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夏のはじまり

「終わっちゃったねー」

歩いているだけでじんわり汗ばむような
まだ夜がそんな空気だった頃。

8月最終週の花火大会の帰り道。
夏休み最後の楽しみに後ろ髪を引かれながらゆっくり歩く。
少し歩いたところで駅に人が溢れているのが目に入る。

「ちょっと待ってから帰らない?」

「そうしようか」

時間つぶしに1杯だけ、と少し歩いて居酒屋へ。
乾杯をし、乾いたのどを潤す。

改めて向かい合って目にする君の浴衣姿。
本当に綺麗だ。
と心の中で唱えるのは21回目を迎えた。

浴衣はずるい。
かわいいとオトナどちらも兼ね備えているし、
多少着崩れてたってそれもまたいい。

そんなことを考えながら最後の一口を流し込む。

もう22時を過ぎようとしているので「そろそろ帰ろうか」と声をかける。

つもりだった。

「ねえ、このあとどうする?」

「え?」

不意の問いかけに固まる僕。

もう8月も終わりだというのに
夏が、はじまった合図がした。

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