見出し画像

FUNとFANのヤッホーブリューイング佐藤さん(コミュニティの教室2-004)

あっという間に2期も中盤戦。今回はヤッホーブルーイングの佐藤さん。

佐藤さん
町田出身。2000年CCC入社、2012年ヤッホーへ転職し、神奈川県から長野県へ移住。ファンベースのようなマーケティング部門を担当されている。

今回は講義後にビールが飲めることもあって、みんな開始前からのワクワクがすごい。かつ、普段ドイツ在住メンバーが帰国参加だったり長野や名古屋からの参加だったりするメンバーも東京会場(オフライン)にきていてオフ会のような雰囲気も。

ヤッホーさんがどうやってファンと楽しく関わりながらやってきているのかを全体の話と組織づくりの話を交えて、教えてもらいました。

そもそもヤッホーとは?

1996年に軽井沢で創業したクラフトビール製造の会社。
コンセプトは「家庭でも飲める手軽な本格エールビール」。デザインは和の要素を大事にしながら、屏風の柄?から取ってきたりしていて、斬新さと個性がある。ミッションに掲げているのは、「ビールに味を!人生に幸せを!」で、この言葉が社員全員の拠り所にもなっている。

そもそもビールとは?

Q1:世界には何種類のビールがあるのか?
ビールの種類(スタイル)は二大巨頭のエールとラガーから派生して多様化しており、今では100種類以上ある。しかし、日本で一般的なビールはピルスナー。ヤッホーのビールは色々な種類・味がある!

水曜日のネコ:ベルジアンホワイト
よなよなエール:アメリカンペールエール
インドの青鬼:インディアペールエール
東京ブラック:ポーター

Q2:日本のビールのうち、ピルスナーはどれくらいの割合?
全体の99%はピルスナー!アサヒさんやキリンさんといった大手メーカーが大半を占めており、第6位がヤッホー。ただ、トレンドとしてで言うとこれまでのピルスナーに対して、クラフトは110%とか116%で着々と伸びてきている。ビールにも多様性・バラエティの流れがきている。結果、ヤッホーは14期連続の増収増益。

ファンマーケティングのFUN×FAN団とは?

よなよなエールのFUN(好きになって)×FAN(応援してもらう)団。ヤッホーマーケティング部門で、お客さんの階層に沿って接していく。

①トライアルは新規顧客なので、流通営業・プロモーション・広報がアプローチをしていって、②弱いリピート③リピート④ファン⑤熱狂的ファン・伝道師は既存顧客なので、ファンベース・通販/カスタマー・SNSで接点を持って関わっていくようになっている。

ヤッホーがファンを大切にしている理由

根底にあるのは、ヤッホーの低迷期(どん底の時)に店頭からよなよなエールがなくってもファンは支持し続けてくれたから。2000年ごろに地ビールブームがあり、最初は順調だったが、地ビールは地域活性のために作られた高くてまずいものが多かったので、3年ほどでマイナスイメージがついて顧客が減ってしまった。
しかし、コアなファンはネット通販で買い続けてくれており、直接ファンからの応援の声を聞き感動し、また将来への手応えを感じたから続けてくることができているし、ファンの支持なくして、製品の成長なし・会社の成長なし・モチベーションは上げられないと体感した。

よくあるマーケティングやビジネスの話の通り、顧客の2割が売り上げの8割を作っている。通販で買ってくれるお客さんのようなコアなファンは直接なリーチができるし、コアなファンからの口コミで間接的なリーチができる。なので共感や関心から生まれるオーガニックな推奨が大事。

また、③リピーターと④ファンには大きな違いがあり、それは受け手(利用者・購買者)なのか送り手(推奨者)なのかの違い。それを生むのはミッションへの共感の有無で、ファンは商品の認知理解、購入リピートを一定繰り返していくと、商品単体ではなくそれを生み出している組織(企業)自体への関心・理解が始まる。そこから企業自体への「応援しよう!」という境地に辿り着くのではないか。

開発プロセス:製品・ブランド

〈水曜日のネコ〉
それまで女性向けビール業界で成功事例がなかったが、クラフトビール市場のリーダーとしてのフルラインナップ戦略を立てたいと考え、「30歳前後の知的で仕事を持つ女性」をターゲットに、水曜日という一番ビールが売れない曜日を逆手にとって、平日夜のオフタイムにリセットするシーンを想定、素の自分を投影した姿がネコ(笑っているようで笑っていない、絶妙な素の表情の猫がラベル)なビールを作った。

〈僕ビール、君ビール。〉
ローソンから「ローソン専用商品若者向けビールが欲しい。」と依頼され始まった商品。30歳前後の男性ターゲットで、インタビューを通して「ビール=おじさんの飲み物」というイメージがあり、自分の世界とは関係ない飲み物だと思われていることが判明。ビールの味が苦手な人向けに「あなたのビールだよ」と君ビールとされている。また、ターゲット層にゆるキャラが好きな人が多かったので、カエルのラベルに。

ブランド開発の方針
①ターゲットは狭く&具体的に、潜在ニーズを探る
 1%のクラフトビール市場だからこそ、狭く。
②多くの人が選ぶデザインは×。
 1−2割の強い支持が心地よい。(賛否両論あったほうがいいくらい。)
③キャラクターを立てる

プロモーション
ファンの共感・支援の輪を広げていく。輪の外にいる非認知層が「仲間になってみたい」と思えるようなコミュニケーションづくりを考えている。
事例)
実際やった僕ビールのSNSのプロモーションで、社員が都内のローソンを巡回し、あったら買って、写真を撮って公式SNSでコメントを入れながら「僕君捕獲」という言葉とともにアップしていったら、面白がって一緒に上げてきてくれているファンが増えていき、その日の夕方くらいにはユーストリームでライブ放送を始め、お客さんとわちゃわちゃしながら捕獲情報を拾っていくことをした
→結果として、ローソンさんから感謝状として「最優秀取引先賞」をもらっている。

通販:よなよなの里
ECはリピーターやファンなので、知っている人前提のコミュニケーションとして、ECだけど社員の顔が見えるコミュニケーションを積極的に行っているし、ミッションとかもきちんとここで共有している。

〈年間定期コース〉
その人たち限定の店舗・先行発売・ツアー・先行予約・割引・会報誌などなど、熱狂的ファンが生まれるエンターテイメント型定期購入サービス

〈ファンイベント〉
社内の製品開発のこととかも知ってもらって好きになってもらっていくためにイベントを積極的に活用している。

イベント:ファンの「知りたい」「関わりたい」「つくりたい」

①知りたい:持っている情報をお客様に伝えていくので、作り方・こだわり・ストーリーは社員が知ってるのとかなり近いレベルでほぼ全て伝えている。
②関わりたい:お客様同士・スタッフとお客様・好きな人同士のつながりは熱量があるので意図的なきっかけづくりをする。社員側からすると毎日クラフトビールが身近にあり、そのファンに囲まれて暮らしているからそれが当たり前だが、お客様は関わりたい。1%にも満たないコアな層だからこそお客さん側は寂しいし周りに味方はあんまりいない。だからこそ、ファン同士が出会えることの価値がある。
③つくりたい:一緒にサービスを作る。単純にビールを一緒に作るだけじゃなくて、サービスを開発するところをやっている。

〈醸造所見学ツアー〉
3000名/年
夏の土日だけで、スタッフがガイドする(バイトのお姉さんお兄さんとかじゃない。社員がシフトで回す!)
入り口でウェルカムボードがあり、実際に発酵しているタンクを見てもらって、その場で飲んでみてもらう。小さなバーカウンターでテイスティング。飲む作法から教えていく。
実際に来てくれるのは都内からの人が多い。なんとなくなライトなファンが来て、リアルに触れることで深まっていく機会になる。(この会社変な会社だな。熱いなって体感して、それがきっかけになる。)

〈超宴〉
ワイガヤを意識している。色々な企業さんとのコラボなどもあり、盛りだくさん。最後盆踊りして、また来年もねってバイバイする一日。

〈よなよナイトオンライン飲み会〉
デジタルでの施策。FBで月1回、タイムラインでゆるく会話をしながら飲み会をしている。コアなお客さんとの濃密なコミュニケーションをしようというもの。

〈よなよなこれから会議〉
東京で開催した56名の会議。最終的に自己実現領域にくるファン(安くとかポイントたくさんとかじゃなくて、共に活動したいとか、自己実現をここでしたい。)3時間半の長丁場ノンアルコールイベント。
他のイベントはオープンだが、これは作文を書いてもらって厳選したファンに来てもらったイベント。「ヤッホーにやってもらいたい」じゃなくて「ヤッホーとこれがやりたい!」がある人を集めた。
自己紹介し合い、原材料かじったりのアイスブレイクがあって、会社側からは経営戦略を共有して、その上で自分だったら、自分の好きな領域で何ができるか考えてもらう。その後、共有してもらって、明日からの宣言とかをして解散(自分の結婚式でビールのセミナーするとか、アプリ作ってみるとかが出て、実際に実施されていることもある。)そして、2次会で初めて飲み始める。
最後は社員と同じフォーマットの名刺を渡して、同じ志でやっていこうと団結。

〈よな活部〉
最近始めた熱狂的ファン限定コミュニティ。会社側があれこれお膳立てしすぎず、意図的に能動的に活動できるような場なので、看板考えてくれるデザイナーがいて作ってくれたりとか、近所のスーパーで言いまくったら入荷してもらえた報告とかが出てきたりとかする。
ここの人に対して、ミッションをもっと自分ごと化してもらうために15名のゆる宴を開催。それぞれの人となりを話してもらうだけでも盛り上がっていってロゴ作りたい!とか、趣味の時間にビールのみたいから同じ趣味の人集めて飲み会したい!とか個性がどんどん出て来た。今後はそれぞれで小チーム化してプロジェクトにしていこうと思っている。

イベントの効果とその改善
これまで1万人以上の年間イベント集客ができるようになってきて感じることとして、売り上げはなんとなく相関があるんじゃないかと思われる。
イベントでは必ずアンケートを取るようにしていて、それを次のフィードバックに改善していっている。
アンケートでは、熱狂度(本人の好き度)とNPS(推奨意向があるか)の掛け合わせでプロットしている。通販のお客さんの4分の1は熱狂かつNPS高い、本人も好きで周りにも口コミするコアな人が多い。超宴の参加者アンケートからも、右上がやっぱり一番飲用量高い。
マーケティングチームとしては、右上のコアファンだけじゃなくて、上の人たち(推奨意向は低いけどハマってる人がいる→いい人たち。クラフトビールは嗜好品だから人には勧めないかな。おこがましいかなって感じの人。)にもアプローチができるようにしている。
このアンケートお客さんの本当の気持ちがわかる。健康診断みたいな感じ。関係性を図っていくようにしている。

超宴は圧倒的な口コミによるもの。オウンドメディアが5割。口コミが3割。つまり、ファンが半分、彼らに連れてこられた人が3割ということ。

なぜファンが熱狂したの?ってなった時、昔は経路が少なかったので基本的には「通販→メルマガ→ファン」だったけど、現在はタッチポイントが増え、経路が増えて来た。つまりは、カスタマージャーニーが増えて来た。なので適宜カスタマージャーニーは更新していて、今アップデートされているのはこちら。

接点(初めてのタッチポイント)と沸点(何がきっかけで上がった?)を知ることが大事。

〈ファンの力〉
ファンが遠路はるばる色紙持って誕生日祝いに来てくれたり、イベントで知り合って結婚した人がよなよな柄の結婚指輪で結婚したり…。
今では、五千人規模のイベントのボランティアに社員数と同じくらいの数(130人くらい)がきてくれるし、会社が何も言わなくても、ファン宴をファンが幹事になってやってくれた。

〈コラボイベント:呑みにマイル〉
JALさんと一緒に行った取り組み。一万マイルで地方に飛んで、飲み明かして帰ってくるというイベント。コアファンと一緒に旅をして、よりブランドや会社、経営理念のことを社員が語りながら知ってもらう機会を作っている

〈コトラーアワード2018最優秀賞〉
マーケティングの神様主催のマーケティングコンテストで最優秀!
マーケティング手法的な話でいうと、オフラインオンラインを問わないマーケティングが今必要で、特に調査と推奨が大事と言われている。お客さんに調査してもらうためには、好奇心を作らないといけない。推奨してもらうためには親近感がないといけない。

ユニークなブランド開発によって好奇心を引き出し、イベントや顔が見える関係性によって、経営理念なども含めて知ってもらえて親近感も感じてもらえている。独特な活動をしているのではなく、ちゃんとマーケティングしている。ヤッホーだからできることじゃないし、他のところでも活用してもらえることでもある。

チームづくり:お客さんとの共感の根源

お客さんが共感してもらえるのはスタッフとのコミュニケーションがあるから。「ヤッホーのスタッフと話していると、本当に好きなんだなって伝わって、私もより好きになった」とアンケートでフィードバックされる。それをみてまた社員は好きになっていく。

1.ミッション・ビジョン・コンセプト(価値観・文化)
〈ガッホー文化〉
究極の顧客志向を目指し、フラットな組織の中で仕事をできるようにしている。フラットに議論ができるような組織であるためにも、社員全員がニックネーム(フラットさのため、性別年齢役職で変えない)
「知的な変わり者」長所を伸ばすことを大事にしている。入社したらストレングスファインダーを全員でやる。一覧化し、理解し、尊重し、業務体制を編成している。だから、得意な仕事は得意な人に任せる。苦手なことはやらない。パフォーマンスが出ることに特化する。それによって特性を伸ばしてチームで動いていく。

2.プロジェクト活動
活発にやっているし、奨励されている。7割修行2割プロジェクト1割勉強。イベントをやっているチームの5人はプロジェクトマネジメント型で、社員を集めてチームを組んで、やって、終わったら解散。

色々な部署の社員が組むのは、普段お客さんとの接点が少ない人もイベントに関わることで接する機会を持つことができるようになるからこそ、積極的にやる。

3.組織体制
上下関係は3階層しかない。事業部門長(ユニット長)はメンバーが立候補して、全社員の前で話す。毎年10-15名が立候補し、自分の考えで、15分プレゼン15分質疑応答の対話をする。最終的に受かるのは1−2名程度。それを聞くのは社員で、質問して投票する。(その人の課題抽出度・打ち手は的確?人として推薦したい?の3つだけでシンプルに判断)社長がそれを最後に見て、事業部長になれるかなれないかを決める。
残酷なようだけど、切磋琢磨し自ら考え自ら行動するチームを作るのには効果のある仕組みでもある。なぜなら、部門長になりたいと思ったら、真剣に会社のことを考えるようになるから。戦略は?課題は?スキルあるかな?とか色々考えることになり、今ある自分の視座視野がどれほどかわかるようになる。その結果ロイヤリティも上がる。スタッフも自分たちで投票するから納得を持ってチームに入れるし、社長もいろんな社員の意見が聞ける。

まとめ

よなよなエール流熱狂ファンづくり
・経営戦略「トレードオフ」
・カスタマージャーニーの設計「熱狂的ファン」を知る
・マーケティング=顧客の問題・課題解決
・製品開発「ターゲットは明確に・狭く」
・プロモーション「ファンの共感・支援」から非認知層へ
・「製品」だけでなく「企業」への共感
・ロイヤルティの高さに応じたブランド体験施策
・ロイヤルティ向上の鍵はスタッフの密着プレイ
・コンテンツ作りは「学び・交流・共創」
・ファンは市場を一緒に盛り上げる「仲間・同士」
・スモールスタート!(イベントは10年間で30名から5,000名へ)

よなよなエール流チームづくり
・経営理念の浸透によりグループはチームに変える
・チーム化は目的ではなく最高の成果を生み出すための手段
・フラットな組織でコミュニケーションの量と質を高める

感想

そもそものプロダクト(ビール)の魅力と味の美味しさがあるからこそとも言えるが、確かに講師の佐藤さんが仰っていた通り、ヤッホーじゃなきゃできないことではなく、ファンとのコミュニケーションを丁寧に設計しつつ、ファン側の参加するきっかけや能動的になる余白を残しているからこそ熱を持ったまま拡大し続けているんだなと思いました。また、ファンマーケテイングの手法だけじゃなくて組織としても主体性を大事にしながら拡大・改善し続ける姿勢を持っていることが、ビールとしても企業としても愛され続けるコミュニティを生み出しているんだなあと納得しました。

私もよく考えたら数年前からただビールが好きというくらいしか共通しない同期や友達たち水曜日のネコ会(厳密にはヤッホーじゃないビールを飲んでしまってる日もあるけどビールを飲む会)をやっているので、まだ4にはなってないけど3段階目くらいのファンなのかもしれない。まずは通販を勝手限定イベントに行ってみたいなと思います。

この記事が参加している募集

シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。