、
カラコロと浴衣を着た男女の下駄の音で賑やかね。

(間)

初めてあなたの前で浴衣を着た時、恥ずかしくてあなたの顔を見られなかった。
初めてあなたは私の浴衣姿見た時、蚊(か)の羽音(はおと)みたいな小さい声で、可愛いといった。

(間)

沢山の人であふれてるからと、真剣な顔で私の小指をキュッと握ってきたあなた。
ようやくあなたに触れられた嬉しさから、思わず私は手を握り返してしまった。
あなたの大きい手は汗ばんでいて、私の汗と混ざっていく。
和むような、でも緊張してしまうような、そんな夏祭り。

(間)

このまま時を止めて、ずっとこのまま。
手を握っていてほしい。ずっと離さないで。
あなたと恋の思い出を一緒に更新していきたいわ。
まずはこの夏祭りが、私の最初の恋の記憶。

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