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映画「グリーンブック」~差別撤廃を拒む同族意識~

昨日嫌なことがあって映画でも見ようかなとAmazonプライムを眺めていたところ、グリーンブックが目に入りました。アカデミー賞受賞作ということで面白くないわけない!と思って観たところ、メチャクチャ面白かったので今日はその感想を書きたいと思います。

※注意 ネタバレも含みます。

・価値観の異なる二人が徐々に友情で結ばれる

舞台は1960年代のアメリカ。黒人に対する人種差別は徐々に薄れてきたものの、それでも社会のいたるところで差別は残っていました。主人公のドン・ドクター・シャーリーは黒人のジャズピアニストで南部へのコンサートツアーに出かけるために運転手を探していました。そんなとき、失業したイタリア系白人トニーリップと出会い、リップは運転手としてツアーにでかけます。

まず、この物語の好きなところは正義感が強く頑固で分別のあるドンと、粗暴で育ちの悪いリップの間で次第に芽生える友情のようすです。価値観の全く異なる二人の言葉の掛け合いはとても軽快で楽しく、旅が進むにつれて徐々に分かり合っていくところに「青春」を感じてしまいます。

・人種差別によって生まれる自制心

この映画では黒人に対する人種差別のシーンが多く描かれます。大阪なおみ選手が抗議したことで日本で大きなニュースになりましたが、こうした人種差別的な行動はアメリカで今なお残っているのだろうなと感じました。

この物語ではドンが演奏を終えたときに白人から大きな拍手がおくられるシーンが多く流れます。序盤はなんとも思わなかったのですが、見進めるうちに黒人におくる拍手でさえもサーカスのライオンやゾウへおくる拍手のように見えてしまいました。拍手を受けるドンは笑顔で礼をするものの寂しげな表情で笑います。

ドンは黒人としてはとても珍しい”エリート”として過ごしてきましたが、それは白人からも差別的に見られ、黒人からも奇異な目を向けられる孤独な人生を歩んできたということでした。また性的マイノリティでもあるドンにとって社会は行きづらく、いろいろなことに対して強く自制し続けなければ自分を保てなかったのだと思います。物語の終盤では、ドンがこれまで避けてきたクラシックでない音楽を黒人たちとセッションするシーンがあります。これは孤独な人生を歩んだドンが黒人と初めて融合した瞬間であり、とても楽しそうに笑っているのが印象的でした。

我々も組織に長いこと所属していると知らず知らずのうちに世界観が固まってしまいます。それは孤独だし、なにしろ楽しくないよね。そんなメッセージのように感じました。

・差別撤廃を遠ざけるのは同族意識なのではないか

私が最も心に残ったのは、南部の田舎道で停車したときに畑を耕していた黒人の農民が手を止めてドンを無言で見つめたシーンです。おそらく彼ら農民はアメリカ南部で奴隷同然として扱われているのでしょう。ドンの立派なスーツ姿を見て「なんでお前だけそんな恰好をしているんだ」、「お前も我々と同じ仲間だろ?」といった表情で見つめていました。酷い差別を受ける側にとってドンのような存在は見たくないものだったのだろうと思います。

このような光景を見ると、このような同族意識がいつまでも差別撤廃を拒んでいるのはないかと考えさせられました。

・お互いの価値観を知ることのできる映画

この映画は一つ一つのシーンに対して長く語ることのできる映画だと思います。友人や家族など身の回りの方々と見るとお互いの価値観を深く知ることができますのでとてもおすすめです。ぜひ、ご覧になってみてください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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